2019年1月に創業したゴーストキッチンズは、革新的な運営形態でフード業界の注目を集める存在でもあります。「地域の台所」として愛されるゴーストキッチンズの狙いや食へのこだわりについて、代表の吉見悠紀さんにお話を伺いました。
実店舗のない、オンラインデリバリー専門店
中目黒のビルの1室にある、5坪ほどの小さなキッチンから始まった「ゴーストキッチンズ」。オンラインデリバリー専門店として1年で7つのブランドを展開し、坪100万円を売り上げる人気店へと急成長しました。
吉見さん :
海外では数年前から、実店舗を持たない“ゴーストレストラン”が増えていて、Uber Eats(ウーバーイーツ)などと提携して宅配フードサービスを行っています。日本は海外から4~5年遅れで変化しているので、これから日本にもその波がくると。宅配フードサービスの仕組みが確実にできていくことで、食の構造そのものも変わっていくかもしれないと感じ、ゴーストキッチンズを立ち上げました。
地域の人々に寄り添ったメニュー作りを
吉見さんいわく、ゴーストキッチンズの目標は「地域の台所」。日常食をアップデートしていくのが狙いだと話します。
吉見さん :
地域の食のバラエティと、美容や健康面でのバラエティ、その両方を豊かにしていきたい。ゴーストレストランの特徴は、低コストで出店でき、料理の内容もすぐに変更できること。出店した地域のお客様が欲しているものに、どんどん最適化できるのが強みです。
“地域が欲するものをスピーディに提供する”という点で、吉見さんがベンチマークにしているのがコンビニです。コンビニで売れているものは、その地域の人が必要としているもの。そこにさまざまな付加価値をつけ、もっとハッピーな食にできないかと考えていくことで、ビジネスチャンスが生まれると吉見さん。
吉見さん :
全体的にヘルシーなメニューが多いのも、毎日食べてもらうものであれば、健康と結びつけなくてはという思いから。デリバリーはレストランに適わない部分もありますが、その人が一番欲しているものを、一番欲しいときに提供する──それは、僕たちにできることだと思っています。
ヘルシーなのに大満足。女性におすすめのブランドは?
現在、9つのレストランブランドを運営しているゴーストキッチンズ。とくに女性におすすめのブランドを、吉見さんが紹介してくれました。
「さらだのあるせいかつ」
ゴーストキッチンズで最初に立ち上げたブランドのひとつ。両手からこぼれるほどたっぷりのロメインレタス、ほうれん草、レッドキャベツをベースに、18種類のトッピングが用意されています。圧倒的人気メニューは「チキンサラダ」で、スープや玄米ミニカレーなど、サイドメニューも充実。
「すーぷのあるせいかつ」
コンビニでスープを買う女性をよく見かけていて、具材がごろごろ入っていてスープだけで満足できるようなものを提供できたら、喜んでもらえるのでは……と思ったのが出発点。家に届いたときに「あれ、意外とちっちゃいな」とならないように、ボリューム感を意識して作られています。今後はマイ・スープジャーでの提供も可能にし、環境にやさしいサービスも開始予定。
「スンドゥブ専門店ピギョル」
韓国出身のスタッフが監修した、本場の味が自慢のスンドゥブです。一番人気は「豚キムチ」。チーズや納豆をたっぷりトッピングしたメニューもあります。今後はコラーゲンやカプサイシンの効果を取り入れて、もっと美容に特化したメニューを開発予定。
「きょうだけはゆるして」
チキンオーバーライスという、ニューヨーク発の屋台料理をベースにした「きょうだけはゆるして」。ヘルシー志向とは真逆のジャンクフードブランドです。
とはいえ、ベースがハラルフード(イスラム法上、食べることが許されている食品)なので、ヘルシーさもあります。ホームページにあえて味の詳細はのせず、ピンときたソースにチャレンジするのがおすすめ。
「ふるーつ宅急便」
もっと手軽に、カットしたての新鮮なフルーツが食べられたらいいなという思いから始まったら新ブランド「ふるーつ宅急便」。キウイ、バナナ、パイナップル、ピンクグレープフルーツなどを中心に、ほかの野菜やチキン、ファッロ(スペルト小麦)を合わせてサラダ感覚で食べることができます。
2020年6月半ばにリニューアル。テイクアウトも開始
ゴーストキッチンズは、6月半ばに港区西麻布に新店舗をオープン。ブランドをさらに増やし、オンラインデリバリーだけではなくテイクアウトも開始しました。
吉見さん :
実際にご来店いただくときに、雰囲気というのはすごく大事。新しい店はハイエンドなアパレルショップの内装も手掛けるチームが内装をしてくれたので、とても素敵になりました。多くの方に、宅配フードサービスという業態に可能性を感じてもらえるように、年商で1億円くらいにもっていくことが目標です。
今は、テイクアウトはUber Eatsを通してのみですが、自社のアプリを通してよりお手軽、お得にテイクアウトしていただける準備を進めています。
Uber Eatsなどのデリバリーサービスの場合、店舗の場所によって配達できる範囲が決まります。テイクアウトが始まれば、範囲外の人もお店に立ち寄って、ゴーストキッチンズの味を楽しむことができますね。
「私の街にも、ぜひキッチンを作ってほしい!」──そんな熱烈なファンが、これからますます増えそうです。
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吉見悠紀(よしみ ゆうき)さん
ゴーストレストラン研究所代表取締役。広告代理店を退社後、AKINDOを設立。日本企業のアジア進出促進を目指し、マレーシアを中心に食材の輸出やPRイベントを行う。その後、社名をeat worksに変更し、有名シェフのマネジメント、食のPRを担当。2019年1月から1キッチン複数業態型のゴーストレストラン、「ゴーストキッチンズ」を運営するゴーストレストラン研究所を設立。