「軽い運動+アスタキサンチン摂取」で記憶力がさらに高まる? 筑波大の研究グループ
強い抗酸化作用のある天然色素「アスタキサンチン」を摂取すると、低強度運動による記憶力の向上効果がさらに高まる可能性があることを、筑波大学体育系教授の研究グループがマウスを用いた実験で突き止めました。軽い運動と抗酸化成分の摂取を組み合わせた、認知症の新しい予防法が開発されるかもしれないということです。研究グループは、これまでに動物と人において、低強度運動が記憶力を高めることを報告しています。またサケやエビに含まれる赤橙色の天然色素「アスタキサンチン」を動物に与えると、海馬歯状回の神経新生が促進し、記憶力が向上することも明らかにしていました。
そこで今回、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用が海馬機能をより向上させるかどうかについて、マウスを使った実験で検討したのです。
軽い運動+「アスタキサンチン」でマウスの空間記憶能が向上
研究では、まず正常な成体マウスに、4週間にわたり低強度運動に加えてアスタキサンチンを添加したエサを与え、それぞれを単独に行ったマウスと比較して、マウスの脳にある海馬の神経新生と空間学習記憶能への影響を調べました。
その結果、低強度運動とアスタキサンチン摂取を同時に行ったマウスでは、それぞれを単独に行ったマウスに比べ、空間記憶能が向上し、海馬歯状回の細胞も増殖し、新生成熟細胞の数も増えたことが分かりました。
またこの効果は、それぞれを単独で行った場合に得られる効果の合算を超える、相乗的なものであることも明らかになりました。
次に遺伝子解析の手法で、低強度運動とアスタキサンチン摂取の併用がもたらす効果の分子メカニズムを検討しました。
その結果、併用時には海馬内のレプチンタンパク質の発現量が相乗的に増加し、海馬内のレプチン遺伝子が関与している可能性が示されました。ただし、血漿内のレプチン量には、併用による変化はみられませんでした。
脳のレプチンが記憶力向上の鍵かもしれない!?
さらに、低強度運動+アスタキサンチン併用による相乗効果のメカニズムを確かめるため、レプチンのない遺伝性の肥満マウスで低強度運動とアスタキサンチンの併用効果を検討しました。すると、肥満マウスでは、通常のマウスでみられたこれらの併用による記憶力の向上は認められませんでした。
しかし低強度運動を行っている期間中に肥満マウスの脳内にレプチンを投与すると、消えていた併用効果が再び現れたということです。このことから、脂肪細胞ではなく脳からのレプチンが、この相乗効果の発現に必要であることが示されました。
研究グループは「アルツハイマー病患者の認知機能低下に対して、低強度運動とアスタキサンチン摂取を併用して海馬のレプチンを高めることができれば、認知機能の改善につながる可能性が考えられます」と期待しています。
脳を活性化する方法
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HealthDay News 2019年5月27日/Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved. /(参考情報)Abstract/Full Text /Press Release/image via shutterstock