近年、“ボディポジティブ”という言葉が注目を集めています。簡単に言えば、「太っている/やせている」や「身長が高い/低い」といった “他人と比較”したキレイの基準にとらわれず、ありのままの体型や見た目を愛そうというムーブメントのこと。
ドラマや映画でも、“ぽっちゃり”とした人物がヒロインとaして明るく魅力的に描かれるようになったり、毛染めをせず、白髪のままエイジングを楽しむ人がいたり──。
人種や性別、ものごとの考え方に対する個の違いを尊重しようという意識が定着しつつありますが、同じように「体型や見た目においても多様を認め合おう」「体型にまつわる差別や偏見をなくそう」と声を上げる人や企業が、いま増えているのです。
昨年、11月に開かれた、インクルーシブな社会づくりについて考えるカンファレンス「MASHING UP VOL.4」でも、ボディポジティブをテーマしたトークセッションが行われました。
そこでは、fermata株式会社CEOの中村寛子さんを進行役に、過去、メディアで“女性の体をオープンに話そう”といった企画を担当してきたForbes JAPAN コミュニティプロデューサーの井土亜梨沙さん、そしてモデルとして活動する山本奈衣瑠さんが登壇。
左から時計回りに、井土亜梨沙さん、中村寛子さん、山本奈衣瑠さん井土さんは、このボディポジティブを「“こういう自分もいいんだ”って、自分を自由にしてくれるムーブメント」だと話します。山本さんも、モデルの世界でも、個性的な人たちが目立つようになってきたという現状があり、また体型に関する美意識を変えることで「自分のコンプレックスを長所に変えられるかもしれない」と言います。
しかし、こうしたボディポジティブのムーブメントは、日本ではまだ十分に浸透していないというのが実情だそう。では、どのように自分の身体と向き合い、マインドシフトしていけばいいのでしょう?
トークセッションから得たヒントをご紹介します。
基本は自己を肯定すること。他人と比較しない
ボディポジティブの本質は自己肯定。同時に、周りの人に対しても、体型や見た目の多様性を認める姿勢も大切だと井土さん(右上)と山本さん(中央)。モデルとして活動する山本さんも、じつは自分の体型がコンプレックスだったと話します。昔から、痩せ型体質。街中を歩いていても、周りに“なんであの子はひどく痩せているんだろう”と言われているような気がして悩んだ時期があったそう。
「悩みから解放されたきっかけは、モデルの仕事をするようになって、“あなたは、その体型のままでいいんだよ”と言われたこと。自分の体型が個性のひとつだと思えるようになりました」。自分を肯定してくれる言葉、そして自分を肯定しようとする気持ちが、マインドシフトの鍵になったとのこと。
また、井土さんも「大切なのは自己肯定」だと話します。体型的なコンプレックスがあれば、それが“他人が作った基準”ではなく、“自分の美意識”に本当に反するものなのかを考えてみる。あるいは、自分の体型や見た目の“好きなポイント”を改めて観察していくのも、ボディポジティブになるいいきっかけになるかもしれません。
「好きというのは、自分のなかから沸き起こってくる最強の感情。それをひとつずつ見つけてくのもいいと思います。コンプレックスは、人と比較するところから始まるものだと思いますから」(井土さん)。
新しいことに挑戦して、自分の新しい「好き」を見つける
マインドを変えるには、きっかけやプロセスが必要なものです。
山本さんは「自分には難しいと思う人は、ボディポジティブに自分を愛している人たちをロールモデルにして、彼女たちが過去どういう体験をして、いまどういう考え方としているのか、調べてみるのもいいと思う」と。
また井土さんは、「新しいことに挑戦してみるのもいいかもしれません」と提案します。「普段とは違うリップの色を使ってみたり、新しい趣味を探してみたり。そして、“あ、いいじゃん!”って思ったことを大切にしてみる」。つまり、新しい好きを見つけること。そして、“挑戦する前の自分”と“新しくなった自分”を比較してみること。
「自分自身と比較をするようにすれば、肯定しやすいのではと思います」(山本さん)
特に女性が感じやすい“生きにくさ”から解放されよう!
日常生活において、外見的な要素によるプレッシャーは、一般的に男性よりも女性のほうが大きく受けやすいと言われています。
たとえば、「痩せている=キレイ」という価値観に縛らわれすぎて、無理なダイエットを繰り返したり、またリバウンドして自己嫌悪に陥ってしまったり……。これまでのキレイの価値観に執着することは、結果として“生きにくさ”の原因にもなっていると二人は言います。
最後に、中村さんから「自分に対して、ありがとうと言ってみたり好きと言ってみたり、ロールモデルを探してみたり。ヒントがたくさんあったので、少しずつ実践してみてもらえたら」と視聴者へのメッセージ。
心も身体もヘルシーに生きるために、ボディポジティブのマインドを取り入れてみるのもいいかもしれません。