市販されている痛み止めも、それぞれ成分が異なるため、症状にあった薬を選ぶことが大切です。頭痛薬の選び方のポイントについて、ハートフェルト薬局の薬剤師・大野朋子さんに話を伺いました。
頭痛の応急処置に。上手な市販薬の使い方
頭痛は多くの女性が悩んでいる最もポピュラーな症状です。「いつものことだから」と、とりあえず痛みをすぐに取り去ることのできる市販薬を活用している方も多いと思います。
応急処置として、市販薬はとても適しています。しかし現在、市販されている鎮痛薬には、痛みに効く成分にいくつかの種類があり、またひとつの成分だけでなく、いくつかの成分が組み合わせてできたものがあります。それ以外にも胃腸の症状を和らげるものが入っていたり、利尿作用を促すものが入っていたりとさまざまです。
飲み方としては、単一成分のものから試してみること。同じブランド名でも、成分が異なることがあります。
まずは、その成分が自分の痛みに効くかどうかを確認してみるのがいいと思います。効くものが見つかればそれでOK。少し効きが悪いと思ったら、いくつかの成分が入っている複合成分のものを試してみましょう。
市販薬の飲み過ぎで頭痛が誘発されることも
しかし、市販薬の使いすぎには要注意。市販薬の服用が月に10回を超え、それが3か月続くと、「薬物乱用頭痛」といって痛みを抑えるのが難しくなる頭痛を誘発してしまうこともあります。頭痛持ちの人は、いつ痛みが起こるかわからないという不安がつきものです。
そのため、痛くなくても予防的に飲んでしまいがちです。すると飲む薬の量が増え、効き目が続く時間も短くなり、結果として薬によって頭痛が誘発されてしまうこともあるのです。鎮痛薬は、OTC医薬品といって、OTC(over the counter)、つまり、薬剤師や登録販売者と話をして購入することが義務付けられているものが多くあります。
例えば、ロキソニンなどは、医療用としても使われているため、より安全に使うために薬剤師からの指導が必要となります。どんな痛みがあるかなど薬剤師に相談しながら薬を選ぶのもひとつの手です。そして、市販薬ではダメという場合は、医療機関を受診しましょう。
2000年4月から「頭痛の特効薬」と呼ばれるトリプタン製剤が登場しました。これは医療機関を受診しないと処方されないものではありますが、これまでの鎮痛薬とは違い、ズキズキと脈打つような痛みや、吐き気なども抑えてくれるもの。自分の痛みを知って、適切にお薬を使いましょう。
自分に合った薬を見つけよう
では市販薬にはどんな種類があるのか、一覧で紹介していきます。
市販薬は、副作用や、飲み合わせなどのリスクに応じて、第一類医薬品と第二類医薬品、第三類医薬品という3つのグループに分類されています。
第一類医薬品
副作用や薬の飲み合わせなどのリスクから、特に注意を必要とする薬。薬剤師による情報提供が義務付けられている。
第二類医薬品
副作用や薬の飲み合わせなどのリスクから、注意を必要とする薬。薬剤師または登録販売者から購入することができる。販売者からの情報提供は努力義務。
第三類医薬品
薬剤師または登録販売者から購入することができる。リスクの程度は比較的低く、購入者から直接希望がない限り、情報提供には法的制限がない。
頭痛で使用する解熱鎮痛剤は、主に第一類医薬品と第二類医薬品に分類されています。他のお薬や食べ物との相性がよくなかったり(相互作用)、肝機能・腎臓機能の影響をうけることがあるため、注意が必要です。
医師の診察をせずに、購入することができるため、副作用の疑いがある場合や不安なことは、薬剤師または登録販売者にぜひご相談下さい。
<非ピリン系鎮痛剤>
・NSAIDs(ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェンなど)
NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)という、痛みのもとのプロスタグランジンという物質が作られるのを防ぎ、頭痛などの痛みや、熱、炎症を抑える薬。痛みの伝わりを抑えることで痛みを鎮めたり、体温調節中枢に直接作用して高めにセットされた体温の設定を下げることで熱を下げる作用があります。
医療用としても使われているロキソニン®や、ブルフェン®などがこのカテゴリに入ります。プロスタグランジンは胃の粘膜を保護する働きがあるため、プロスタグランジンを抑えると胃が荒れてしまうことも。ひどい場合は、消化管出血(吐血や血便など)が見られることもあります。また、喘息などの副作用もあるため、注意が必要です。胃粘膜保護成分を配合しているものもあります。薬剤師・登録販売者に確認をして下さい(服用する際は、食後か、胃薬を一緒に)。
<商品名>
ロキソニンS・プラス・Sプレミアム(第一類医薬品)、バファリン(第二類医薬品)、ナロンエース(第二類医薬品)、リングルアイビーα2000(第二類医薬品)、イブクイック(第二類医薬品)など
・アセトアミノフェン
非ピリン系の中でもアセトアミノフェンは、プロスタグランジンの産生を抑える作用が弱いため、NSAIDsには分類されません。抗炎症作用は非常に弱いのですが、その分、胃腸への負担が少ないのが特徴です。鎮痛・解熱作用はあるため、インフルエンザによる発熱時の解熱剤としても使われます。
<商品名>
タイレノール(第二類医薬品)、ノーシンアイ(第二類医薬品)、ナロン顆粒(第二類医薬品)、エキセドリン(第二類医薬品)など
<ピリン系鎮痛剤>
市販薬に使われている成分はイソプロピルアンチピリンというもの。効果が高いものが多いのですが、アレルギー体質の人は服用に注意が必要です。ほとんどの商品で、アセトアミノフェンやカフェインの配合剤になっています。
<商品名>
セデス・ハイ(第二類医薬品)、サリドンWi(第二類医薬品)、セミドン(第二類医薬品)など
<漢方薬>
かぜ薬のイメージがある漢方薬にも頭痛に効くものがあります。冷え性や肩こり、むくみなどの症状もある人は漢方薬を検討するものいいでしょう。漢方薬は一般的に、食前(食事30分程度前)や食間(食後2時間)など、空腹時に内服した方が、効果が得やすいと言われています。
<商品名>
葛根湯(第二類医薬品)、新エスタック顆粒(第二類医薬品)、呉茱萸湯(第二類医薬品)、ストレージタイプZM(第二類医薬品)など
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大野朋子(おおの・ともこ)さん
薬剤師。東京理科大学薬学部薬学科卒業。同大学院生化学教室を経て東京女子医科大学病院薬剤部入局。2015年からラクスリ株式会社で在宅医療に関わる。日本緩和医療薬学会 緩和薬物療法認定薬剤師、一般社団法人医薬品適正使用・乱用防止推進会議評議員。
取材・文/大場真代、image via shutterstock