認知症は、命にかかわる病気
確かに認知症は大変な病気ですが、アメリカ政府の最新の報告書によると、“命にかかわる病気”にもなりつつあります。
アメリカ国立衛生統計センター(NCHS)が発表したこの報告書によると、認知症で亡くなったアメリカ人の割合は、この20年足らずの間に2倍以上に増加。
具体的な数字をあげると、2000年には10万人あたり30.5人でしたが、2017年には66.7人になりました。2017年には、もっとも多いタイプの認知症「アルツハイマー病」が、認知症による死亡の46%を占めたそう。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、“認知症”という呼び名は、日常生活に支障が起きるほど思考力、記憶力、行動に影響を与えるいくつかの病気をまとめた言い方です。
アメリカ国立老化研究所(NIA)によると、このグループの病気としては、アルツハイマー病、ルビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症があります。
なぜ、認知症による死亡が増えているの?
image via shutterstock「いくつかの要因が重なっているようです」と、プロビデンス・セント・ジョンズ・ヘルス・センター(カリフォルニア州サンタモニカ)の神経科医/老年精神科医で博士のデビッド・A・メリルさんは指摘しています。
「“シルバー津波”とでも言いましょうか、寿命が延びて、高齢者が急増しています。そして認知症のリスクの要因の中で一番どうしようもないものが、年齢です」(メリルさん)
「さらに、認知症の診断方法は変わっていませんが、医学界でも一般的にも、認知症という病気がよく知られるようになっています」とメリルさんは説明。「ですから、認知症ではないかと疑う割合が、以前より上がっているということかもしれません」
そのために患者数が増えているのです。
認知症が死につながる要因って?
image via shutterstock「認知症が進行すると、脳の組織が縮んでしまい、自分の面倒が見られなくなるばかりか、意思疎通も難しくなります」(アメリカ国立老化研究所)
メリルさんによると、「長い間にこうした状態になるために、命にかかわる多くの合併症につながる」と言います。
感染症にかかってしまう
認知症の人は多くが、飲み込むのが難しいなど、食べることもままならなくなります。そして、「正しく飲み込めないと、食べ物や飲み物が肺に入ってしまい、肺炎を起こす恐れがあります」とメリルさんは説明。
この「細菌性肺炎」を治療しないでいると、身体の他の部分にも広がって、命を脅かす重大な免疫反応、「敗血症」につながりかねません。
その上、飲み込めないと、脱水症や栄養失調になる可能性もあります。
自分が病気であることに気づけない
インフルエンザなどほかの重大な病気も、重いケースであれば、認知症の人では命にかかわります。
「認知症が進行した人は、具合が悪いと言葉で伝えられませんから、病気が発見されるのが遅くなってしまいます。病気がやっと見つかっても、認知症でなければ、そこまで進行しなかっただろうというレベルまで進んでしまっているケースも多くなるのです」と、メリルさんは指摘します。
転倒が、命にかかわる
転倒も、認知症の人では命にかかわります。
「認知症の人は、自分の身体の限界がわからなくなりがちで、補助なしには歩けないことを忘れるなど、以前はなかったような危険にさらされる可能性が出てきます。そして転倒は、重大なケガや死亡につながる恐れがあるのです」とメリルさんは話します。
65歳以上の人の“意図的ではないケガ”による死亡の原因には、転倒がトップに上っています(CDCの調査より)。
明晩の『Prevention』に続きます。
加齢に負けない脳に
「軽い運動でも記憶力アップ」と科学者。何の運動を、どのくらい?
Korin Miller/Dementia Deaths Have More Than Doubled—but How Exactly Can It Kill You?
訳/STELLA MEDIX Ltd.