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毎月の生理のたびに、さまざまな不調にさいなまれる女性たち。おなかや腰に痛みやだるさを感じたり、眠くなったりイライラしたり。さらにズキズキとつらい頭痛が追い打ちをかけると、何をする気にもなれません。

「月経中に感じる頭痛を“月経痛の一環”と思う人が少なくありませんが、それは間違っています。その頭痛は、月経によって誘発された片頭痛である可能性が高いです」。そう警鐘を鳴らすのは、日本頭痛学会認定指導医・専門医であり、頭痛関連の多くの著書・監修書をもつ富士通クリニックの五十嵐久佳先生です。

「生理だから仕方ない」と我慢していた頭痛に向き合う方法はあるのでしょうか。女性ホルモンと頭痛の関係とともに教えていただきました。

片頭痛に悩む女性は、男性の3.6倍も多い。それはなぜ?

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生理と頭痛の関係を紐解く前に、まずは「片頭痛」の特徴をおさらいしておきましょう。片頭痛は、緊張型頭痛、群発頭痛とともに“三大慢性頭痛”といわれる病気のひとつ。日本には頭痛持ちが推定1,000万人もいると考えられています。

片頭痛は、脈を打つようなズキンズキンという痛みが半日から長いと3日ほど続き、吐き気などを伴うこともあるため、慢性頭痛のなかでも日常生活に支障をきたすことの多い疾患です。

「特徴的なのが、20~40代の女性に多いということです。片頭痛に悩む女性は男性患者よりも3.6倍も多く、年代別に調べたところ、30代がダントツ、続いて40代、20代、15~19歳の順に多いという結果になりました」(五十嵐先生)

女性に片頭痛患者が多い理由として考えられるのは、ひとつは家族歴といった遺伝によるもの。そしてもうひとつは女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」の変動によると考えられています。

女性はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれるふたつのホルモンが周期的に分泌していることはご存じの通りです。

「エストロゲンの急減が、片頭痛を誘発する」という説が有力

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片頭痛は、季節や天候、生活リズムなどの「変化」に誘発されやすいことがわかっています。そう考えれば、女性ホルモン量の「変化」が片頭痛を誘発することも想像に難くありません。

「女性の患者さんがどんなタイミングで片頭痛が起きているかを調べたところ、月経の2~3日前から月経中と排卵日周辺に多くみられることがわかりました。

月経前や排卵期はエストロゲンの血中濃度が急減しますが、この落差が片頭痛発症の引き金になっていると考えられます」(五十嵐先生)

エストロゲン量が頭痛にどう影響を及ぼしているか、メカニズムは100%わかっていませんが、ひとつにはエストロゲンが低下することにより脳内のセロトニンという物質が低下し、片頭痛が起こりやすくなる。

また、エストロゲンの低下に伴い痛みを和らげるオピオイドという物質の働きが低下することなどが考えられています。

「妊娠中にはエストロゲンの値は上昇しますが、妊娠6か月ぐらいになると『私の片頭痛はどこへ行っちゃったの?』というぐらい、患者さんの多くは片頭痛のつらさから解放されます

しかし、出産するとまた頭痛が起きる。このことからも、女性ホルモン量の変動が片頭痛の強力な誘発因子になっている可能性は大きいです」(五十嵐先生)

ピルも服用中はエストロゲン量が保たれますが、休薬期にエストロゲン量が下がると出やすい副作用のひとつに頭痛が挙げられます。

鎮痛薬は飲んでいい? 月経関連片頭痛の治療法は

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冒頭で五十嵐先生が警鐘を鳴らした通り、月経中の頭痛は“月経痛の一環”ではなく、月経によって誘発された片頭痛。「月経関連片頭痛」と呼ばれています。

これがとてもやっかいで、他の時期に起こる片頭痛に比べて重症度が高く、市販の鎮痛薬では効かないことも多いとか。

しかし、「あきらめないでください」と五十嵐先生は話します。

「市販の鎮痛薬が効くなら、それは対処法のひとつとして考えて構いません。ただし、月のうち10日以上も鎮痛薬を飲むようであれば、かえって脳が痛みを感じやすくなる『薬物乱用頭痛』を引き起こしかねませんし、薬の飲みすぎは胃潰瘍になったり、腎臓に負担をかけ、高血圧の原因になったりする恐れもあります」(五十嵐先生)

頭痛外来では、強い片頭痛があれば片頭痛治療薬のトリプタンを処方します。トリプタンは、片頭痛の原因となる血管の拡張や炎症を改善する薬で、胃に負担をかけないので空腹時でも飲むことができます

また、片頭痛がいつもきまって月経前から月経中に起こる場合は、短期予防療法といってそのタイミングだけを狙って急性期治療薬のトリプタンや消炎鎮痛薬を5日間定期的に使用する方法も有効です。

もしその期間以外にも頭痛が多いようであれば、一般的な片頭痛予防薬を毎日服用する方法をとります。

「エストロゲン量を上げれば頭痛は軽減するかもしれませんが、いつまでも上げたままにするわけにはいきませんし、下がれば頭痛は起こるので痛みを後回しにすることもあります。

また、片頭痛患者さんがピルを使用する場合は覚えておいていただきたいことがあります。目の前がキラキラする閃輝暗点(せんきあんてん)といった“前兆”のある片頭痛の患者さんがピルを飲むと、脳梗塞を起こす確率が上がるため使用できません」(五十嵐先生)

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月経関連片頭痛は、多くの女性が片頭痛であることに気づいていないことが問題のひとつ。まずは、頭痛を感じたら、痛んだ場所や痛みが続いた時間、痛みの原因と考えられること(月経・排卵日とったホルモンのリズム、天気の変化、寝不足・寝すぎといった生活リズム、外出や飲酒といった行動など)、鎮痛薬を飲んでどうだったかなどを手帳に控えておきましょう

日本頭痛学会のホームページからは頭痛ダイアリーをダウンロードすることもできます。このダイアリーは自分の頭痛の傾向を知る助けになりますし、医師にとっても重要な診断材料になります。

「30代40代の輝けるときを、頭痛を我慢する時間にあてていてはもったいないです。片頭痛が多い世代を悩ませる『月経関連片頭痛』は毎月やってきますから、正しく向き合って対処しましょう。

頭痛がよくなった患者さんは、口々に『人生が変わりました。もっと早く病院に来ていればよかった』とおっしゃいますよ」(五十嵐先生)

五十嵐久佳(いがらし ひさか)先生
先生日本頭痛学会認定指導医・専門医。北里大学医学部を卒業後、同大学神経内科に入局。英国The City of London Migraine Clinicでの研修を経て、北里大学医学部内科(神経内科)講師に。宮内庁病院内科医長、神奈川歯科大学教授などを経て、現在は富士通クリニック(神奈川県川崎市)と東京クリニック(千代田区大手町)で頭痛外来を担当。北里大学医学部客員教授。『頭痛女子バイブル』(世界文化社)ほか多くの著書・監修書をもつ。

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