たとえば、妊婦さんに必要な栄養素の代表格ともいえる葉酸もそのひとつ。
「プレコンセプションケア」の重要性をとなえる産婦人科医の佐藤雄一先生をまじえて行われたバイエル薬品のセミナーから、妊娠前の女性が心がけるべき栄養摂取について、ご紹介します。
葉酸は妊娠前から摂るべき栄養素
葉酸は、水溶性のビタミン。赤血球の形成を助け、胎児の正常な発育を助けます。
妊娠期に葉酸が不足すると、赤ちゃんが神経管閉鎖障害という病気を発症するリスクが高くなることがわかっています。この病気は、脳や脊髄などのもととなる神経管に起こる異常で、とくに日本で増加傾向にあるのが、神経管の下のほうに異常が起こる二分脊椎症。妊娠6週目末までに起こるはずの中枢神経系の閉鎖が起こらず、脊髄が露出してしまう病気です。
「赤ちゃんの神経管は妊娠2週目くらいから形成され、6週末に完成します。
この時期に葉酸濃度が十分であれば、病気のリスクを低減できます。が、妊娠に気づいてから葉酸を摂取しても、赤ちゃんの神経管が形成される時期の葉酸濃度は十分な数値に達しません。妊娠がわかってからでは遅すぎる、ということです」(バイエル薬品)
葉酸は、妊娠の1カ月以上前から摂取すべき、といいます。イチゴや納豆、アボカドといった食物に含まれていますが、日本人女性の1日の葉酸の摂取推奨量は1日230μg、妊婦では1日480μg。これを食事だけで摂るのは少し難しそうです。
*1 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要 *2 サプリメント等で400μg(=食事性葉酸換算800μg)+食事性葉酸240μgしかも、日本人女性の7割が、葉酸を摂取しても利用しにくい体質といわれている(*3)だけに、サプリメントを上手に使って、しっかりと栄養摂取をしていくべきといえるでしょう。*3 バイエル調べ
エレビット®️(440mg×90粒)4,500円(税込)葉酸のサプリメントもさまざまなものが販売されていますが、エレビット®︎は、海外の臨床データに基づいて作られたサプリメント。葉酸800μgほか、ビタミンB6やB12など、合計18種の栄養素配合がバランスよく配合されています。
小さく産まれると病気になりやすい?
もちろん、栄養バランスに配慮しなければならないのは妊婦さんだけではありません。佐藤先生は、「とくに女性が“子供が欲しいな”と思ったときのために、前もって準備をし、身体づくりをしておきたいですね」といいます。
「近年、日本ではBMI18.5以下の痩せている女性が増えているのと比例して、低出生体重児(2,500グラム以下)の割合が増加していることがわかってきました。(*4 厚生労働省 1980年〜2010年人口動態統計・国民健康・栄養調査より)
女性の痩せが増えてきたのは、女性のスリム志向や、働く女性が増えたことによるといわれますが、そのせいで、小さく産まれる赤ちゃんが増えていると考えられます」(佐藤先生)
「小さく産んで、大きく育てる」のが良しとされたのは過去のこと。いまは、小さく生まれた赤ちゃんはいろんな病気になりやすいということがわかってきました。
「たとえば、虚血性心疾患、II型糖尿病、本態性高血圧、メタボリック症候群に脳梗塞……。ある種のがんも、出生体重の低下と関係しているのではないかと言われています。*5 DOHaD(成人病胎児期発症起源説)
ならば、痩せているお母さんが、妊娠してからしっかり食べて体重を増やせばいいのでは、と思いますが、痩せている妊婦さんにたくさん食べさせて、体重を増やしても、やはり、生まれた赤ちゃんは小さい。
だから、妊娠前からしっかり身体づくりをし、栄養状態を良くしてから妊娠しなければいけないということがわかってきたんです」(佐藤先生)
日常のパフォーマンスをあげるためにも必要な栄養素
妊娠前の母体を健康にすることにより早産や新生児死亡を減らす「プレコンセプションケア」は、2008 年に米国などで始まった考え方ですが、産む産まないにかかわらず、プレコンセプションケアによって若い世代の男女の健康を増進し、生活の質を上げることは重要という佐藤先生。
葉酸をはじめ、タンパク質やビタミンD、鉄、亜鉛などは、妊娠出産のためだけでなく、日常のパフォーマンスを上げるためにも必要な栄養素だそう。
「“栄養力”は“料理力”に直結しているともいえます。スーパーに行って旬の栄養素の高い素材を買って、それをちょっと料理して食べれば栄養力は高くなりますよ。もちろん、栄養素は食物から摂るほうがいい。でも、いまは食べるものの種類が意外と限られてしまっていますから、足らない分はサプリメントで補うことが必要かと思います」(佐藤先生)
すべての生活習慣病は肥満から始まっているけれど、それはもしかしたら、その人のお母さんの妊娠前の栄養状態から繋がっているのかもしれないと指摘する佐藤先生。
この「プレメタボリック・ドミノ」と名付けられた考え方を、一度、自分のこととして意識し、プレコンセプションケアを実践してみてはいかがでしょう?
佐藤雄一(さとう・ゆういち)先生
産婦人科医。産科婦人科舘出張佐藤病院院長。スポーツドクターの顔も持つ。多くの専門医資格を取得し、予防医療の観点から食事や栄養、運動などを指導。東京オリンピックに向けて女性アスリートの健康支援や子宮頸がん、乳がん検診率向上や予防にも注力。著書に『今日から始めるプレコンセプションケア』(ウィズメディカル社)がある。