ただの生理痛って、ほっとかないで。
米国の女性健康局によると、生殖年齢と呼ばれる15~44歳の女性のうち、その月経痛の原因が子宮内膜症であるケースが11%にものぼるそう。
「子宮内膜症とは、子宮内膜という組織が、子宮の外、特に骨盤内で増えて炎症を起こす病気です」とスタンフォード大学産科学および婦人科学の臨床准教授であるジェニファー・コンティ医師。
より分かりやすく言うと、本来の子宮内膜のように、生理が始まると子宮頸部から膣を通り体外へ排出されるかわりに、子宮内膜症では、はがれた子宮内膜が卵管でいわば「逆流してしまい」、卵管の外に出て骨盤内で腸など周囲の臓器に付着して増殖してしまうのです。
「子宮以外の場所で増殖した子宮内膜組織は骨盤内にとどまり、本来の子宮内膜と同じ働きをします。しかしそれはその場で出血し、体外に排出されません」とイエール・ニューヘブン病院産科学・婦人科学・生殖内分泌学の臨床教授であるメリー・ジェーン・ミンキン医師。「それがどんなに痛いかは、簡単に想像できるとおもいます」
家族がかかっていたら要注意
image via shutterstockこの子宮内膜が卵管へ逆流してしまうこのプロセスは、逆行性月経と呼ばれ、子宮内膜症を引き起こす原因なのではないかと言われています、とニューヨークを拠点とする婦人科医で、子宮内膜症に関する情報サイト「SpeakENDO」の監修メンバーのひとりでもあるレベッカ・ブライトマン医師。
子宮内膜症のはっきりとした原因は明らかになっていませんが、最もよくみられる危険因子として家族歴があります、とコンティ医師。「母または姉妹で子宮内膜症を患ったことがある方がいれば、あなたも子宮内膜症になる確率が高くなります」。
また子宮内膜症は生殖年齢の女性に発生しますが、特に30代の女性に発症頻度が高く、それは生理の開始年齢と関連性が考えられます、とミンキン医師。
子宮内膜症を患う女性のほとんどが、日常生活に支障を感じています。「子宮内膜症が原因で学校を欠席したり仕事を休んだりすることが増え、また性機能不全やそれが原因で人間関係が悪化するなど、生活の質にも影響がでます」とニューヨークを拠点とする婦人科医で『The Complete A to Z for Your V』の著者でもあるアリッサ・ドウェック医師。
もうひとつのつらい現実は?「子宮内膜症とはっきりと診断されるまでに長い時間がかかることです。またひとりだけでなく複数の医師に診てもらわなければ分からない場合もあります」とドウェック医師。
だから、早期発見で早期に治療をはじめることが、とても重要なのです。あいにく症状の出方は人によってさまざま。非常に個人差があり、人によってはまったく自覚症状がないこともあるそう。でも、婦人科医が教えてくれる危険サインを知っておけば、症状を見逃さず医師に対応策を相談できます。
1. 生理痛が極端にひどい
子宮内膜症の痛みは、通常の「生理痛」のレベルをはるかに超える痛みです。
子宮内膜症による生理痛は、生理の1、2日前からはじまり、生理が終わったあとも数日間続くのが一般的です、とコンティ医師。「子宮内膜症の痛みは、慢性的で、鈍く、ズキズキと鋭い痛みを感じ、熱をもった感じがあるのが特長です」
生理中に痛みが極端に増すのは、女性ホルモンへの反応と関係しています。毎月、子宮内の内膜組織は、女性ホルモンに反応して厚くなり、剥離し、出血し排出されます。
「しかし逆行性月経が起こると、その出血が腹腔の外へと排出されないため、痛みが生じるのです」とドウェック医師は説明します。
2. セックスで痛みがある
セックスで痛みを感じることや、不快感があったりしませんか?それもまた子宮内膜症のせいかもしれません。
子宮内膜組織が本当は毎月排出されているはずなのに、あるべきではない場所にたまってしまうことから、セックス中に不快に感じることがあります。「瘢痕(はんこん)組織が生理のたびに蓄積し、全身に痛みを感じるようになり、性交痛が出る人がいます」(ドウェック医師)
そういうわけで、子宮内膜症はきちんと対処されなければ、親しい人との関係に悪影響を及ぼす可能性があるのです。「性交痛が原因で、セックスに積極的になれなくなります」とUCLAヘルスの婦人科医のリーナ・ネイサン医師。「それにより、パートナーとの関係が悪化することがあります」
なので、もっと気持ちよくセックスができるよう、あなたの症状をチェックし、パートナーと一緒に対処法を考えてみるとよいかもしれません。
3. なかなか妊娠できない
長いこと妊娠しようとがんばっていてもできない人は、子宮内膜症の可能性について医師に相談してみるとよいかもしれません。子宮内膜症は不妊の重大な原因にもなります。実際に『Journal of Assisted Reproduction and Genetics』に報告された研究によると、不妊女性の25~50%が子宮内膜症でした。
「その原因はあきらかになっていませんが、不妊は子宮内膜症によって起こります。瘢痕組織の蓄積が妊娠しにくい環境をつくりだしているからではないかと言われています」とネイサンさん。
明晩の『Prevention』に続きます。
※本記事は、2019年6月26日に『Prevention』の医療監修ボードのメンバーで、産科学および婦人科学の准教授であるキャロライン・スウェンソン医師によって、医学的知見から監修されています。
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