そんな女性のヘルス・メンタルケアの分野に一石を投じたのが「Femtech(フェムテック)」なるワード。次なる成長市場として世界で大注目されていて、日本でもジワジワと浸透し始めています。
生理や妊娠にとどまらず、子育て、メンタルヘルス、セクシャルウェルネス、更年期などと多岐にわたる「フェムテック」とはどんなものなのでしょうか。
世界で大躍進を続ける「フェムテック」に注目
2019年11月7・8日に東京・渋谷TRUNK(HOTEL)で開催されたビジネスカンファレンス「MASHING UP(マッシングアップ) 」で、「あなたの知らないフェムテック/フェムケアの世界」というセッションがおこなわれました。
Forbes JAPAN コミュニティプロデューサーの井土亜梨沙さんをモデレーターに、医師として日々女性に寄り添う海老根真由美さん(白金高輪海老根ウイメンズクリニック院長)と、国内外で医療政策や医療経済に携わってきた杉本亜美奈さん(fermata Inc.)が登壇。会場にはさまざまな世代の女性たちが集まりました。
さて、まず知っておきたいのが「フェムテック」という言葉の定義。フェムテックとは「Female(女性)」と「Technology(テクノロジー)」を掛け合わせた造語で、女性の健康課題を解決するために開発された、おもにテクノロジーを使用するプロダクトやサービスなどのことをいいます。デジタルデバイスでないものは「フェムケア」と呼ばれることも。
2012年ぐらいに生まれた言葉ですが、そのきっかけは「男性の理解が得られなかったから」なのだとか。フェムテックの草分け的存在であるデンマーク人女性アイダ・ティンさんが、月経アプリの開発に投資を募ったところ、ヨーロッパであってもITや投資の分野はまだまだ男性社会で「ビジネスにならない」と一蹴されてしまいます。
そこでこの「フェムテック」という言葉をもって、この分野はひとつの産業であり、市場ができることをアピール。60億円の融資を得ることができたそうです。それから7年後、2019年は上半期だけで400億円、一年にすると1,000億円を超えるとも。また、2025年には世界で5兆円規模の市場になると予想されています(※)。
杉本さんがまとめたところ、2017年には世界で50社だったフェムテック関連の企業は、2019年には221社までに増加。はじめは生理や妊娠がメインでしたが、メンタルヘルスや更年期などまで網羅しているそうです。
ちなみに日本はフェムテック関連企業はまだ10社ほど。その伸びしろに期待が集まります。
※ CBinsightsの調査レポートより
女性にやさしく、デザインもかわいいプロダクトの数々
具体的にどんなアイテムがあるのかも気になります。
まずは、フェムテックという言葉の生みの親とされるアイダ・ティンさんが手がける月経周期トラッキング・アプリ「Clue」。190カ国で、11億人もの女性に支持されています。
「LOON CUP」は、膣の中に入れて使う月経カップ。サスティナブルであることはもちろん、経血の色や量がひと目でわかるので、自身の生理について知る機会にもなります。現在は、膣の温度や経血の状態を測定してくれるセンサーを仕込んだカップを開発中で、すでに7億円の融資を調達しているとか。
ほかにも、吸収率が高くてナプキンなしで過ごせるショーツ「Thinx」や、おなかの赤ちゃんの様子や陣痛をトラッキングできる「Bloomlife」、女性のためのセクシャルトイ「Dame」、100%天然素材でつくられた膣の保湿剤「DAMIVA」などが紹介されました。
フェムテックのアイテムと知らなくても思わず手にとってしまいそうな、かわいいデザインのものばかりです。
女性がワクワクしながら自分の体と向き合うために
フェムテックが規模を大きくしている理由として「女性の社会進出が進み、ただ仕事を持つだけでなく投資の決定権を持つようなポジションに立つ女性が増えてきたということ考えられる」と杉本さん。また自由に使えるお金が増えて、自身のことをケアする女性が多くなったことも挙げられます。
また、海老根さんは「クリニックの患者さんは、これまで誰にも話せずひとりで抱えてきたという人が多い。悩みを声にすることが新しいプロダクトにつながりますし、フェムテックの広まりやプロダクトの実用化が進めば、私たち医師にとっても大きな発見や気づきとなり、多くの女性の助けになるはず」と語ります。
世界的にタブー視されることが多かった、女性の身体や性のこと。女性たちがワクワクしながら自分の体と向き合うためにも、「私たちはこうありたい」と、声をあげて発信することが大切なのですね。
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