性に関する呼び方にも、いろいろなものが増えてきました。
「ノンバイナリー」ってどういうこと? そして「エイジェンダー(agender)」「ジェンダークィア(genderqueer)」「ジェンダーフルイド(genderfluid)」など、ジェンダーに関して新しく現れたほかの呼び方とどう違うの?
「性」と「ジェンダー」はここが違う!
image via shutterstockちょっとその前に。混同されがちな「性(sex)」と「ジェンダー(gender)」の違いをはっきりさせましょう。
「性」は生物学的なもので、染色体によって決まりますから(XYは男、男性で、XXは女、女性)、性を変えることはできません。
でも「ジェンダー」は変えることが可能です。ジェンダーとは、その社会でそれぞれの性の特性とされている、さまざまな事柄にすぎません。
たとえば、服装。なぜ男の人がピンクのドレスを着たりハイヒールをはいたりできないのかに理由はありません。じつは15〜19世紀の西洋社会では、ドレスのようにひらひらした衣装を着るのは男性の風習でもありました。
でも現代の米国では、ドレスを着たり口紅をつけたりするのは女性的だと考えられています。生物学的には男性の人でも、いつもドレスやハイヒールを身に付けてメイクしていると、男性のような気がしなくなるのはそのせい。だとすると、その男の人は自分のジェンダーが男性ではなく、何か別のものだと言うかもしれませんよね。
さて、ジェンダーについて少し理解したところで、さまざまな呼び方を調べてみましょう。
「ノンバイナリー」の意味
image via shutterstock「ノンバイナリー(nonbinaryまたはnon-binary)」は、ジェンダーが完全に男性でも女性でもない人に使います。
つまり、社会が見なす男性にも女性にも適合(あるいはむしろ、一致)しないということ。この点で、「ノンバイナリー」は“総称”、まとめた呼び方です。自分が必ずしもきっちりと男性である、女性であると見なせないのかは、人によっていろいろなので。
「ジェンダークィア」の意味
image via shutterstock「ジェンダークィア」は本来、「ジェンダー・ノンバイナリー」と同じ意味です。
ただ、「ジェンダークィア」は1980年代と90年代にLGBTQの雑誌と学者の間で使われ始めた言葉です。
「ジェンダーフルイド」の意味
image via shutterstock「ジェンダーフルイド」は、男性的な気持ちが強いときもあれば、女性的な気持ちに傾いているときもあるということを認める人。
男性的なときにはパンツをはきたいと思い、自己主張が強く、独立していますが、女性的なときにはメイクをしたりハイヒールをはいたりしたいと思い、人に甘えたくなります。
私の経験では、ジェンダーフルイドの人は代名詞の好みが一貫していないことがあります。典型的な男性に傾いているときは「彼(he/him)」と呼ばれても構わないし、典型的な女性の方が強いときは「彼女(she/her)」と呼ばれたっていいんです。
ところで、2019年に、米国を代表する辞書『メリアム=ウェブスター英英辞典』に、“ジェンダー・ニュートラル(heやsheでなく、性的に中立、区別のない)”として「they」と「themselves」が追加されました。
ジェンダーフルイドの人の中には、このような「they/them」を好む人もいます。
「エイジェンダー」の意味
image via shutterstock「エイジェンダー」は、字面では「ジェンダーのない」ですが、実際はもっと多くを意味します。
政治的な含みを持つ場合もあり、自分はジェンダーという概念が存在することすら信じていないから、必ずしもノンバイナリーと称したいとも思わない。なぜならば、そう称すると、ジェンダーが存在するはずと認めることになる(ノンバイナリーは、男性にも女性にも適合しないという意味にすぎないので)というときにも使われます。
また、あるジェンダーとしてでなく、ひとりの人間として自分を認識したいという意味を持つ可能性もあります(たとえ典型的な男性、または女性として振る舞っていても)。
あるいは、どの呼び方も自分が思うジェンダーと合わないため、ジェンダーがある人の対極として、ジェンダーがないことを示す呼び方を選んだという意味にもなります。
「ジェンダー・ノンコンフォーミング」の意味
image via shutterstockもうひとつの総称、「ジェンダー・ノンコンフォーミング(nonconforming)」は文字通りで、何らかのジェンダーに「ぴったり合っている気がしない」という意味になります(nonconforming=適合しない)。
ノンバイナリーとの唯一の違いは、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人は、それでも自分をシスジェンダー(cisgender:生物学的な性と自分が認める性が一致している人)と見なしている場合が多いところ。
つまり、メイクをしてハイヒールをはいているゲイの男の人が、自分はジェンダー・ノンコンフォーミングだと言うかもしれませんが、それでも自分を男性と見なしているわけです。従来男性に属すると見なされることを好んでする女性(「トムボーイ(tomboy)」と呼ばれます)でも同じです。
ジェンダーの呼び方について、気をつけておきたいこと
image via shutterstockこれらの呼び方は比較的新しく、よく使われるようになるにつれて、呼び方の定義も変わっていったりもします。
それに、これらの呼び方の多くは全く同じ意味のように思えるのに、どういうわけか、例えばジェンダークィアの(と思われる)人がどれかの呼び方よりも別の呼び方を好む可能性もあります。
自分のジェンダーを、絶対的に男性とも女性とも見なしていない人々がいるということ。これは、覚えておくとよいでしょう。
人間関係もいろいろ
恋しなくてもいいじゃない。自分がアセクシャル(無性愛者)か確かめる方法
複数の人と同時につきあう「ポリアモリー」。あなたの潜在タイプはどれ?
Zachary Zane/Here's What Nonbinary Actually Means—And What People Often Get Wrong About It/STELLA MEDIX Ltd.(翻訳)