日本は深刻なたんぱく不足。東大ママドクターが指摘するリスクとは?
なぜ朝にタンパク質をとることが重要なのか、タンパク質不足が脳にもたらす意外な影響など、日本ケロッグ主催のセミナーから伊藤先生のお話をご紹介します。
タンパク質は溜めておけない
小児科医・公衆衛生専門医として活躍する伊藤先生(赤坂ファミリークリニック院長)。性別・年齢を問わずタンパク質不足の傾向がある日本でも、忙しい女性はとくに朝のタンパク質摂取が不足しているといいます。
「筋肉、内臓、血液、酵素、ホルモン、皮膚、髪など、身体の大事な部分はタンパク質でできています。タンパク質は20種類のアミノ酸で構成されており、そのうちの半分は人間が体内で合成できない必須アミノ酸。必ず食べて補わなければいけません」(伊藤先生)
タンパク質にはさまざまな種類があり、それぞれに大切な仕事があります。たとえばフェリチンという鉄貯蔵タンパク質が足りない人は、「隠れ貧血」である場合が多いなど、不調とも密接な関わりがあると伊藤先生。
「タンパク質は常に代謝(分解・合成)されています。タンパク質を摂ってから、早いものでは3分後から代謝が始まります。どんどん使われてしまいますし、タンパク質は溜めておくことができないので、毎食摂る必要があります。
本当は朝、昼、晩と均等に25gずつ、タンパク質を摂ってほしいのです。しかし多くの人は、夕食がいちばん摂取量が多く、昼食、朝食の順に摂取量が減っています。パンとコーヒーだけの朝食だと、ほとんどタンパク質が摂れません」(伊藤先生)
タンパク質が不足すると「攻撃性」が増す?
必要な量のタンパク質を毎食とらないと、体調不良や体力の低下、肌や髪の衰えなどさまざまな悪影響が。疲れやすい、傷が治りにくい、慢性的な冷え性など、意外な形で不調が表れることもあります。
なかでも見落とされがちなのが、タンパク質不足による脳や情緒面への影響です。
「1995年のロンドンの精神科学研究所の論文では、タンパク質を構成するトリプトファンというアミノ酸が少ないと、他人に対する攻撃性が増すことが明らかになっています(※2)。
また、2017年のドイツとイギリスの共同研究では、“高炭水化物・低タンパク”の朝食だと、他人にイライラしやすくなってしまうことがわかりました(※3)」(伊藤先生)
“高炭水化物・低タンパク”の食事がイライラを招き、“タンパクリッチ”な朝食が周囲の人への寛容性を増してくれるとは驚きの事実。朝ごはんの内容でその日の自分の性格が変わってしまうとしたら、ちょっと怖くなりますね。
忙しい朝、調理の時間がないときは、手軽にタンパク質が摂れるケロッグの「大豆プロテイン グラノラ」や、プレーンヨーグルトより高タンパクと言われるギリシャヨーグルト「明治 THE GREEK YOGURT」シリーズのような食品を使うのもひとつの手。
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伊藤先生が紹介したアメリカの研究によると、「タンパクリッチ”な朝食は満腹感が高く、満腹感が一日中持続しやすい」というメリットもあるといいます。
身体のあらゆる場所で働いているのに、体内では貯蔵できないタンパク質。日々の忙しさに流されず、朝からしっかり摂取することが、心と身体の健康の秘訣といえそうです。
※1 Geriatrics Gerontol Int 2018;18:723-731より
※2 Psychopharmacology(Berl).1995 Mar;118(1):72-81より。
※3 Strang et al.,PNAS June,2017;1620245114より。被験者は24名+24名=48名。被験者数はStudy 1が87名(うち女性54名、被験者全体の平均年齢24歳)、Study 2が24名(全員男性、平均年齢25歳)。
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伊藤明子(いとう・みつこ)先生
小児科医師、公衆衛生専門医。東京大学医学部附属病院小児科医。同時通訳者。東京外国語大学卒業、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科卒。同大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室非常勤講師。赤坂ファミリークリニック院長、NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。近著に『小児科医がすすめる最高の子育て食』(講談社)、「林修の今でしょ! 講座」「主治医が見つかる診療所」などのテレビ番組に出演。
取材・文/田邉愛理、構成/寺田佳織(マイロハス編集部)、image via shutterstock