日本人の4人にひとりが悩んでいるという「慢性頭痛」。今回は緊張型頭痛、片頭痛に続く3つ目の慢性頭痛「群発頭痛」について、40年の長きにわたって慢性頭痛を研究してきた坂井文彦先生に教えていただきました。
生きているのがつらくなるほど、片方の目の奥に激痛が
image via shutterstock群発という言葉の意味を辞書に求めると「しきりに起こること」「集中して起こること」。それが頭痛だなんて、なんだかとてもつらそうです……。
Q. 「群発頭痛」に悩まされるのはどんな人?
若い男性に多い頭痛と分類されてきましたが、最近は女性の患者さんも増えています。日本では緊張型頭痛が2,300万人、片頭痛が15歳未満も含めると1,000万人、群発頭痛は約100万人と他の頭痛に比べると少ないですが、群発頭痛の患者さんの多くが「群発頭痛の発作が起きると、生きているのもつらい」と苦痛を訴えるほど、耐え難い激しい痛みを伴います。
Q.「群発頭痛」が起こる原因は?
image via shutterstock国際頭痛学会では、群発頭痛を「群発頭痛およびその他の三叉神経・自律神経性頭痛」と分類しています。脳の視床下部が関係して起こると考えられており、何らかの理由で視床下部が刺激を受けると、頭部の三叉神経が痛みを感じます。
さらに三叉神経がつながっている目の周りの血管や副交感神経に影響して、片側の目の奥に激しい痛みを感じたり、同側の涙や鼻水が止まらなかったりするなどの症状が出ます。
Q.「群発頭痛」の症状は?
image via shutterstock目の奥にえぐられるような強い痛みを感じます。頭のあちこちが痛む片頭痛と違って、群発頭痛は必ず左右のどちらかの目の奥に症状があらわれるのが特徴です。さらに痛む片方の目や鼻から涙や鼻水が出たり、片方の目が充血したりと症状もわかりやすいため、ネットなどで調べて「群発頭痛だ」と確信して病院へやってくる患者さんが多いです。
年に1~2回と頻度は低いものの、1か月続く人もいます。毎日ほぼ同じ時間に発作が起きるのも特徴です。生きているのもつらいと感じるほどの痛みですが、15分から長くても2~3時間でケロッと嘘のようにおさまってしまうので、それがかえって受診を遠ざけてしまうこともあります。
Q.「群発頭痛」が起きたときの対処法は?
鎮痛薬では歯が立たず、気休めにもなりません。しかし、ある程度の時間を過ぎるとおさまってしまうので「鎮痛薬が効いた」と勘違いする人も少なくありません。とにかくじっとしていられないほどの痛みなので、入浴や運動、横になるといった他の慢性頭痛のような対処法がないのが実際のところです。
Q.「群発頭痛」の治療は?
image via shutterstock群発頭痛かなと思ったら、セルフケアで何とかしようと思わず、かならず医師の診察を受けてください。痛みを和らげるトリプタン製剤は経口薬もありますが、自分で行う皮下注射も保険が利きます。
また、1分あたり7リットルの100%濃度の酸素を、15分吸入すると約8割の痛みが緩和されます。世界で初めて日本で保険が適用された新しい治療法です。
Q.「群発頭痛」を防ぐためにすべきことは?
image via shutterstock残念ながら群発頭痛にはこれといった予防法はありませんが、片頭痛や群発期間中にアルコールを少しでも飲むと頭痛が必ず誘発されますので注意しましょう。
片頭痛の回でも紹介しましたが、頭痛の程度や続いた時間、天候や生活リズム、食生活、鎮痛薬を飲んでどうだったかといったことを頭痛ダイアリーにメモする習慣を身につけてください。
頭痛は目には見えませんし、血圧のように数値化することもできません。自分の頭痛の傾向を知り、医師と二人三脚で改善を目指しましょう。「もっと早く頭痛外来の扉を叩いていればよかった」と思えるほど、頭痛のない日々の幸せを感じられるはずです。
坂井文彦先生
埼玉国際頭痛センター(埼玉精神神経センター内)センター長。1969年、慶應義塾大学医学部卒業後、同内科学教室に入局し、神経内科および脳循環・代謝の研究を始める。北里大学医学部神経内科学教授、埼玉医科大学客員教授などを経て、現職。日本頭痛学会、国際頭痛学会の理事長など重職を歴任した頭痛治療の世界的名医。『「片頭痛」からの卒業』(講談社現代新書)他、著書・監修書多数。