単にだらしないだけなのかしら? と自分を責めたくもなります。でも、そんな気分の落ち込みは、あなたの性格のせいではないかもしれません。
「気のせいではありません。我慢しなくてよいのです」と話すのは、漢方専門医として婦人科診療に携わる、まつしま病院産婦人科の内山心美(うちやま・のぞみ)先生です。
どんな症状があるの?
女性は月経前後や更年期など、女性ホルモンの変動に伴い、精神神経症状が変化しやすいもの。
「疲れやすい、頭痛、めまいなども含む精神領域の症状はやる気の問題だとか、怠けていると誤解されがち。女性に特有のホルモンの変化や加齢に伴い起こるケースも多い」と内山先生。
たとえば、どのような症状があるのでしょう?
更年期障害……ほてり・発汗や、めまい・動悸などの身体症状のほか精神神経症状(※憂うつ、イライラ、不安、意欲の低下、不眠など)が生じる場合もある。 閉経前後5年間に現れることが多い。
月経前症候群……下腹部痛や腰痛などの身体症状のほか、精神神経症状(※)を生じる場合もある。 月経1週間前に現れることが多い。精神神経症状が強い場合は、月経前不快気分障害(PMDD)となる。
このほか「マタニティーブルー」は一過性のもので、産褥早期(2週間以内)に上述の症状(※)に加えて涙もろさなどを、「産後うつ」は、産後1〜3か月に罪悪感、無価値感などを生じる場合があります。
更年期障害は女性ホルモンの分泌に波(ゆらぎ)が生じ、ゆらぎながら減少することが関係。PMSは月経サイクルに伴うホルモン分泌の変動とホルモンが代謝されてできる物質が自律神経に影響を与え、さまざまな症状が現れるといいます。また、社会的背景や環境の変化などがストレスとなり、発症のきっかけになることも。
どんな治療法があるの
メンタル不調を感じたら、症状や年齢などに合わせ、薬物治療やさまざまな治療法があります。
女性ホルモン製剤……更年期障害:ホルモン補充療法(HRT)、PMS:低用量ピル 向精神薬……抗うつ薬、睡眠導入剤など 漢方薬……体質や体格、症状に合わせた漢方薬このほか、「カウンセリング」「心理療法」「運動療法」「食事療法」を行う場合もあります。
メンタル不調に使える漢方薬は?
加味逍遙散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)などが代表的。さまざまな漢方薬のなかから、医師の診察のもと、体質や症状に合わせて処方されます。ほかにも以下のような漢方薬があります。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)……代表的な理気剤(気をめぐらす)
気滞(気持ちが沈む)のうちでも不安を伴う場合などに処方されます。 喉や胸に異物感、つかえる感じ(喉は梅核気、胸は痞塞感)がするときに。 効能:不安神経症、つわり、神経性胃炎、咳など。桃核承気湯(とうかくじょうきとう)……ガッチリしたタイプの人
便秘とともに急激に起こる精神症状がある場合に使用します。 効能:月経困難症、月経時や産後の精神不安、頭痛、めまい、肩こり加味帰脾湯(かみきひとう)……虚弱体質で血色の悪い人
倦怠感、易疲労、貧血など血虚の状態で、のぼせ・ほてり・胸苦しさ・イライラ・不眠がある場合に用います(たとえば産後、月経期など)。 効能:貧血、不眠症、精神不安ただし、「すぐに効果がでないこともあるので、1~2か月は医師と相談しながら 飲み続けていただきたいです」と内山先生は話します。また、メンタル不調に漢方を使う場合には、次のことに注意しましょう。
症状が重い場合には、漢方だけに頼らず専門医を受診する。 メンタルに支障をきたすには社会的要因(仕事や家庭、主に人間関係)や心理的要因(性格的要因)が背景にあることに留意する。「春は環境の変化が多い時期なので、何か異変を感じたら、医療機関へ相談していただきたいと思います。第三者にお話しすることで気持ちが整理されたり、楽になるからです」 と内山先生。
春は、気候や人間関係など「変化」が多くなる季節。漢方を上手にとりいれながら、気持ちのよい春を迎えましょう。
漢方のこと、もっと知りたい
[漢方プレスレター]image via shutterstock
コメント
コメントを書く