連休が明けるとやってくる「会社に行きたくない」「日常に戻るのが憂鬱……」という、どんよりした気持ち。なぜそのような気持ちが起きるのでしょうか。また、どんな人が五月病になりやすいのでしょう?

精神科医で産業医でもある奥田弘美先生に、「五月病」について解説していただきました。ゴールデンウィークの過ごし方で、連休明けのメンタルに大きく差が出るそうですよ。

そもそも「五月病」って何?

気持ちが沈んだりやる気が起きなかったり、5月の連休明けぐらいから現れやすいこれらの症状のことを「五月病」と呼ばれますが、正式な医学名称ではありません。

「医学用語でいうと、軽い“抑うつ状態”のことを指します。抑うつ状態は、簡単に言うとうつ病の手前の状態です。軽い抑うつ状態には疲れやストレスなどで、だれでもなり得ます。

抑うつ状態の症状としては、疲れがとれない、倦怠感、胃腸の不調、めまいや耳鳴り、動悸などの身体的な症状や、眠れない、楽しさや喜びが感じられない、憂うつである、活動する意欲が湧かないなどメンタルの症状があります。自律神経失調症や適応障害なども抑うつ状態と重なるところがあり、五月病と表現される中にもいろいろな症状がみられます」(奥田先生)

体の不調や心の不調など多彩な症状がみられる五月病。「自分はやる気がないのでは?」と思う人も多いようですが、やる気の問題ではなく、体も心もメンテナンスを必要としているのです。

“変化”は知らぬ間に大きなストレスに

では、なぜゴールデンウィーク明けに、五月病になりやすいのでしょうか。

春から連休にかけて起こるさまざまな変化によって心身に疲れがたまるのが原因と考えられます。3月や4月は社会的な変化が多い時期です。たとえば部署を異動したり、上司が変わったり後輩ができたり。あるいは子どもの入学・卒業、人間関係が変わることもあります。夫の転勤ということもあるでしょう。

こういった“変化”によって、私たちは自覚していなくても実は大きなストレスを受けています。そして、『新しい環境に適応しよう』、と多少無理をしても頑張ってしまいます。そもそも春先は気温の変化も激しく自律神経にも負担がかかりやすいため、心身ともに疲れがたまりやすいのです。

知らず知らずのうちに心身に疲労が蓄積した状態で連休に入り、そこで緊張の糸がふっと緩んでしまって症状が顕在化しやすくなるわけです。 また連休中に旅行やレジャーなどでめいっぱい遊んでしまうことで、さらに疲れを上乗せしてしまって症状が悪化する人もいます。

さらに連休中は日常のリズムが狂いやすいのも問題です。3月4月でやっと新しい環境に慣れてきたのに、ゴールデンウィークで不規則な生活になってしまうと、連休明けから生活リズムを仕事モードに戻すのも大きなストレスになります。こうしたさまざまな要因が重なり、連休明けぐらいから心身の不調を訴える人が増えやすくなるのです」(奥田先生)

1年を通して最も変化が大きいこの時期は、体も心も悲鳴をあげやすい時期なのだそう。

ストレス+体の疲れ=メンタルの不調

産業医をしている奥田先生は、多くのビジネスパーソンの不調に向き合っています。

「やはり連休明けぐらいからは、不調を訴える人が増えやすくなる印象はありますね。新しく来た上司とうまくいかなかったり、仲のよい同僚が異動になってしまったりといったことがストレスの原因になる人も多いです。

それ以前にビジネスパーソンは、とにかく疲れている人が多い。夜遅くまで働いていたり、IT機器と昼夜なく向き合っていたり。心の疲れをとるには、まずは体の疲れをとることが大前提。体の疲れを解消せずに、メンタルケアはできないのです」(奥田先生)

最近疲れているな、と感じている人は、心のケアのためにも休養をとる必要があるようです。 次回は、五月病にならないゴールデンウィークの正しい過ごし方を教えていただきます。

奥田弘美(おくだ ひろみ)先生
精神科医、日本マインドフルネス普及協会代表理事。平成4年山口大学医学部卒。精神科医・産業医として働く人の心身のストレスケアに日々関わっている。またわかりやすいストレスケア法やマインドフルネス瞑想を執筆や講演、セミナーにても紹介している。著書には「心に折り合いをつけてうまいことやる習慣」(すばる舎)、「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「心の毒がスーッと消える本」(講談社)などがある。

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