口臭専門クリニック 中城歯科医院 院長であり、東洋医学にも詳しい中城基雄先生に聞く、ニオイ玉の正体と対処法。前編に続き、後編ではニオイ玉をできにくくする方法をお届けします。
ニオイ玉の予防手段は?
ニオイ玉には「レシピ」があり、口内細菌、食物残渣、剥離粘膜、ポケット浸出液からできています。食物残渣とは食べかすのこと。剥離粘膜とは口内から剥がれ落ちた粘膜、ポケット浸出液は歯と歯肉の間の溝(ポケット)から染み出してくる浸出液のことです。
中城先生 :
このうち口内細菌以外の3つに関しては、なかなか自分でコントロールすることができません。したがって口内細菌を減らすことが、膿栓(ニオイ玉)の予防手段としては重要になります。
まずは口内の「善玉菌」を増やすこと
じつは腸内細菌と同じように、口内細菌にも善玉菌・悪玉菌・日和見菌が存在します。口内細菌のバランスがよい、つまり善玉菌の数が多ければ、膿栓ができにくくなるとのこと。
中城先生 :
膿栓を予防するためには、口内の善玉菌を増やす心がけが必要。口内の善玉菌には、サリバリウス菌・ロイテリ菌などがあります。乳製の発酵性食品に多く含まれているので、毎日摂ることが善玉菌を増やす近道です。
近年は機能性食品として、ロイテリ菌含有を謳っているヨーグルトやサプリメントがあります。それらを併用すると、より効果的とのこと。中城先生のクリニックでは、ロイテリ菌の生菌による善玉菌補充療法も実施しています。
ニオイ玉を排出する「唾液量」をアップ
膿栓の予防手段として、もうひとつ見逃せないのが「唾液」の働きです。
中城先生 :
唾液の中には免疫物質(IgA)、消化酵素(アミラーゼ)、保湿成分(ムチン)が含まれ、加齢と共に唾液量は減少します。
唾液量がたっぷりあれば、ニオイ玉の原料となる物質は胃の中に流れ、胃酸によって死滅します。しかし唾液量が不足すると、スムーズに排出されず、のどの奥のくぼみにたまってしまいます。
唾液量が少ない人は「舌」でわかる
自分の唾液量をチェックするには、「舌」を観察してみてほしいと中城先生。舌の真ん中に縦に入るくぼみが深い人や、ひび割れ(裂紋)がたくさんある人は、唾液が少ないタイプである可能性が高いそう。
中城先生 :
東洋医学でいう「腎虚型(じんきょがた)」。のぼせ、火照り、不眠、瞼のけいれん、ひざ、腰痛などの症状がある人も多いです。
体質改善のためには、体にうるおいを与えるレバー、うなぎ、小魚、のり、わかめ、ひじき、ほうれん草、玄米、うるち米、ピーナツ、プルーンなどを食べるとよいといわれています。
「カチカチ&グルグル運動」で唾液を増やす
唾液の分泌を促すためには、以下のようなトレーニングも効果的だと中城先生。口が乾いたと感じたら、ぜひ試してみてください。
「カチカチ運動」を36回口を横にニーッと広げ、下あごをカチカチ音が出るまで36回動かす。 「グルグル運動」を左右12回
軽く舌を出し、左右に12回ずつグルグル回す。
中城先生 :
近年の研究で、口内の悪玉菌がつくる毒素が歯肉から体内に入り、全身に影響を与えていることがわかってきました。細菌性心内膜炎や糖尿病、女性の場合はプロスタグランジンの分泌が増えることで、早産・未熟児・不妊への影響も指摘されています。
口内や腸内の善玉菌には唾液の働きを補佐する作用もあるので、口内環境を整えることで唾液の状態もよくなります。
膿栓だけでなく、全身で起きる現象は「体から届く健康注意メール」だと語る中城先生。小さなサインを見逃さず、できることから口内環境を改善していきましょう。
口内環境を改善
1,430円
中城基雄(なかじょう もとお)先生
1959年、横浜市生まれ。歯学博士、鍼灸師。中城歯科医院院長。日本歯科東洋医学会認定医。日本歯科色彩学会理事、全日本鍼灸学会認定師。日本健康・栄養食品協会(JANHA)認定食品保健指導士。84年に東京歯科大学を卒業し、88年に日本大学歯学部大学院卒業後、中城歯科医院院長に就任。2006年からは口臭治療をメインに行い、体質由来の口臭を治療することで「なぜか病気や不調まで治る歯科医院」と呼ばれるように。『ホンマでっか!?TV』をはじめ、テレビや雑誌などの出演も多数。
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