生理痛の治療薬、低用量ピルの服用法は
低用量ピルには、避妊目的で使用される経口避妊薬(OC)と治療目的で使用される低用量エストロゲン・プロゲスチン製剤(LEP)の2種類があります。
どちらも生理痛改善のための治療薬として使われていますが、いちばんの違いは、OCは“保険適用外”の薬であるということ。LEPは保険適用がされる薬で、月経困難症の治療薬や子宮内膜症にともなう痛み改善のために用いられます。
また、服用の仕方にも違いがあります。
OCも、LEPも、4~7日間の休薬期間をおくと生理が来るところは同じですが、OCは、毎月1回服用をお休みして、生理を来させる「28日周期投与」のみ。LEPは「28日周期投与」のほかに、「フレキシブル投与」「延長周期投与」という方法もあります。
LEPのメリットとデメリット
LEPの「28日周期投与」には、「21日間続けて毎日飲んだあと、7日間休む」、または「24日間続けて飲んだあと、4日間休む」という飲み方があります。28日に1回、服用を休んでいる間に、生理のような少ない量の出血があります
また、LEPの「フレキシブル投与」「延長周期投与」は、休薬の頻度を減らし、1年間に来る生理回数を減らす服用方法です。今は、これらの連続した服用方法が一般的になってきています。
生理の回数が減るため、つらい生理痛に困っている人には良い選択肢になります。また、LEPの薬剤によっては、子宮内膜症にともなう痛みの改善をするというメリットがあります。
ただし、「28日周期投与」は次の生理の時期の予定が立ちますが、「フレキシブル投与」と「延長周期投与」は、予定しないときに不正出血が起こる可能性が高いというデメリットもあります。
低用量ピルの服用で、体調に変化を感じたら
「低用量ピルは副作用が心配」という声をよく聞きます。OCもLEPも、薬を飲み始めてから、体調の変化に気づくことがあります。
よくある症状は、頭痛、だるさ、吐き気、乳房の張り、むくみ、不正出血などです。よく副作用といわれているものは、ほとんどが、このような一時的な症状です。ただし、これは飲みはじめによく起こるものです。
これらの症状は、低用量ピルを服用することによって、エストロゲンやプロゲステロンのバランスが変化したことによって起こるものです。
3か月ほどで体が薬に慣れてくれば、大部分が治まるといわれています。自己判断で中止せずに、飲み続けましょう。
心配なときは、処方してもらった医師に相談してください。自分には合わないと感じられる場合でも、勝手にやめたり、低用量ピルは合わないと決めつけたりせず、必ず医師に相談してください。
副作用が強いというイメージは、過去のもの
少ないとはいえ、重大な副作用が起こることもあります。それは血管の中に血の塊ができてしまう「血栓症」です。
命にかかわる副作用ではありますが、低用量ピルによる発生頻度はごく稀といわれており、血栓症の発症リスクは、低用量ピル(OC、LEP)の服用者よりも、妊婦さんや赤ちゃんを産んだばかりの女性のほうが高いとの報告もあるくらいです。
ただし、血栓症リスクの高い病気にかかったことがある人などは、低用量ピルの処方を受けることができません。40歳以上の人、肥満傾向の人、喫煙者なども慎重な判断が必要になります。ですので、医師の指導のもとで服用をすることが必要です。
ピルの「副作用が強い」というイメージは、開発された約40年前の、ホルモン量が多く、副作用を引き起こすことが多かったピルの時代の話です。
今、日本で処方されている低用量ピルは、世界中で長い年月をかけ、たくさんの研究がおこなわれ、安全性が確認されてきたものです。含有されているホルモンの低用量化をはじめ、成分や投与法の改良などによって、いろいろな進化を遂げています。
生理痛緩和や避妊以外のメリットもある
現代女性は、その研究成果の恩恵を受けることができるのです。
知ってもらいたいのは、低用量ピルを飲むことで、生理痛の軽減や避妊への効果以外にも、メリットがあることです。
たとえば、生理周期を安定させ、決まった日に生理を起こすことが可能になるので、仕事や旅行の調整もしやすくなります。
また、出血量が減るため(約1/3になるとも)ナプキンの使用量もかなり減ります。生理痛の軽減だけでなく、子宮内膜症の進行抑制や貧血の改善、PMS(月経前症候群)の症状緩和や生理前にできやすいにきびや吹き出物といった肌トラブルのコントロールにもつながります。
このように、低用量ピルは女性にとってメリットの多い薬。疑問や不安は、迷わず婦人科医に聞いてみましょう。低用量ピルをきっかけに、自分の健康を相談できる婦人科医を見つけるチャンスになると思います。
もっとピルを知りたい
「低用量ピル」基本のキ。飲むとカラダはどうなるの? 種類と選び方
増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。 新刊『もう我慢しない! おしもの悩み 40代からの女の選択』(オークラ出版)ほか、『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)など著書多数。 NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ
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