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乳がん経験者が語る。がんを告知されたら…そのときにすべきこと

2019/07/19 05:30 投稿

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自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回は「乳がん検診で精密検査と言われたら……」について、お届けしました。今回は、「乳がんを告知されたら……」を女性医療ジャーナリストで乳がん経験者の増田美加がお伝えします。

がん告知後、最も大切なことは……

乳がん検診で要精密検査となって、検査結果が出るまでは不安で、心細い時期です。心穏やかではいられないのは当然です。しかも、心配していたとおり「乳がん」と告知されたら、誰にとってもショックであることに変わりありません。

今、ほとんどの場合、がんは本人に告知します

特に乳がんは、手術法の開発、抗がん剤、ホルモン剤などの薬物療法の進歩によって、治療成績がよく、多くの人が回復する病気になったからです。

告知を受けたときは、頭が真っ白になったり、涙が溢れたり、医師の言葉が耳に入らなかったりすることもあります。しかし、その混乱した心持ちは、3日~5日で平静を取り戻します

告知後、最も大切なことは、治療方針を決めることです。治療方針の決断は、心が平静を取り戻してからにしましょう。くれぐれも混乱している状態で、重要な決定はしないでください

“インフォームド・コンセント”は医師との共同作業のスタート

告知と同時に、インフォームド・コンセントを行います。治療のことは医師にお任せでなく、自分自身が治療法を決める権利があるのです。

しかし、告知の混乱で医師の言葉が頭に入らない場合もあります。そのときは、心が平静になったらもう一度、医師と会って、詳しい説明を受けましょう。

インフォームド・コンセント(Informed consent)とは、“説明と同意”。医療の決定権は患者側にあり、医師は患者に十分な説明をして医療情報を提供し、それに対して、患者側は納得、同意して治療方針を決めるという意味です。

いってみれば、告知の際に行われるインフォームド・コンセントは、患者と医師との共同作業の始まりです。

コミュニケーションをとり、協力し合って、病気と闘い、回復に向かうためのスタートラインなのです。

早期乳がんの進行はゆるやか。じっくり治療法を選びます

告知から治療法が決定するまでが正念場です。つらい時期ですし、動揺もするでしょう。早く決着をつけてすっきりしたいという気持ちになるのもわかります。

しかし、乳がんは、一刻を争うような状態であることは多くありません。「早く手術をしなければ、がんが広がってしまう」と焦る必要はありません。3~4か月で進行したり、命の危険を感じることは、まずありません。

心配なら、医師に「急がなくてはならない状況ですか?」と聞いてみてください。

心が動揺している時期だからこそ、じっくり知識を蓄え、慌てず治療先を選択し、納得のいく治療方針を決めてください。

あとで後悔しないためにも、ここで時間をかけてじっくりと治療方針を決めることが大切です。

治療方法を決めるのは、医師ではありません。医師は、考えられる方法を提案してくれますが、それを最終的に決定するのは患者自身です。

そのためには、今後、どのような手順で治療が決まっていくのか、その検査の流れを知っておくと役に立ちます。

では、治療を決定するまでに大切なこと、必要なことは、どのようなことでしょうか?

最善の治療を決めるための、医師との向かい方のコツ

治療を決定する前に知っておくこと、医師に聞いておくべきことをまとめておくことは、大切です。最善の治療を決めるためには、医師に何を聞いて、どう対応すればいいかがポイントになります。

事前に尋ねることを整理して質問メモにしておくとよいでしょう。質問をリストにして医師に手渡してもいいと思います。

医師から説明を受けて、その場ですぐ質問できないこともあります。その場合は一度帰って頭を整理し、再度時間をとってもらいましょう。遠慮せず何度でも尋ねてください

それでイヤな顔をする医師で相性が合わないと感じたら、思い切って施設や医師を変えてもいいかもしれません。

がん専門施設や乳がん専門医のいる施設を第一候補に

納得できる最善の治療を決定するために、病院や医師をどのように選ぶかです。

現在、乳がんの治療法は、日本乳癌学会が定めたガイドラインに沿って行われるのが一般的(標準治療)です。保険診療を行わず、高額な自由診療の施設では、これが守られていないこともあります。

ガイドラインに沿った診療を行っている施設や医師を選ぶことが、まずは大前提です。

現在の乳がん治療は、手術、放射線療法、薬物療法を合わせた総合的治療です。

できれば、乳腺外科医(手術を担当)、放射線科医(放射線治療を担当)、腫瘍内科医(薬物療法を担当)などの各分野の専門科が揃ったがん専門施設、あるいは、乳がんの専門医のいる施設を第一候補にするといいでしょう。

また、各都道府県に必ずある、がん拠点病院から選択することもよい視点です。がん拠点病院はこちらのリストから探してください。「がん情報サービス 病院を探す」 

また、自分が希望する治療法について実績があるかどうかを調べることも大切です。乳がん手術件数、乳房温存手術数、治療成績(5年生存率、10年生存率)を公開する病院が増えています。

たとえば、乳房再建を希望するなら、乳房再建手術の症例数が多く、実施率の高い医師がいる施設を探しましょう。ただし、乳房再建は、乳がんの治療が終わってから、別の施設で乳房再建だけを行うこともできます。

医師&医療施設選びの8つのポイント

医師や施設選びのコツと見分け方の参考にしてください。

ポイント1.乳腺の専門医を選ぶ

乳がん治療は、乳腺外科(乳腺・内分泌外科)、あるいは乳腺外来を設けている医療施設が専門です。そこに乳腺の専門医がいて、乳がん、良性の乳房の病気など、乳腺の病気全般を扱います。近くに乳腺科、乳腺外科がない場合は、外科で相談しましょう。

ポイント2.自分の希望する治療法を行ってくれる施設を選ぶ

治療方針は、医療施設や医師によって異なることがあります。例えば、乳房温存手術を望んでも、行えない施設もあります。ただし、がんの状態によっては、希望通りの治療ができないこともあります。その場合は、セカンドオピニオンを利用しましょう。

ポイント3.どんな質問にも答えてくれる医師を選ぶ

自分の病気について知る権利があります。そのために質問にわかりやすく答えてくれる医師を選びましょう。乳がんの状態を見ながら、患者側の希望をできるだけ可能にするように考えてくれる医師かどうかも大切なポイントです。

ポイント4.セカンドオピニオンをいやがらない医師を選ぶ

たとえば、自分の希望する治療と医師が説明した治療が異なる場合、第三者の専門家の意見、セカンドオピニオンを参考にしたいものです。そのための検査データの提供などに快く応じない医師は、避けたほうがいいでしょう。

ポイント5.相性のいい医師を選ぶ

乳がんの治療は、長期間にわたることが多いため、人格的に信用できない医師と思ったら、別の医師を探す勇気も必要です。医師への信頼がもてなければ、治療も信頼できなくなってしまいます。

ポイント6.放射線の専門医がいる施設を選ぶ

治療の選択肢として、その施設で放射線治療も行えることは必須です。特に、乳房温存手術後に、放射線治療は欠かせません。放射線科があっても、診断だけで、放射線治療を行っていないところもありますので、よく確認しましょう。

ポイント7.病理医がいる施設を選ぶ

手術中の病理検査が行える施設であることが大切です。そのためには、その施設に病理医がいることが必要です。病理をすべて外に出している施設もありますので、確認しましょう。

ポイント8.通院しやすい施設を選ぶ

乳がんの治療は手術だけでなく、退院後、通院して行う治療もあります。手術後、外来に頻繁に通うことを想定して、通いやすい地域にあることが大切だと思います。特にいまは働きながら治療を行うことも少なくありません。自宅と職場の位置を考えて、長期間の通院が続けられるところを選びましょう。

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増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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