不妊の原因のひとつと言われる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)。前回は、PCOSの基礎知識と症状をまとめました。
PCOSと診断された女性にはホルモンの乱れがあり、そのせいで新陳代謝が低下します。その結果ダイエットがうまくいかなくなります。
しかし、インスリン抵抗性を改善し、PCOSの症状をコントロールしながら安全に、そして効果的にやせる方法はたくさんあります。
「PCOSと診断された女性に一番効果的なダイエットは、健康を探求し、ライフスタイルを改善することです」とThe Happie Houseの創設者であるリサ・サミュエルさん(登録栄養士)。
「比較的簡単で、楽しめ、この先もずっと続けていけると思えるような小さな改善を少しずつ取り入れ、一生続けられる習慣として身に付けましょう」
今回は、PCOSと診断された人に試してもらいたいダイエット方法を紹介します。
1. 精製された小麦粉や白砂糖を減らす
image via shutterstockパンやパスタなど精製された小麦粉でつくられた炭水化物を食べると、血糖が急上昇した後に急降下し、より空腹感が増してしまいます。
「PCOSと診断された女性は、炭水化物の誘惑に負けてしまうと災いを招きます。血糖が急降下し、炭水化物をより欲してしまう悪循環に陥るのです」とクマー医師は説明します。「一番よいのは、低GI値ダイエットでインスリンの値を安定させることです」
『Food Science & Nutrition』誌に掲載された2019年の研究では、食物繊維とマグネシウムの低摂取が、PCOSと高アンドロゲン血症に関係していることが指摘されています。
つまりは、野菜、果物、全粒粉、豆類などの複合炭水化物を選べばよいのです。これらの「あなたの健康によりよい」炭水化物は、食物繊維を多く含み消化に時間がかかることから、血糖がより安定し、満腹感が長持ちします。
だから、白米の代わりに玄米、キヌア、ファッロなどの低GI食品を選ぶとよいかもしれません。それに加えて、加工食品、既成品のスムージーや、ダイエットシェイクに多く含まれている砂糖にも注意します。甘味料がどうしても必要ならば、はちみつやメープルシロップを少し使うとよいかもしれません。
2. タンパク質と健康な脂肪でお腹を満たして
image via shutterstock満腹感を得るにはタンパク質と脂肪が必要なのは、すでにご存知のはず。だから、このふたつを毎日の食事やおやつで楽しんでみるとよいかもしれません。
「一日をとおして規則正しく食事し、タンパク質や炭水化物が適量とれる、例えばピーナッツバターのせリンゴスライス、チーズ、ドライフルーツを混ぜたナッツミックスなどのおやつを手元においておくこと」とサミュエルさん。
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さらに、アボカド、脂肪性の魚、オリーブオイルなどに含まれる健康的な脂肪を多く摂ることで空腹感が抑えられます。またサミュエルさんは「塩分を控え、その代わりにレモン汁、新鮮なハーブ、香辛料を味付けに使うなど、料理に新しい工夫ができますよ」と付け加えます。
3. 空腹感と無性に何かを食べたくなる欲求の違いを理解する
image via shutterstockその感覚は似ていても、無性に何かが食べたくなる欲求と空腹感は全く異なるものです。
サミュエルさんは、空腹感はより全体的な感情である一方で、無性に何かを食べたくなるのは、ある特定の食べ物、食感、味覚を欲する感情であると説明します。「無性に何かを食べたくなる欲求は、倦怠感、孤独感、不安感などのより精神的なものから引き起こされます」
その一方で、「空腹感は、胃が空な状態に対する身体的反応」であるとサミュエルさん。お腹が鳴っているとき、頭痛がしたり身体的な不快感があったり、ぼーっとなったり、吐き気がしたり、物事に集中できなくなったりするといったようなものは、空腹時に出る症状です。
4. 運動習慣を優先する
image via shutterstockワークアウトを日課にすると、血糖を安定させ、心疾患や糖尿病のリスクを減らすことができます(PCOSと診断された女性はこれらの高いリスクにあります)
研究では、PCOSと診断された女性の半数以上が、40歳までに糖尿病や前糖尿病になることが指摘されています。またPCOSと心疾患の関連性も数々の研究で報告されています。
ワークアウトには、ウォーキング、ジョギング、あるいはキックボクシングなどの有酸素運動と、ウエイトトレーニングや自重トレーニングなどの無酸素運動を交互に取り入れるとよいかもしれません。
毎日少なくとも30分運動し、血行をよくし心拍を上げるために習慣的に歩く。けれど毎日するのが難しかったら?
「新しいレッスンに新しい友達と参加したり、陸上競技場を散歩したりジョギングしてみたり、新しいスポーツにトライしてみては」とサミュエルさん。ウォーキングやダンス、ヨガなど生活の一部にしやすいものを取り入れてみるのもよいそう。
5. かかりつけ医にメトホルミンや避妊薬のことを聞いてみて
image via shutterstock生活習慣を健康的にする他に、メトホルミン、ホルモン避妊薬、スピノラクトンなどさまざまな薬がPCOSの治療には用いられる、とクマー医師は説明します。
メトホルミンは、2型糖尿病の治療に用いられることで知られています。メトホルミンは、ブドウ糖の摂取を減らし、体が大量のインスリンを分泌しなくてもよくなるようにします。
その一方で、ホルモン避妊薬は、性ホルモンを安定させ、多毛症やにきびの原因になるアンドロゲンの濃度を下げます。スピノラクトンは、抗テストステロン作用のある利尿剤で、PCOSの治療によく用いられるものです。
「PCOSの治療に薬を処方する際に気を付けているのが、その患者さんの治療には何が一番必要とされているのか、ということです。それが不妊治療である場合、避妊薬ではなく、排卵を促すためにメトホルミンかクロミッドを処方します」と、クマー医師は説明します。
また、クマー医師によると、メトホルミンは、体重を減少させる作用があるため、患者がやせている場合には適していないとのこと。
「にきびや多毛症がより深刻な問題であれば、避妊薬とスピノラクトンを処方します。しかし、結局のところ患者の健康状態と、患者が何を希望するのか次第である」とクマー医師は言います。
6. ストレスを減らすためにセルフケアをしてみよう
image via shutterstockダイエット、運動、薬のほかに、PCOSによる体重の増加を予防する一番の方法は、ストレス管理です。
瞑想、運動、ヨガなどのセルフケアによって、やせたいと思う気持ちを妨害するメンタルブロックを取り除き、その挑戦に挑める気力を育みます。ストレスが減ると、より健康によい生活を判断し実践できるようになります。
結論:ダイエットでPCOSの症状はよくなるが、それは決して消えてなくならない
クマー医師いわく、ダイエットによってPCOSの症状を軽減し、その他の健康リスクを減らすことは可能。けれどそれは決してPCOSが消えてなくなるわけではないとのこと。
「ダイエットでPCOSをうまくコントロールできれば、症状を改善することは可能です。しかし、ひどいストレスがあれば、症状は再発しやすい傾向にあり、妊娠糖尿病、2型糖尿病、心疾患のリスクも高まります」と、クマー医師は説明します。
本記事は、2019年5月15日に、内科、内分泌学、糖尿病、代謝の専門医で、予防医学審査委員会のメンバーでもあるレカ・クマー医師によって、医学的知見から監修されています。
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