服の一着あたりの着用回数が減っていると言われています。平均着用回数はたったの7〜10回というデータも(※)。
なるべく一着を長く、たくさん着たいと思いつつ、服には流行のスタイルがありますし、汚れや傷みなどから廃棄せざるをえなくなる服も出てきます。
ただ、スタンダード・アイテムでならどうでしょう。
Tシャツやデニムジーンズは、時を経ても愛される、超定番品です。耐久性に優れ、傷みが出たとしてもメンテナンスができる。そんなTシャツやジーンズであれば、長〜く愛用できると思いませんか。
今回ご紹介するのは、美しいシルエットを誇るTシャツやジーンズの2ブランド。どちらも、すばらしいメンテナンス・サービスを備えており、一着の寿命が非常に長いのが特徴です。
※Barnardo’s Survey of 1500 women as part of #My BarnardosDonation – Campaign(2015)より
着て、洗うごとに風合いが増す。10年後も着られる「10YC」のTシャツ
「10YC(テンワイシー)」が目指すのは、着る人も作る人も豊かになるものづくり。ブランド創始者のひとりである下田将太さんは、せっかく気に入って買った服が数回着ただけで傷んでしまった消費者の様子や、技術力がありながら、工賃が海外より高いことだけを理由に受注が減ってしまっている生産者を目の当たりにしたことから、技術力を生かした素材や縫製仕様を用い、10年後も着続けたいと思える服を作ろうと奮起したのだそう。
「10YC」は、高品質な商品を提供し、かつ生産現場に適正な工賃を支払うために、中間業者等を通さず、生産工場と直接取引しながら商品開発・生産を行っている。Tシャツ「10YC Tee(テンワイシー ティー)」は、ブランドの原点ともいうべきアイテムで、毎日着ても簡単にはへこたれない丈夫さと、毎日着たくなる着心地を兼備。その秘密は、生地の編み方や、縫製にあります。
この投稿をInstagramで見る
糸を無理にひっぱらず、空気を含ませて編むことで、厚手でありながら柔らかな風合いとなり、洗濯しても固くなったり、ヨレたりしにくい素材となるだけでなく、むしろ着る・洗うを繰り返すと、いっそう柔らかな質感に変化していきます。また、表側には毛玉になりにくい特殊紡績の糸を、裏側にはふっくらと肌触りのいい糸を用いた二重構造生地を採用し、さらに縫い糸の中に縫い代を収め、袖付けを工夫したことで、肌当たりや、身体の動きへのストレスがありません。
この投稿をInstagramで見る
万が一、シミがついたり、褪色したり、色に飽きたりした場合に備え、10YCには「イロヘン」という染め替えサービスがスタンバイ。10YC Teeは染め替えの可能性も念頭に入れて設計されているため、縫い糸は生地と同じ条件で染まるものが採用されているほか、生地が丈夫なため洗濯以上に負荷がかかる染め替えにも耐えられるのだとか。
たっぷり着込んで、時がきたら染め替えて。思い出がたくさん詰まったTシャツを育てていきましょう。
今春から新しい取り組みをスタート。新サービスは、購入品の下取りを行う「サンキューバック」、着用により傷んだ袖口や裾のリブの付け替え等を行う「ツギタシ」、服作りの際に出る切れ端や余り布を使って新しい商品を作る「ジャナイホウ」の3つ。どのサービスも、根底にあるのはいずれも「自分たちが作った服だから、長く着てもらいたい」 、「無駄を減らしたい」という想い。[10YC]
専門の職人が生涯無償のリペアを実施。自分らしさ際立つ「Nudie Jeans」のジーンズ
スウェーデン発「Nudie Jeans(ヌーディージーンズ)」は、オーガニックコットンを用いた生デニムを展開するブランド。
左から、味わいあるライトブルーの色調のワイドシルエットジーンズ「Clean Eileen Gentle Fade」22,000円、無漂白のオーガニックコットンのくすんだ白の色合いがすてきな「Breezy Britt Dusty White」24,200円(ともに税込)。生デニムとは、水洗いなどの加工が一切施されていないデニムのこと。美しいインディゴカラーとハリが特徴で、穿きこなすことで自分らしい風合いが生まれます。
生デニムは色味の変化がユニーク。というのも、オーガニックコットンの経系は色染めの過程で何度も藍染に浸され、だんだんと深い藍色をおびてゆくのですが、藍色の染料はコットン繊維に完全には定着しない特性を持つため、穿き続けることで、ゆっくりとした褪色を味わうことができるのです。
素材、つくりともに頑丈なジーンズですが、時に意図せぬダメージが生じることも。製品の長期的な愛用と資源の尊重を目的に、生涯無償リペアサービスを約束する同ブランドは、2020年12月に日本初となるリペアステーションをオープン。愛用ジーンズを持参すると、たとえば膝にあいた穴にパッチ(あて布)を施すなど、Nudie Jeansのアイテムを熟知した職人による、それぞれの風合いをいかした補修が無料で受けられます。
リペアステーション(東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル2F、12:00〜20:00※土日祝休)では、新品の販売はなし。提供されるのは自社ジーンズのリペア&回収サービスと、回収したジーンズに必要なリペアを施したリユースデニムの販売のみ。リペアステーションでは自社ジーンズの回収も行っており、回収したものを、リペアサービスにおけるパッチとして用いたり、本国に送り、新しい生地として再活用したりすることもあるのだそう。
ブランドがこれまでにリペアしたジーンズは、なんと6万本以上。これはジーンズのリペアのみで5万キロ分の繊維廃棄物の排出を防いだことに相当し、この量の繊維を新たに生産するには、44.1万トンもの水が必要ゆえ、節水にもつながっている。長く身につけることが予め想定されているNudie Jeansのジーンズには、穿き皺や擦り切れといった形で持ち手の人生が記録されていきます。万が一、ボロボロになってしまったとしても、リユースによって私たちの想いを紡いでいくことができる点も魅力的なブランドです。
サステナビリティを追求するNudie Jeansは、2021年2月より、国連連合工業開発機関(UNIDO)と協業し、セカンドクオリティジーンズと呼ばれる、品質基準を満たさないジーンズを、新品のデニム生地と合わせることで新しい生地を作る試みを実施中。新品の繊維・素材の使用を極力控えた、持続可能なものづくりの方法を模索している。[ヒーローインターナショナル(Nudie Jeans), リペアステーション]