衣服の快適性と機能性の専門家である佐藤真理子教授(文化学園大学 服装学部教授)に、知っておきたいパジャマ選びのポイントをうかがいました。
どんなパジャマを選べばいいの?
前編では「パジャマに求められる4つの役割」を佐藤教授に教えていただきました。後編ではより具体的に、パジャマ選びのポイントをご紹介します。
Q1.ジャージやスウェットをパジャマにしてもいい?
前編でお伝えしたように、不快な圧迫のあるもの、ざらざらした肌触りのものはパジャマに不向きで、ジャージやスウェットにそういった要素がある場合は避けた方がよいと思われます。
スポーツウェアにみられるフードやジップ、大きなボタン、袖口や裾のきつめのリブなども皮膚に不要な刺激と圧迫を与え、良質な睡眠の妨げになります。
Q2.パジャマに適したデザインはある?
襟ぐりや袖口など、衣服内外の空気の出入り口は開放的な形状であることが望ましいです。空気が衣服の中で動きやすく、睡眠中の熱と水分が放散しやすいように、開口部にゆとりのあるデザインがいいですね。
ゆとりがあれば、襟ぐりは丸首でも開襟でもかまいませんが、暑い時期は丸首ですっきりさせた方がよいかもしれません。また、よけいな圧迫をかけないよう、手首のきついゴムやリブは避けましょう。
とはいえ、ゆとりがありすぎるパジャマはNG。からまったりまくれあがったり、身体にまとわりついて、寝返りの妨げになってしまいます。
Q3.パジャマの下に、キャミソールなどの下着は着たほうがいい?
総合的に判断すると着たほうがよいでしょう。
下着をつけたほうが快適か、そうでないかには個人差があります。ただ下着には、汗を吸う、汚れ対策、体温調節の補助などいくつもの役割があり、基本的に必要と考えます。
夏は下着を着ないほうが涼しいと感じるかもしれませんが、冷房をつけて眠るときは、室内やベッド内の環境の変化に対する緩衝材にもなります。とくに冷えやすい人は、下着を着たほうが安全でしょう。
Q4.生理周期によって「快適なパジャマ」は変わる?
変わります。
女性の体温は生理後~排卵まで低温期が続き(卵胞期)、排卵~生理まで高温期が続きます(黄体期)。低温期には熱を発散させることを身体が求めているので、通気性、透湿性に優れた素材や放熱しやすいデザインのパジャマを選ぶとよいでしょう。
逆に高温期には、身体が熱を保つことを求めるので、末梢が冷えやすく、寒さ感覚も増大します。この時期には、身体全体を冷やさないよう気を付け、冷えを防ぐ素材やデザインのパジャマを着てあげるとよいと思います。
Q5.熱中症対策におすすめのパジャマは?
襟、裾、袖など、衣服内外の空気の出入り口が開放的で、熱や水分を逃しやすいゆったりしたデザインであること。それと同時に、睡眠中の汗対策として、通気性や透湿性に優れ、汗が肌に張り付かない素材を選んでください。
接触冷感をうちだしている機能性素材も、暑い中での入眠にプラスの効果があると報告されています。上手に活用しましょう。
「パジャマといえば綿」というイメージがありますが、シルクや麻も吸湿・吸水性に優れています。また近年は、さまざまな機能性素材が出ていますので、快適な睡眠にも役立ちます。ぜひご自分に合うものを見つけていただきたいと思います。
理想的な睡眠には、衣服内の環境、ベッド内の環境、住環境が関わり、パジャマはその中でも直接的な影響を心身に及ぼします。衣服は第二の皮膚ともいわれます。身に着けるものへの配慮と工夫で、質の良い「快眠ライフ」を手に入れてくださいね。
今日こそ快眠!
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佐藤真理子(さとう・まりこ)教授
文化学園大学服装学部・大学院生活環境学研究科教授。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間環境学専攻博士課程修了。博士(学術)。放送大学・千葉大学ほか非常勤講師等を経て現職。専門は衣服の快適性と機能性。著書に『被服学事典』(分担執筆)(朝倉書店)、『衣服の百科事典』(分担執筆)(丸善出版株式会社)、論文に『女性の生理的特性と衣服の温熱的快適性』(繊維学会誌)など。日本家政学会、繊維学会(理事)、日本繊維製品消費科学会、ファッションビジネス学会ほかに所属。
取材・文/田邉愛理、企画・構成/寺田佳織(マイロハス編集部)、Photo by Getty Images, image via shutterstock