コンセプション(Conception)とはお腹の中に新しい命をさずかることで、プレコンセプションケア(Pre Conception Care)とは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが、自分たちの生活や健康に向き合うことです。
アメリカで生まれた考え方で、日本でも国立成育医療研究センターが日本初のプレコンセプションケア外来を開設。広がりを見せています。
みなさんは「将来の妊娠を考えながら」というのは、具体的にどういうことだと考えますか?
生理の回数増加はなぜ問題?
私たち女性は、初潮を迎える12歳頃から閉経する50歳すぎまで、約40年近くもの間、毎月憂うつな生理期間を過ごしています。
生理は、赤ちゃんを迎える準備をしていたものを使わなかったときに、体の外に排出するおそうじのために起こるものです。
妊娠の回数が少なく、また妊娠を望む年齢が高くなっている現代では、一生涯で経験する生理は450回以上ともいわれ、戦前のおよそ10倍にもなっているといわれています。
生理の回数が多いと、子宮内膜症や子宮筋腫など不妊につながるような病気のリスクも高めてしまうことがわかっていて、月経前症候群(PMS)で、生理前のイライラや落ち込みなどに悩む人も増加しているように、生理にまつわるトラブルを抱えている人はとても多くなっています。
不妊治療の技術は高いのに、成産率が低い?
日本は不妊治療が盛んに行われている国です。現在、生まれてくる赤ちゃんの約20人にひとりは不妊治療で生まれてきた赤ちゃんだということがわかっています。
日本の不妊治療技術は世界的に見ても非常に高いのですが、残念なことにその成産率は高くありません。だいたい治療件数は42万件(2015年)に対して、妊娠したのは7万件、実際に赤ちゃんが無事生まれたのは4万9千件しかないのです。
これは、不妊治療を開始する年齢が、日本は高い傾向にあり、40代以上の治療数が非常に多いことが原因です。いわゆる「卵子の老化」です。
また、卵子の数は生まれたときに200万個と最も多いのですが、年齢を重ねるごとに減っていき、閉経する頃にはゼロに近づきます。
35歳を過ぎると妊娠しづらくなるというのは、卵子の数が減り、ひとつひとつも老化してしまうため。見た目はアンチエイジングできても、卵子の老化は避けられません。
出産する年齢が高いと「高齢出産」と呼ばれますが、こう呼ばれるのには理由があります。
流産や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病など、妊娠を考える女性の体にも大きな負担やリスクがかかるだけでなく、生まれてきた赤ちゃんのその後にも大きく影響することがわかっています。たとえば早産や低出生体重児、先天異常、周産期死亡などです。
日本の女性が陥りがちな健康問題
また、それ以外にも日本の女性で問題になっていることは、やせすぎの問題、それに性感染症の問題です。
日本の20代女性の5人にひとりがやせすぎと言われています。肥満だけでなく、やせていることも、低出生体重児や、生活習慣病発症のリスクを上げるなど、赤ちゃんには悪影響を及ぼす可能性があります。
また、性感染症も、日本では今、梅毒が流行しています。特に20代の女性に増えています。症状が出ないため、妊娠中に感染してしまうと、早産や死産、先天異常につながってしまうことも。
つまり、自分の健康を考えることは、自分自身のことだけでなく、その子ども、またさらにその子どもと次の世代の健康まで関わってくるということなのです。
毎月の生理は、自分自身の健康状態を教えてくれる大事なサイン。忙しいから、婦人科へ行くのが恥ずかしいから、という気持ちはひとまず置いておいて、少しでも不安を感じたらまずは婦人科へ相談に行ってみませんか?
将来、子どもがほしいと思う人もそうでない人も、いつか訪れる未来のために、自分自身の健康を大切に。それがプレコンセプションケアにつながっていきます。
プレコンセプションケア・チェックシート(女性用)
適正体重をキープしよう! 禁煙する。受動喫煙を避ける。 アルコールを控える。 バランスの良い食事をこころがける。 食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取しよう。 150分/週運動しよう。こころもからだも活発に! ストレスをためこまない。 感染症から自分を守る。(風疹・B型/C型肝炎・性感染症など) ワクチン接種をしよう。(風疹・インフルエンザなど) 危険ドラッグを使用しない。 有害な薬品を避ける。 生活習慣病をチェックしよう!(血圧・糖尿病・検尿など) がんのチェックをしよう!(乳がん・子宮頸がんなど) 持病と妊娠について知ろう。(薬の内服についてなど) 家族の病気を知っておこう。 歯のケアをしよう。 かかりつけの婦人科医をつくろう。 計画:将来の妊娠・出産を、ライフプランとして考えてみよう。(出典:国立成育医療研究センター)
妊娠を考えたら
現代女性は生理の回数が多すぎる。医師が語る女性の悩みとこれからの解決策
image via Shutterstock