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専門家に聞く! 性の問題はカウンセリングで解決できるのか?

2019/03/15 22:00 投稿

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海外ではベーシックとなっている「カップルカウンセリング」をご存じでしょうか。今回取材したのは、「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)を運営する臨床心理士の西澤寿樹先生です。

セックスレスなど、夫婦間のコミュニケーションに悩む人が訪れるという「カップルカウンセリング」の基礎知識を教えていただきました。

もっともらしいアドバイスには意味がない

海外ドラマではよく見かけるものの、日本ではまだなじみが薄い「カップルカウンセリング」。

西澤先生のもとには、当人同士だけでは解決できない葛藤を抱えた夫婦やカップルが、ふたりで、あるいはひとりで訪ねてきます。

おふたりで来るケースが半分以上、最初に女性だけで来るのが残りの7割。男性はカウンセリングを苦手とする方も多く、ひとりで最初に来るケースは少ないですね」(西澤先生)

「@はあと・くりにっく」のカウンセラーは、西澤先生をはじめ全員が大学院で臨床心理学を修め、豊富な実務経験を持つエキスパート。しかし、カウンセリングの流れは、一般的な想像とはかなり違うようです。

「一番簡単なのはもっともらしいアドバイスをすることですが、それは実態を反映していません。アドバイスって、“あなたにはまだこんなに努力する余地がある”というのが前提ですよね。

でも当事者には、そんな余裕はないのです。最善のことをしているつもりなのに、うまくいかない。それが現実です」(西澤先生)

「好き」という情緒を無視してはいけない

パートナー間の問題は複雑で、第三者のアドバイスはなかなか通用しないと西澤先生。それでは、実際のカウンセリングはどのように行われるのでしょうか。

「ストレッチが体をほぐすのに役立つように、カウンセリングは心をほぐすのに役立ちます。

今まで気付かなかった自分の心の使い方のくせや、それに起因した因果関係を考えていくことは、カウンセリングで提供できることの一つです」(西澤先生)

何がどううまく行っていないかを、白日のもとに晒すのが第一歩。それはふたりの人生の反映でもあり、つらい作業になることもしばしばです。

「夫婦の話し合いが難しいのは、関係を維持するモチベーションが『好き』という情緒にあるから。自分を大事にしてもらえた感じがする、話し合える感じがする、という情緒面の変化が、まず必要です。

そこをすっ飛ばして、仕事のトラブルと同じように理性から入ってしまうと、話はこじれます」(西澤先生)

うまくいっていないときは、たとえ正論でもパートナーから否定されると、批判されている=自分が大事にされていないという感覚が生じます。

多くの人が陥るのは、「理論的に合意ができたら、ふたりはうまくやっていける」というファンタジー。“やってみる”と言わせることはできても、自分のなかのメカニズムが変わらない限り、その約束が実行されることはありません。

西澤先生いわく、夫婦の葛藤は国際紛争のようなもの。小競り合いの背後には、もっと大きく深い問題が隠れているのです。

セックスレスの解決には「ゴールの共有」が重要

この原理はセックスレスも同じ。手をつなぎましょう、スキンシップから始めましょうといった表面的なアドバイスは、前に障害があるのに後ろから背中を押されているようなもので、ストレスのもとになってしまうと西澤先生はいいます。

「そもそも解決とは何か、という問題にもなりますよね。口では“仲良くセックスできるようになりたい”と言っていても、本当の希望が一致していないこともある。

一方は愛情あるセックスを望んでいるのに、一方は“ガミガミいわれないこと”が一番の希望だったりしますから」(西澤先生)

セックスレスの原因として、愛情はあるけれど、パートナーに怒りも感じているというのはよくあるケース。怒っているから、ムカついているから、相手に優しくしたくない。そういう構図が明らかになれば、より本質的なゴールに近づくことも可能になります。

セックスレスの解決を、お互いが共有できるゴールとして明確化しているかどうか。それを調整することが、カウンセリングの重要なステップになるのです。

お互いに傷を癒やせる関係性はあるか

「夫婦だから必ずセックスすべきだ、という話ではない。しかし、セックスが夫婦のメジャーなコミュニケーションであることは確かであり、それなしでやっていくには相当な工夫と覚悟が必要。

何も話し合わずに生活していたら、バランスを崩すのは当然です。

性の問題は、コミュニケーションの中でも最もナイーブで傷つきやすい。そもそもふたりの間で、セックス以外で傷ついた気持ちを回復する手段や信頼関係があるかどうかを考えてみてください。

お互いに傷を癒やせる関係性があれば、セックスはできるようになることが多いです」(西澤先生)

カウンセラーの仕事は、この場で何が起こっているのかを分析し、話し合いを導くこと。つらくてもゴールを明確化しようとするうちに、関係も自然によくなっていくことがほとんどだという先生の言葉には希望を感じます。

カウンセリングで相手の思いを深掘るプロセスは、ある意味では恋愛の始まりのように、とても親密な体験になり得ると西澤先生。

自分の内面を聞いてもらい、見てもらい、受け入れてもらいたい。それは、パートナーに対して誰もが感じる本質的な欲望なのでしょう。

それをお互いに与え合えるのが信頼感だという西澤先生の言葉に納得。そのプロセスこそが、こじれた関係性を紐解く道なのかもしれません。

臨床心理士の西澤先生に聞く、「カップルカウンセリング」の基礎知識。後編ではセックスレスに悩む女性の具体的な質問にお答えいただきます。

西澤 寿樹先生

株式会社はあと・くりにっく代表取締役。戦略コンサルティング会社コンサルタント、金融機関企画部門・システム部門を経てセラピストになる。国際交流分析協会公認交流分析家(心理療法部門)、臨床心理士、公認心理師、厚生労働大臣認定産業カウンセラー、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー。共著に『コメディカルARTマニュアル』(永井書店)、共訳に『交流分析による人格適応論』などがある。

@はあと・くりにっく

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