自分の体をきちんと知ろう! をテーマの連載「カラダケア戦略術」。前回は「低用量ピルの使いこなし方」について、お届けしました。今回は、「ホルモン補充療法(HRT)」について女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。 image via shutterstock

更年期の不調は婦人科で治療できます!

更年期世代で、生理(月経)が終わる閉経前後になると、毎月の女性ホルモンの波はなくなり、女性ホルモンの分泌量が一気に下がります。そのため、心と体にさまざまな不調が起こるわけです。

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そこで、女性ホルモン剤(おもにエストロゲン剤)を使って、体内の女性ホルモンの量を持ち上げ、不調を改善する治療法をホルモン補充療法療法(HRT)といいます

更年期のさまざまな不調は、婦人科で治療可能ですので、我慢したり、仕方ないと思ったり、諦めたりせず、婦人科を受診してみましょう。

婦人科での治療は、エストロゲン剤などの女性ホルモン剤によるホルモン補充療法(HRT)と漢方薬が更年期障害の2大治療です。更年期のつらい症状をやわらげることができます。

ひとつの方法だけでなく、ホルモン補充療法と漢方薬を組み合わせて使う場合もよくあります。

更年期の症状に効く漢方薬は、どれ?

今回は、ホルモン補充療法(HRT)のエストロゲン剤について紹介します。

更年期に使うホルモン補充療法(HRT)のエストロゲン剤とは?

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ホルモン補充療法に使うエストロゲン剤には、いろいろな種類があります。まず、エストロゲンの種類別に紹介します。「エストリオール」「結合型エストロゲン」「エストラジオール」です。

1 エストロゲン剤「エストリオール」

ホルモン補充療法で使うエストロゲン剤は、「エストリオール」です。プレ更年期や更年期でエストロゲンがなくなったことで起こる症状を「エストリオール」は緩和してくれます

「エストリオール」は、年齢が若くて、まだ卵をたくさん出しているときはあまり活躍しません。子宮内膜を厚くすることのないくらい、いちばん弱いホルモンです。低用量ピルのように月1回出血しないので、70代、80代になっても使えます。

体調に波があって、プレ更年期の症状が続くようなら、婦人科医に相談して、まずは「エストリオール」から始めてみるという選択肢があります。

まだ若くて、卵巣の機能がしっかりしていて、エストロゲンの分泌が十分な人には、効果を感じない程度の弱い作用です。でも、卵巣機能が落ちてきている人にとっては、症状を和らげる効果はあると言われています。

「エストリオール」の商品名は「エストリール」です。内服薬と腟錠があります。

内服薬
商品名「エストリール錠」(0.1㎎、0.5㎎、1㎎)の内服薬は、1錠約10~15円ととても安い薬です。更年期障害、萎縮性腟炎、骨粗鬆症などの病名で保険が使える薬です。
「エストリール錠」で症状が緩和されるなら、体内のエストロゲンの分泌が減ってきている証拠です。
いつでもやめられますので、婦人科医に相談して、1~2錠を2週間くらい試してみてもいいかもしれません。
この薬の歴史は長く、日本でも昔から更年期障害の治療薬として使われています。
腟錠
また、「エストリオール」には、腟周辺の症状だけに効く腟錠、商品名「エストリール腟錠」があります。「エストリール腟錠」は、腟内に入れる薬で、エストロゲンの血中濃度を上げずに、腟内に効果的に作用します。
腟の乾燥、痛み、膀胱炎、頻尿、尿もれなどによく使われる薬です。
内服薬に抵抗のある人で、腟や尿もれなどに症状が集中している人は試してみてはいかがでしょう。もちろん保険が使える安価なホルモン剤です。

2 エストロゲン剤「結合型エストロゲン」

もし、この「エストリール」を2錠飲んで効果を感じ、もう少し効果を出したいと思うなら、「結合型エストロゲン」で商品名「プレマリン」という薬に変える方法もあります。「プレマリン」も世界中でたくさん売られている薬です。

「プレマリン」は5錠で、低用量ピル1錠分のエストロゲン量です。内服薬は、1錠で約19円とこちらも安価で、健康保険が使えます。1日1錠か2錠から始めます。

「エストリール」1錠0.1㎎×6錠分=「プレマリン」1錠0.625㎎というエストロゲン量です。

3 エストロゲン剤「エストラジオール」

ほかにもエストロゲン剤には、「エストラジオール」という種類があって、それぞれ貼り薬(パッチ剤)、塗り薬(ジェル剤)、内服薬があります。

貼り薬(パッチ剤)
まず、貼り薬(パッチ剤)は、商品名「エストラーナ テープ」。これらは、お尻や下腹部に貼って、2日に1回貼り替える薬です。
また、「エストラジオール」には、商品名「メノエイドコンビパッチ」というエストロゲンとプロゲステロンを一緒に配合された貼り薬(パッチ剤)もあります。プロゲステロンを配合することによって、エストロゲンが子宮内膜を厚くするのを軽減します。下腹部に貼って、3~4日で1枚(週2回)貼りかえるタイプです。 塗り薬(ジェル剤)
エストロゲン剤の「エストラジオール」には、商品名「ル・エストロジェル」や「ディビゲル」という皮膚に塗るジェル剤もあります。
「ル・エストロジェル」は、1回2プッシュを1日1回、両腕の手首から肩までの広い範囲に塗ります。症状に応じて減量して、1回1プッシュを1日1回ということもできます。
「ディビゲル」は、1包を1日1回、左右どちらかの大腿部か下腹部に塗るタイプです。 内服薬
「エストラジオール」の内服薬には、商品名「ジュリナ錠」で1日1回1錠飲むタイプがあります。
また、エストロゲン剤「エストラジオール」とプロゲステロンが一緒に配合された商品名「ウェールナラ配合錠」もあります。骨の量の減少を抑制します。通常、閉経後の骨粗鬆症の治療のお薬として使われますが、更年期障害の治療にも使われています。

使い方別にホルモン補充療法の薬を分けてみると…

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ホルモン補充療法(HRT)の薬を使い方によって分けてみます。飲み薬、貼り薬、塗り薬、腟錠に分けられます。

内服薬 ⇒ 消化管から吸収されます
 「エストリール錠」「プレマリン」「ジュリナ錠」「ウェールナラ配合錠」 貼り薬(パッチ剤) ⇒ 皮膚から吸収されます
 「エストラーナテープ」「メノエイドコンビパッチ」 塗り薬(ジェル剤) ⇒ 皮膚から吸収されます
 「ル・エストロジェル」「ディビゲル」 腟錠  ⇒ 局所(腟の粘膜)から吸収されます
 「エストリール腟錠」

メリット、デメリットをよく知って、使い勝手の良いものを選ぶ!

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口から服用する飲み薬は、小腸などの消化管で吸収されて、全身を循環する前に肝臓を通過します。このとき、肝臓にある代謝酵素によって、摂取した薬が代謝されてしまいます。この点が飲み薬のデメリットです。 

貼り薬、塗り薬は、飲み薬と違い、肝臓を通過しない点がメリットです。ほかに、貼り薬、塗り薬のメリットは、中性脂肪や動脈硬化の原因物質が増加しないこと、静脈血栓塞栓症のリスクを高めないこと、乳がんのリスクが飲み薬に比べて低いことなどが報告されています。

しかし、貼り薬、塗り薬の皮膚から吸収されるタイプは、皮膚のかぶれに注意が必要で、その点がデメリットです。

ここに紹介したのは、更年期で欠乏したエストロゲンを補充することで、更年期症状を改善するエストロゲン剤ですが、子宮がある人はエストロゲン剤だけだと、子宮内膜が厚くなり子宮体がんなどのリスクが上がりやすいとも言われています。そのため、子宮のある人は、子宮内膜を厚くしないために、プロゲステロン(黄体ホルモン)剤もエストロゲン剤とあわせて使う必要があります。

けれども、「ウエールナラ配合剤」「メノエイドコンビパッチ」は、エストロゲン剤だけでなく、プロゲステロン(黄体ホルモン)も一緒に配合されているので、別にプロゲステロン(黄体ホルモン)剤を使う必要がありません。

ここで紹介したエストロゲン剤などの女性ホルモン剤のどれを選んで使うかは、それぞれメリット・デメリットがありますので、医師と相談して自分の使い勝手がよいものを選ぶとよいでしょう。

日本は女性ホルモン後進国なのです

低用量ピルや女性ホルモン剤には長い歴史があり、世界中の何十億人という人が使ってきている薬が多くあります

更年期症状のような不調を感じる人は、婦人科を受診して試してみる価値はあります。

世界ではエストロゲンの作用がどんどんわかってきていて、たくさんの新しいピルやホルモン剤が研究、発明されています。

骨粗鬆症の治療薬は、子宮体がんや乳がんのリスクを減らすと言われていたり、膠原病、甲状腺、心臓などの発病に女性ホルモンが関係するとした研究も行われています。目的別、リスク別に開発され、ホルモン剤はさまざまな研究を背景に日々進化しています。

日本はホルモン後進国です。海外にはあるけれども、日本にはないホルモン剤がたくさんあります。

日本は、低用量ピルの使用量は低い状態です。

2013年の国連人口部の統計によると、避妊手段として低用量ピルを使用する人がもっとも多いのはヨーロッパで、フランス41%、ドイツ37%、イギリス28%となっています。日本人のピルによる避妊の割合は1%で、韓国の2%、中国の1.2%よりも低く、世界最低水準です。

同様に、ホルモン補充療法(HRT)の日本での普及率は、1.5%* と言われています。

(*「更年期と加齢のヘルスケア 2009 VOL8」より)

40代前半までは低用量ピル、更年期になったらホルモン補充療法(HRT)というように、女性ホルモン剤を上手に使えたらいいと思います。

ヨーロッパでは体調をよくするために、更年期対策にホルモン剤を使うという考え方は一般的です。プレ更年期世代から更年期の不調をコントロールしようとする考えは、すでに世界の女性たちの間では広まっているのです。

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増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/

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