今回は「履き心地のよいパンツ」をテーマにした、厳選ブランド履き比べ企画の後編。
あれこれ履き比べるなかで、なにを観点に選ぶべきなのかを見失い、一時、パンツの沼にはまった筆者が導き出した定義は、履き心地のよいパンツ=積極的に履いていたいパンツ。食い込む、端がまくれ上がる、股位置がずれるといった、着用時のストレスがないことに加え、ホールド力に優れる、あるいは環境負荷が少ないつくりなど、肌当たりのよさ以外からも爽快感が得られるものこそ、「履いていたい!」と思えるパンツだと感じました。
後編でご紹介するのは、サスティナビリティを徹底した2ブランド。
天然素材がもたらす柔らかな肌あたり。環境も心身もよろこぶ2ブランド
快適な履き心地とニュートラルなルックス。自然体でいさせてくれる「Allbirds(オールバーズ)」
「Allbirds」といえば、環境に優しい素材や再生素材を用いたスニーカーを展開するサスティナブル・ブランド。その同ブランドから、2020年6月、初のアンダーウェア「Trino Undies(トリノ ウンディーズ)」が登場しました。
その履き心地が驚くほどさらりとしていてクセになると聞き及び、ウィメンズ向けショーツ3型から、自然な着心地と評判のBriefタイプを選び、さっそく、お試し。
通気性の高い天然素材・Trino®が、シルクのように滑らかな「Trino Undies」各2,300円(税込)。今夏、登場した新色・Alpenglow(左)のほか、Peppercorn(中)、Pitaya(右)など、自然からインスパイアされたカラーがそろう。写真のBriefタイプ以外に、食い込みにくくボディの一部になるかのようなThong、ほどよくヒップをカバーするShortieの3タイプ展開。……なんと滑らか!! 一見、コットンのようですが、その肌あたりはまるでシルクのよう。といっても素材にシルクは入っていません。
用いられているのは、ユーカリの木の繊維(Tree)とメリノウール(Merino Wool)を混紡した独自開発素材、Trino®。しっとりと柔らかく、表面はほんのり、つるり。ユーカリの素材に接触冷却感があることから、少しひんやりとしたような感じもあり、シルクに似て感じるのだとか。通気性に優れたドライな着心地が、最高。
シルエットやカラーが女性的すぎず、かといってマニッシュすぎもせず、ニュートラルである点も非常に好感が持てました。
無駄なものをそぎ落とし、性別や人種関係なく、さまざまな人の心と身体にフィットすることを願ってデザインされた。今回ご紹介している他ブランドと比較すると、サイズがやや大きめに設定されているという理由もあるのですが、Mサイズを選択したところ、出っ尻の筆者、締め付けどころか、ほどよいゆとりを実感(ガバガバなわけではありません)。ヒップの大きさや形など、体型を気にする必要がなく、とてもリラックスできる、自然体でいられるパンツです。
[Allbirds]
オーガニックコットンを立体編み。「SkinAware(スキンアウェア)」のときめくレースショーツ
糸の段階から認証・認定を受けたオーガニックコットンを使用したアパレルを展開する「SkinAware」。直接、肌に触れる下着こそ、同ブランドのオーガニックコットンが持つ柔らかで優しい風合いを体感するにふさわしいのでは!? と、本企画でのお試しを決行。一般的なレースタイプのパンツは、飾り部分がざわざわ・チクチクとすることが多く、これまで敬遠していました。が、今回はあえて「レースショーツ」をセレクトしてみることに。
機能性と着心地の良さを両立すべく、フィッティングとサンプル製作を繰り返し実施して誕生した「SkinAware」の「レースショーツ(WLS005)」5,170円(税込)。農薬や化学肥料を使用せずに育てられたオーガニックコットンは、繊細で優しい肌触りながら、繊維が丈夫で、長く着ることが可能。ウェストと太もも部分にあしらったゴムレースも、伸縮性があるウレタン糸をオーガニックコットンでくるむことで、ソフトで締め付けのない仕上がりに。身につけてみると、レースが気になる以前に、履き心地の軽さから、パンツ自体の存在が意識から遠のきました。これは、オーガニックコットンをメッシュ状に立体的に編んでいることによりもたらされた効果。メッシュ状にすることで、肌に触れる部分が面ではなく点となり、肌あたりが軽く感じられるのです。点ゆえ、たとえ汗をかいても肌に張り付きにくいのも特徴だそう。
実はオーガニックコットン100%の場合、伸縮性に欠けるのではとの不安を抱いていました。が、前述の通り、メッシュ生地となっているため、縦横方向への伸びがよく、十分なストレッチ性が備えられていたのも嬉しいポイント。
くしゅくしゅと縮んでいるように見えるレースが、縦にも横にもしなやかに伸び縮みしてくれる。サスティナブルなものづくりを推進するSkinAwareにおいて、もう1点、特筆すべきは、ボタニカルダイ(植物染め)を採用したカラーリング。今回選んだスモーキーブルーは、ブルーベリーで染められたのだとか。天然染料とは思えぬハッとする発色と、レース生地の美しいルックスと。そんなときめき度の高さから、このレースショーツを身につける日は、心が踊りました。
従来の草木染めとは異なり、植物の花や葉、果実から抽出した染料をタンパク質で生地に吸着させ、植物本来の持つ鮮やかな発色を実現。写真は、美肌効果、アンチエイジング効果が望めると言われるブルーベリーで染めたスモーキーブルー。極上の履き心地のパンツを求め、履き比べを続けてきた筆者ですが、企画がスタートするほんの1か月半前までは「服に下着のラインが響かなければOK」という、履き心地ではなく、外部からの見た目を観点にパンツ選びをしていました。が、ひとたび、心地よいパンツを履いたなら、そうでないパンツへは戻れないかもと思うほど、解放感に満たされました。下着ラインが出るボトムを毎日着るわけではないので、ラインが響かぬパンツと履き心地重視のパンツ、2:8の割合で持っているのでいいのかもしれません。
機能性や耐久性を担保しつつ、肌あたりをよくするため、素材を検討したり、縫い代を減らしたり。わたしたちの快適な日々を支えるために商品開発をしてくださるメーカーの方々への、感謝の念が今もって堪えません。みなさん、ぜひ一度お試しを。