Image: PRESSLAB/YouTube

──ライフハッカー[日本版]より転載

家族でときどき観るポッドキャストに、ジョー・ローガンの「The Joe Rogan Experience」があります。その中に、新型コロナウイルスによる予測がつかない今の状況を、どう乗り越えるかのヒントがありました。

ローガンさんはタレントで格闘家でもあり、この人気ポッドキャストには、格闘家や俳優、現在大統領選に立候補しているバーニー・サンダース上院議員まで、幅広いゲストが登場しています。

元ネイビーシールズのゲスト

3月21日に公開されたポッドキャストのゲストは、アンディ・ストンフさん。元ネイビーシールズ隊員で、ネイビーシールズの訓練教官も務めた経験があります。

3時間近いポッドキャストでは、シールズでの経験や格闘技などいろいろなトピックが飛び出しました。

一般人の想像を超える経験をしているアンディさんが、新型コロナウイルスによる予測がつかない今の状況をどう乗り越えるかについて、アドバイスをしています。

自分がコントロールできることにエネルギーを注ぐ

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Joe Rogan(@joerogan)がシェアした投稿 - 2020年 3月月21日午後2時22分PDT

まずはネイビーシールズでの経験から、パニックになるのがもっとも危険だと言います。それは恐怖心が決断力や判断力を左右するから。

続けて、「自分がコントロールできることだけにエネルギーや時間を注ぐこと」が大事だといいます。

僕が大きく影響された考え方を紹介するよ。アーチェリーの的のような同心の二重の円があると考えてください。(アーチェリーで最低ポイントがつく)外側の円は「circle of concern(自分の関心や懸念ごとの円)」。

(的の中心にある)小さな円は「circle of influence(自分の影響の円)」なんだ。多くの人が、株式市場の動きや店頭のトイレットペーパーの在庫、そんなことに時間やエネルギーを注いでいる。

でも、そんなことは自分のコントロール外だ。時間やエネルギーや努力を注ぐべきことは、自分が影響を与えられる小さな円に中に属することだけなんだよ。

たとえば、自分の言動、そして感情にまかせて決断をするのかどうかといったこと。

たとえば、外国の状況に理由なく不安を感じたりあらゆるニュースを見ずにいられないのは「懸念の円」に入ります。でも、それは自分のコントロール外なので「影響の円」には含まれません。

一方、人の多い場所への外出を避ける、外出時にはマスクと手袋をして自衛する、スーパーで買い占めはしないなどは、自分がコントロールできることなので「影響の円」に入ります。

終わりが見えてこない現状では、懸念の円がどんどん大きくなっていきます。でも、自分がコントロールできること、自分の影響下にあることは限られています。

それだけに集中するのが、ネイビーシールズのような特殊部隊が任務を果たすための心構え。これはわたしたちにも使えます。

自分の世界を小さくする

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約半年にわたるネイビーシールズの訓練を訓練生、そして教官として経験したアンディさんならではのアドバイスは、「自分の世界を小さくし、時間も短く切って考える」

「以前話した時に、自分の世界を小さくできることが大事だと言っていたよね」というジョーさんに答えて、アンディさんはこう言います。

そう、まさしくそれは現状にあてはまる。ネイビーシールズの訓練では訓練生はどんなことが待ち受けているのかわからないけれど、教官はわかっている。

身体を究極まで痛めつけ疲労の極限に達した時、精神にはどんな影響があるのか。自分よりもチームを大事にできるのか。

訓練の途中で脱落していく訓練生は、状況に耐えられなくなってしまうんだ。つまり、自分の世界を小さくするのと正反対のことをしているというわけ。

「自分の世界を小さくする」というのは、上記の「自分が影響を与えられる部分だけにフォーカスする」に重なります。

惰性でやっているSNSを辞める、インターネットの使い方を見直し自分にプラスになるものに絞る、くよくよ悩んでいた過去の出来事を手放し、今に集中する。

今は物理的な活動範囲が狭まってもいますが、精神的な活動についても取捨選択して、自分の世界を小さくすることが厳しい状況を乗り越えるコツといえるようです。

半年間続くネイビーシールズの訓練を思い出して、アンディさんは続けます。

(前略)(半年間の訓練に対して)捉え方は2つある。ひとつは180日間。もうひとつは、日の出日の入りが180回。

丸いパイを見て「これ全部食べなきゃいけないのか」と思うと意気消沈するけど、一切れずつ食べることに集中して、それを繰り返してゆけば食べ切れるというわけ。

(中略)訓練の中に「地獄週間」というのがある。これは日曜日の夕方から金曜日の午後まで続き、水曜日に2時間だけ睡眠時間がもらえる。これを5日間とまとめて考えるのではなく、食事時間で捉えるんだ。

6時間ごとに組み込まれる食事を、次の食事を目標に、そしてまた次の食事までがんばる、それを繰り返す。

大部分の脱落者は日曜日の夜から火曜日の朝の間に辞めてゆく。火曜日の午後まで持ちこたえられれば、訓練を修了できる。

(タスクや時間を)消化できるサイズにして、どんなに身体が疲労していてもやることを小さく捉えて、めげない。つまるところそれだけなんだよ。

小さな時間軸で考える

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アンディさんの言葉を聞いていて思い出したのが、ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』。オーストリアの精神科医・心理学者のフランクルが、第二次世界大戦時に強制収容所に入っていた経験を語った本です。

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本には、クリスマスまでには、いついつまでには収容所から出られるだろうと比較的楽観的に考えていた人たちが、その時が来ても解放や終戦の気配は見えず、少しずつ気力を失い死んでいったことが描かれていたのを覚えています。

一方、フランクルはそのような捉え方はせず、ただ毎日毎日を過ごしていき終戦まで生き延び、解放されました。

これは、アンディさんのアドバイスと重なります。世界を小さく自分のコントロールの範囲にして、時間軸も小さくすることによって、予測がつかない状況を乗り越えた例だといえるでしょう。

英語に「Take it day by day」「One day at a time」という表現があります。

それは、1日という期間で物事を捉える、将来は考えずにその日だけに集中する、という意味です。まだ手元に食料やトイレットペーパーがあるなら、なくなった時の心配はしない。とは言いつつも、そう簡単ではないんですけどね……。

刻々と状況が変わる今は、まさしくone day at a time、いえ、それどころかone hour at a timeの心構えが必要な時です。

どこにいても重苦しい閉塞感があり、気が滅入りそうですが、アンディさんやスコットさんのアドバイスを取り入れて、健康に留意しながら、1日1日を地道に、根気よく過ごしていきたいです。

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