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「プラントベースフード」基本のき。中村美穂さんに聞く始め方、楽しみ方

2021/06/29 18:00 投稿

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管理栄養士、プラントベースフードアドバイザーの中村美穂さん

最近よく耳にする「プラントベースフード」という言葉。海外で話題となり、日本でも今、存在感を強めています。 このプラントベースフードについて、管理栄養士でありプラントベースフードアドバイザーの中村美穂さんに詳しく教えてもらいました。

そもそも、プラントベースフードって何ですか?

「プラントベースフード(Plant Based Food)」とは、ここ数年、欧米を中心に健康食として話題となり、日本でも注目されるようになった、植物由来の食べ物を中心とした食生活・食事法のことを指します。「ヴィーガン」もよく耳にすると思いますが、こちらを「動物性由来のものを摂らない“生き方”」とすると、プラントベースフードは食生活、食事を指し、実践しやすい点が特徴ではないでしょうか。

現在ではハンバーガーショップなどにもプラントベースのものを選べるお店が増えた。Image via Shutterstock

栄養面で、メリット・デメリットはありますか?

植物由来の食べ物を中心としたプラントベースの食生活・食事法を取り入れる場合、野菜が中心となり、肉や魚、乳製品といった動物性由来の食品の摂取が控えめになります。そうすると、以下のようなメリットとデメリットが考えられます。ですが、デメリットはこのあとお話しする工夫で乗り越えることができますので、安心してトライしていただければと思います。

▼メリット

食物繊維を摂りやすく、整腸作用が期待できる。 野菜中心となることで摂取エネルギー量が抑えられ、肥満の予防にもつながる。 ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルを摂取しやすく、体調管理や、病気・老化の予防が期待できる。 動物性脂肪に多い「飽和脂肪酸」の摂取量が減り、血中の悪玉コレステロール値の上昇や動脈硬化・心疾患等の予防にもなる。

▼デメリット

たんぱく質の不足など、栄養バランスが偏ることがある。 動物性食品に多く含まれる鉄 (動物性食品のヘム鉄の方が植物性食品の非ヘム鉄より吸収がよい) やカルシウム (吸収率のよい乳製品をとらないことで不足しやすい) 、亜鉛 (牛肉、魚介に多い) が不足しやすい。 肉、魚介類に含まれるビタミンB12が摂取できず、 魚介類に含まれるビタミンDが不足気味に。 魚を食べないことで、DHA、EPAが摂取できず、オメガ3脂肪酸が不足する。 満足感アップのために植物油の摂りすぎや糖質過多になる場合があり、肥満や老化、動脈硬化につながる可能性がある。

プラントベースを始めるときに気をつけることは?

たんぱく質をはじめ、体に必要な栄養素が不足しないように気をつけましょう。豆類などの植物性のたんぱく質源を意識し、主食はビタミン類や食物繊維が含まれる全粒穀物にするなど、栄養のバランスを考えて食事をすれば問題ありません。むしろ、植物性の食事は体内のあらゆる炎症を抑えて病気の予防につながります。

栄養価が高いナッツや海藻は乾物なので、常備しやすくいつでも使えて便利ですよ。野菜や果物は、旬のものを摂ると栄養価が高いのでおすすめです。

市販品を買うときや外食時も、原材料で植物性由来か動物性由来かを確認をしましょう。おやつや飲み物を選ぶときも同様です。また、加工食品に偏りすぎないように気をつけるといいと思います。

無理なく始めるポイントを教えてください

急に食生活を変えるのではなく、まずは1日1食、週1回からなど、自分の生活に合ったスタイルで楽しみながら始めてみるのはいかがでしょう? 具沢山のみそ汁や豆のカレーにしたり、植物性ミルクを取り入れる、お肉を厚揚げに置き換えるなど、植物性プロテインに注目して食べ方を工夫してみると、新たな発見にもつながります。

プラントベースの食生活を取り入れることで、便秘や肌荒れなどの体の不調の改善や変化を実感できると、続けるモチベーションにもなります。自分の体調を観察しながら実践すると、わくわくできると思いますよ。

プラントベースはどうして「環境にいい」と言われるのですか?

植物性食品と動物性食品の「生産過程」を比較すると、環境への影響の違いがあることがわかっています。

地球温暖化の原因とされる二酸化炭素などの温室効果ガス。 国連食糧農業機関の報告によると、家畜から放出されるメタンガスや肥料から排出される亜酸化窒素が、温暖化に影響を及ぼしていることがわかっています。また、この温室効果ガスを吸収する役割がある熱帯雨林の伐採、その多くに畜産が関係しているとも言われます。

ですが、 きちんと環境のことを考えて畜産業を行っている方々もいますし、栄養面や文化面から考えても、すべての動物性食品がよくないとは思いません。逆に植物性食品でも加工処理の過程で消費されるエネルギーはありますし、植物由来であろうとなかろうと、食べものが地球環境に関係があるということを忘れてはいけないと思うのです。

プラントベースフードアドバイザーを育成する植物性料理研究家協会も、あらゆる産業や文化に対して公正中立の立場をとっていて、私もそうありたいと思っています。一人ひとりがこれからの地球のことを考え、日々の食を大切に楽しみながら、自分らしく生きることを尊重し合うことが大切だと思っています。

中村さんがプラントベースに興味を持ったきっかけは?

子どものころから料理が好きで、食と健康や社会のつながりについても考えるようになり、食と健康のプロである管理栄養士の資格を取得しました。2人の子どもを育てながら保育園で食育やアレルギー対応食などに関わるうちに「未来の子どもたちの笑顔につながる食」というものが私のテーマとなり、マクロビオティックなどを学び、植物性食品中心の食生活が自分には心地よいことに気づいたのです。

2009年に独立と同時に始めた料理教室「おいしい楽しい食時間」では、植物性食品を中心に子どもから大人まで楽しめるレシピを提案してきました。自然体で無理なく心地よい食べ方を模索するとともに、フードロスや飢餓に苦しむ人々のこと、地球温暖化をはじめとした環境問題にも目が行くようになり、食に真剣に取り組まなければならないと思うようになりました。

そんななか、昨年春に「プラントベースフードアドバイザー」という新たな資格ができたことを知り、受講することに。プラントベースフードの考え方がほかの食文化や食産業を否定しない公正中立的である点や、プラントベースフードを食文化にするという理念に共感したのがきっかけです。

今後、プラントベースとどんなふうに関わっていきたいですか?

中村さんが栄養バランスを考慮してつくったブッダボウル(レシピは画像をクリックするとご覧いただけます)。

薬膳も学びましたが、医食同源の考えや心身を整える食の力はますます必要になると感じています。これからも、プラントベースフードの楽しさや心地よさを、言葉だけではなくレシピや料理で提案し、管理栄養士として栄養面での考察をしながら伝えていきたいと思っています。

また、プラントベースフードは欧米で進んでいますが、そもそも日本には精進料理という伝統的なプラントベースフードがあります。郷土色豊かな食材も豊富にあるため、風土に根差した自然に逆らわない食べ方も大切にしていきたいと思っています。プラントベースフードという選択肢が、食に関心を持つきっかけになればうれしいです。

中村美穂さんの記事はこちら

栄養不足と思ったら、とりあえずこれ食べよう。管理栄養士考案、レンジで「ブッダボウル」

更年期対策におすすめのレシピ3品を、管理栄養士が教えます

中村美穂(なかむら・みほ)
管理栄養士、フードコーディネーター、プラントベースフードアドバイザー、国際薬膳調理師。料理好きから管理栄養士となり、おいしく楽しく体にやさしい料理やお菓子を探求。商品開発や保育園栄養士の経験を活かし、料理教室「おいしい楽しい食時間」を開催。食事講座や栄養相談、書籍・雑誌・企業のレシピ提供も多数担当している。

撮影/中山実華、構成/鈴木ゆうこ

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