複数の人が話していると、何を言っているのか内容がよくわからない。うるさい場所での聞き取りがままならない。

聴力には何の問題もないのに、特定の状況になると、なぜかうまく聞き取れないという耳の現象。それは、もしかするとAPDなのかもしれません。

聴力検査でもわかりにくい

平野浩二著『聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる方法』 には、APD(聴覚情報処理障害)という耳の症状について書かれています。

聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる本

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普段、あまり聞きなれないAPDという言葉ですが、音としては聞こえているのに、言葉として理解できない症状のことを指しています。

著者の平野さんは耳鼻咽喉科専門医で、専門分野は補聴器・難聴・聴覚障害診療です。APDのことを知っている耳鼻科医が少ないことから、専門のサイトを立ち上げてその啓発に務めています。

APDのもう一つの特徴は、普通の聴力検査をしても異常が見つからないことにあります。このAPDという障害は、耳鼻科医のなかでまだまだ知られていない現実があります。

『聞こえているのに聞き取れないAPDがラクになる方法』8ページより引用

たとえば、聞き間違いが多い、聞き返す、電話で相手が何を言っているのかわからない、横や後ろから話しかけられるとわからなくなる……。自分自身の身に思い当たる人も中にはいるのかもしれませんが、見渡すと周囲にもそんな状況の人、案外いるのではないでしょうか。

この症状こそがAPDであり、病院に行っても「気にしすぎ」などと診断されてしまうこともよくあるようです。

そのくらい、APDはまだよくわからないことが多く、治療法は見つかっていないと著者はいいます。しかし、上手に付き合っていく方法はいろいろとあるようです。

APDかどうか、今すぐチェックを

老人性難聴などのいわゆる難聴は、音が脳に伝わるまでの音の伝達路に何らかの異常が起こっているものです。人間の声だけではなく、音そのものが聞こえにくくなっている状態であるといえるでしょう。

しかし、以下の項目に心当たりがあるとしたら、APDを扱っている専門の病院で診断してもらうこともよさそうです。

□ 騒音下で聞き取れなくなる
□ 複数人の会話が聞き取れない
□ 話すスピードが速いと理解できなくなる
□ 電話や無線などが聞き取れない
□ 横や後ろから話されるとわからない

APDは、脳に何らかの損傷が生じていて言葉の聞き取りに障害が出てくるパターンもあれば、損傷はないのに脳機能に何らかの問題があって聞き取りが悪くなるパターンもあるようです。

いずれにせよ、脳に音は伝わっているのに言語の認識処理に時間がかかってしまい、うまく理解できていない状態がAPDであると著者は説明しています。

だからといって、すべての言葉が聞き取れないわけではない。特に、周囲がうるさかったりすると弊害が出てくるようです。

できるだけ静かな場所を選ぼう

聞き取りづらい人は、普段からどんな点に気をつけるとよいのでしょうか? 本書では、APDを持つ人がラクになる方法がいくつか紹介されています。

テレビ、音楽など、音(雑音)のでるものはできるだけ止めて静かにしましょう。話をじっくり聞かなければならないときは、静かな別室に移動したほうがいいでしょう。

『聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる方法』71ページより引用

周囲がうるさいところで、極端に聞き取りが悪くなるというAPD。逆にいえば、静かなところではよく聞こえるということにつながります。自分で選択できる状況のときには、できるだけ静かな環境にいることを心がけて。それだけでも、聞き取りづらさは大幅に解消されるでしょう。

また、話している相手の口の形を見ながら聞くことも、音声情報を補助してくれてよいのだとか。会話をするときには、できるだけ相手の口が見える位置を心がけることも効果がありそうです。

ツールの活用や、周囲の協力を得て

著者は、APDの聞き取りづらさを、日々の習慣だけではなく別の手段で補っていく方法も紹介しています。

入ってきた音をデジタルで調整することにより雑音のみをおさえる機能を「ノイズキャンセリング機能」と言います。雑音は小さくするけれども、人の音声はおさえないために騒音下でこのような機器を用いると人の声がとても聞きやすくなります。

『聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる方法』71ページより引用

高性能イヤホンの中には、数万円程度でノイズキャンセリング機能付きのものがあるといいます。高い補聴器の中には、この機能がついている機種もあるようです。音声レコーダーの使用も侮れません。

その他の方法として、音声を文字化するアプリの使用も推奨されています。聞き取れないところを文字に変換して理解することは、APDではなかったとしても有効であるといえるでしょう。

そして、周囲の協力を得ることが大きなポイントになってくるようです。たとえば、できるだけ伝言はメモに書いてもらう、電話ではなくメールなどの文字媒体を用いてのやりとりを挟んでいく。

APDの人は、自分が聞き取りづらいことを周囲に隠しておきたい傾向があるようですが、むしろそれは逆効果。言わないでいることで、「人を無視する」「言ったことと違うことをする」など、あらぬ誤解を与えてしまうこともあるようです。会社などでいいづらい場合は、家族など身近な人の協力を得ておくことで、スムーズなコミュニケーションが取れそうです。

APDは、その人の特性のひとつであると語る著者。ひとりで悩まないで、正しく認識して受け入れていく。工夫しながら、少しでも快適に過ごす方法を見出していきたいものです。

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聞こえているのに聞き取れないAPD【聴覚情報処理障害】がラクになる方法]image via shutterstock

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