20代の頃は、遅くまで飲んで帰っても、すぐにぐっすり眠れていたものです。ところが、年を重ねるにつれて飲んだあとの睡眠の質は急速に悪化します。そしてそれは、二日酔いにも関係してくるのです。
二日酔いの原因は、実は睡眠の質にあるってご存知でしたか? 2~3杯飲むだけでも睡眠の質を落とす可能性があるようですが、まったくだめになってしまう訳ではありません。
ここでは、飲みすぎた夜に少しでもぐっすり眠るためのポイントを紹介しましょう。
01. 出かける前にできること
お酒を飲んだ夜、深い眠りと浅い眠りを繰り返し、何度も目が覚めた経験がありませんか?
それは、「リバウンド効果」の仕業です。リバウンド効果により深い眠りから浅い眠りへと引き戻され、目が覚めやすくなってしまうのです。
ヘンリーフォード病院睡眠障害研究センターのTimothy Rohehrs氏とThomas Roth氏によると、リバウンド効果は、最初は眠りにつくのを助けていたアルコールが、分解されるにつれて身体が通常の状態に戻ろうとすることによって起こるのだそうです。
つまり、酔っぱらって眠ってしまった身体を、元に戻そうとする力がはたらくのです。そのため、窓越しにさす光、遠くに聞こえる車のクラクション、微妙な温度の変化など、周囲の環境に対する感覚が鋭くなります。
このように、血中のアルコールがなくなると、もっと寝なきゃいけないとわかっていながらも、ちょっとしたことで目が覚めてしまいます。
ワインを飲んで寝たとき、やたら早く目が覚めるのはそのためです。そこで、家を出る前にある程度の対策を施しておきましょう。
寝る準備を整えておく
急な飲み会ではできませんが、あらかじめわかっている場合、家を出る前にできることがたくさんあります。
まずは、基本的なことから始めましょう。とにかく、睡眠衛生が大切です。
遮光カーテンかアイマスクを使って光をシャットアウトしてください。ベッドの中で暑くならないよう、快適な室温に設定します。
そして、騒音対策として耳栓を。帰宅後にシーツと格闘しているうちに目が覚めてしまわぬよう、ベッドメイクもしておくといいでしょう。
ロヨラ大学シカゴ校でアルコール研究プログラムを主導しているElizabeth Kovacs博士は、普段から良質な睡眠をとっておくことで、一回の飲み会による影響を軽減できるといいます。
基本的に、その夜は明るくて騒々しい工場の中で眠ると思って、対策をすればいいのです。
バランスの取れた食事を
アルコールの吸収をうまく調整できるようにするためには、バランスの取れた食事が大切です。
タンパク質、炭水化物、脂肪の含まれる燃焼スピードの遅い食事により、アルコールがゆっくり吸収されるようになります。そうすることで、限界を超えることなく身体が分解に取りかかれるのです。
Hangover Heavenの創設者であるJason Burke医師によると、そのためには赤身の肉が最適です。たん白質とビタミンB群が豊富なので、アルコール副産物の分解を促してくれます。
02. 飲みながらできること
さて、ついに友人たちと楽しい飲み会のスタートです。アルコールには利尿作用があり、かなりトイレが近くなります。つまり、脱水症状にもなりがち。
帰宅後(あるいは翌日)の頭痛、目まい、暑さ、不快感、寝苦しさは、脱水症状が原因です。
水をたくさん飲む
最善の対策は、水を飲むこと。でも、どのタイミングでどれだけ飲めばいいのでしょうか。
可能であれば、お酒一杯と水一杯を交互に飲むようにしてください。これにより身体の水分を保てるだけでなく、お腹が満たされるので深酒せずに済みます。未来の悲劇を避けるためにも、お酒の飲み過ぎは控えましょう。
カフェインも避けたほうが無難です。つまり、レッドブルウォッカやアイリッシュコーヒーは飲まないほうが身のためです。
早めに切り上げる
そして何より、睡眠が大事だとわかっているなら、早めに帰ることです。とはいえ、飲み会の場をしらけさせたくないなら、お酒は夜の早いうちに飲んでおき、少しずつ量を減らしていきましょう。
たとえば、友人と食事をしてからバーに行く予定があるなら、食事中にワインを何杯か飲んで、バーでは1杯か2杯に抑えてください。
アルコールを混ぜるのはよくないと言われていますが、あまり気にしなくても大丈夫。「ビールの前に蒸留酒」「蒸留酒の前のビールは最悪」などという言い伝えはナンセンス。結局、個人的な好みでいいと思います。
家に着いた時にはすべてのアルコールが代謝されているように、早めに切り上げることが理想です。そうすることで十分な睡眠がとれ、翌日の二日酔いもないはずです。
ざっくり言うと、ベッドに入る4時間前にはお酒をやめてください。
4時間、と聞くとあまり飲めないような気がしてしまいますが、帰るのにかかる時間・家に着いてゆっくりする時間・寝る準備をする時間を考えると、それほど飲み会の時間をむしばまずに済むはずです。
03. 家に着いてからできること
自分が何をしているかわかる程度にシラフなら、これから紹介する方法を試してみてください。ぐっすり眠れるはずですよ。
痛み止めは飲んでもOK
アルコールが原因で起きる頭痛や二日酔いの症状が早めに出たときは、帰宅後に適量のイブプロフェンを飲んでください。アセトアミノフェン系の頭痛薬は、アルコールと混ぜると肝臓に損害を与える恐れがあるのでNGです。
睡眠薬も避けてください。ゆっくり休めるような気がしてしまいますが、実際はアルコールがその効果を強め、呼吸が乱れ、酸素の摂取が減ります。
結果的として翌朝の気分が悪化するだけでなく、本当の危険が待っているかもしれません。
軽食をとる
寝る前に軽く食べておくというアイデアもあります。ですから、お腹が空いているのなら、帰宅後に冷蔵庫を開けるのは間違いではありません。
ただし、あくまでも胃腸の安定化のために、ビタミンと栄養素をとって睡眠中にアルコールを効率的に分解できるようにすることが目的であることを忘れないでください。
そのためには、繊維の多い野菜やフルーツ、クラッカーなどがいいでしょう。繊維の多い食べ物は消化を遅らせます。
つまり、アルコールの吸収と分解も遅らせてくれますが、飲酒後に消化不良になりやすい人にとっては、“価値あるトレードオフ”と言えるでしょう。
ハチミツも最適です。キール大学のRichard Stephens医師によると、低血糖は飲酒後の諸症状を悪化させます。
スプーン一杯のハチミツや、ハチミツを塗ったトースト、あるいはバナナなどを食べて、アルコールの分解に必要なエネルギーをとりましょう。ちなみにこれらのおやつは、血糖値が特に下がる翌朝にも最適です。
失われた栄養素を補給する
飲酒中に失われた栄養素を補給するために、ビタミンを摂取するのもいいでしょう。
一般的なマルチビタミンでも十分ですが、「QJM: An International Journal for Medicine」に掲載された論文によると、アルコールにはビタミンB群を低下させる作用があるため、ビタミンB群のサプリを飲むのが良いようです。
また、あまり飲み過ぎてはいけませんが、チアミン、葉酸、硫酸マグネシウムも効果を発揮します。
救急救命室では、急性アルコール中毒の患者に対し、これらを混合した「バナナバッグ」と呼ばれる液体を点滴として投与し、体内の化学的バランスを修復します。
同じように、独自のバナナバッグを家でも用意しておけばいいのです。もちろん、用量は少なめに。
04. ベッドに入る直前にできること
そして、寝る前に水を一杯。さらに、夜中にのどが渇いたときに備え、もう一杯を枕元に置いておきましょう。水とはいえ、飲みすぎるとトイレに起きるはめになってしまうので、控えめにしてください。
スポーツドリンクよりは砂糖の少ない経口補水液もおすすめです。でも、経口補水液は魔法の液体ではないので、飲んだだけで脱水が治ったり翌日の二日酔いがなくなるとは思わないでください。脱水の最大の対策は、予防です。
最後に、通知音で目が覚めないよう、スマホは音が鳴らない設定にしておきましょう。できるだけ、目覚ましをかけずに遅くまで寝てください。
とはいえ、今まさにこの記事を読んでいるということは、明日の朝はゆっくり寝ていられない人なのでしょう。そうなら今回は諦めて、次回からは早めに切り上げることを心がけてください。
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