前回は「タンパク質の基礎知識」についてお伝えしましたが、今回は、食事から効率よく吸収するためにぜひ覚えておきたい、良質なタンパク質の見分け方をご紹介します。
タンパク質で、メタボもロコモも解決?
タンパク質は、人生100年以上を「健康」に過ごすためのキーワード――そう話すのは、スポーツ健康科学部教授の藤田聡教授(立命館大学)。日本の健康寿命を脅かすといわれるふたつの問題も、タンパク質が解決策となるかもしれません。
現在日本では、およそ2000万人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)だといわれています。また骨や関節、筋肉などの運動器が障害を受けて、立ち座りや移動がしづらくなるロコモティブシンドローム(運動器症候群)についても、国民の約3人に1人がロコモ予備軍と推定されています。
「メタボは栄養過多、ロコモは栄養不足が一因とされますが、いずれの問題も解決できる有効な手立てがあります。それは、良質なタンパク質を摂取し、運動と組み合わせて筋肉量を維持、増強することです」(藤田教授)
筋肉量が増えれば消費エネルギー量も増えるため、メタボを予防することができます。フレイル(栄養不足を一要因として身体・認知機能が下がり、要介護寸前の状態)や、サルコペニア(加齢により筋肉量が大幅に減少し、自立した生活ができなくなる)といった病態に陥るのも、体を支える筋肉の衰えによる影響が大きいと藤田教授は話します。
タンパク質は2種類に分類できる
筋肉量を維持してメタボやロコモを予防するためには、どのようなことに気をつけてタンパク質を摂取すればよいのでしょうか。
まず知っておきたいのは、タンパク質は種類によって吸収率に差があるということです。タンパク質は、肉や魚介類、卵類、乳製品などに含まれる動物由来のタンパク質(動物性タンパク質)と、大豆など植物由来のタンパク質(植物性タンパク質)に分けられます。
「動物性タンパク質は、体内では作ることができない必須アミノ酸をバランスよく含んでいるものが多いです。それに対して植物性は、食品による違いはあるものの、必須アミノ酸の一部が足りないものもあります。体に入ったあとの利用効率も、動物性ほど高くないものが多いようです」(藤田教授)
良質なタンパク質を見分ける指標
タンパク質を確実に補給するためには、乳製品や魚肉、卵、豆類など、多くのタンパク質が含まれる食品を選ぶことが大切。あわせてタンパク質の含有量だけではなく、「良質なタンパク質」を選ぶことで、さらに効率のよい摂取が可能になります。
そこで考案されたのが、食品中の必須アミノ酸の含有比率を算出して点数化する「アミノ酸スコア」。以下はアミノ酸スコアが100点満点の優秀食材です。
ヨーグルト 牛乳 鶏肉 豚肉 イワシ「ただしこのスコアは、あくまでも必須アミノ酸の含有比率を算出したもので、そのタンパク質がどの程度効率的に身体に吸収されているかどうかを推し量ることはできません。そこで、PDCAASやDIAASといった新たな指標が使われるようになってきました」(藤田教授)
PDCAAS(タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア)
9種類の必須アミノ酸の含有比率に加え、そのタンパク質がどれだけ吸収されやすく、体内で無駄なく使われるかどうかも評価する指標。
DIAAS(消化必須アミノ酸スコア)
タンパク質の吸収率をPDCAASより正確に評価できるよう工夫されたもの。PDCAASが最高評価の1を超えた値を切り捨てるのに対して、DIAASでは1を超える数値もそのまま表記することができる。
もっとも効率的なのは「ミルクプロテイン」
これらタンパク質の「質」を評価するスコアを見てみると、アミノ酸スコアとPDCAASでは、以下の食材が100あるいは1の高評価となっています。
ヨーグルトなどに含まれる乳タンパク質や卵の卵白 植物性の大豆タンパク質さらにDIAASでは、乳タンパク質が1を超える数値となっています。乳タンパクにはミルクプロテイン、ホエイプロテイン、カゼインなどがあり、もっとも高評価なのはミルクプロテイン。DIAASでは大豆プロテインよりも高い評価です。
「これらの数値が高い食品は吸収率が高く、筋肉を効率的に合成する、質のよいタンパク質が含まれているといえるでしょう」(藤田教授)
タンパク質の「質」を知ることで、「量」とのバランスも調整しやすくなりそう。藤田教授に聞くタンパク質の基礎知識、次回はタンパク質と運動の関係についてうかがっていきます。
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藤田聡(ふじた さとし)教授
立命館大学スポーツ健康科学部教授。1993年ノースカロライナ州ファイファー大学スポーツ医学・マネジメント学部卒業。1996年フロリダ州立大学大学院運動科学部運動生理学専攻修士課程修了。2002年南カリフォルニア大学大学院博士号(運動生理学)取得。同大学医学部内分泌科ポストドクター。2004年テキサス大学医 学部加齢研究所研究員。2006年テキサス大学医学部内科講師。2007年東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻特任助教を経て、2009年から現職。
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