「SADは冬眠に相当するとも言われています。なぜならベッドに横になり、眠りたくなり、他人に会う欲求も失せてくるからです」と、説明するのはヒューストンのテキサス大学精神行動科学助教、ルイス・フェルナンデスさん(ヘルスサイエンスセンター、マクガバンメディカルスクール)。
普段の量の日光が浴びていないと、身体は憂鬱さを感じるようになります。適切な診断を受けた上で、「ハッピーライト」を使った光線療法を行うと、SADの苦痛を和らげられるのです。
光を補う「ハッピーライト」を使った療法
image via shutterstockハッピーライトは、光線療法ランプ、ハッピーランプ、SADライトとしても知られています。秋から冬にかけて日照時間が減ってしまうので、この間にこうしたランプを使った光を浴びられるようするためのものです。ただし使用するにあたり、(アメリカでは)精神科を受診して、光線療法を受けるかどうかを判断してもらう必要があります(※日本でも、正確な診断、治療方法について、精神科・心療内科の専門医を受診してください)。
「治療の指示をしてくれる精神科医など、医療専門家の判断を仰ぐのはとても大事です。自分自身の判断に間違いがあって、SADではなく双極性障害だった場合、光線療法によって躁状態を助長してしまい、むしろ危険だからです」と言うのは、ニューヨーク精神分析研究所の精神分析医、ゲイル・サルツさん(ニューヨーク・プレスビテリアン病院ワイルコーネル医科大学精神科准教授)。
「最初はフォローが必要なのですが、光線療法がうまくいけば、診察なしでも続けられます」と、サルツさんはつけ加えます。
サルツさんによると、ハッピーライトは他の薬品や心理療法と組み合わせて使われているそうです。
フェルナンデスさんは、「薬のコストや、日常的な生産性低下、調子の悪い日などの悪影響を考慮すれば、光線療法は非常にリーズナブルで効果的な治療法といえるでしょう。多くの人がLEDや青い照明を使っています。日中の過剰なメラトニンの生成を防ぐのに役立つからです」と解説します。
季節性感情障害のためのハッピーライトの使い方
image via shutterstock「秋の終わり頃に日が短くなり始めてから、うつ症状を防ぐための光線療法を始めます」とサルツさん。
また、光線療法は午前中が最も効果的だそうで、一度に10〜15分間ハッピーライトを使用し、最終的にそれを30分に増やします。ライト装置を顔の30~60cm前に置きますが、光はじっと見つめないようにします。代わりに、本を読んだりメイクをしたりして、ランプを点けた状態で何か別のことをします。サルツさんは、春が来て日光の量が増えるまで、秋冬を通して治療を続けることをすすめます。
光線療法による副作用は少ないとされますが、頭痛を訴えたり、元気になりすぎたりする人もいます。また、体内時計が影響を受けて、眠りにつきづらくなるため、朝の使用がすすめられています。
ハッピーライトによってビタミンDは作られる?
image via shutterstockハッピーライトは自然光のように、浴びても体内でビタミンDが作られることはありません。なぜならハッピーライトの光には、非常に狭い範囲の紫外線B波しか含まれていないためです。
もし日光の不足でビタミンD欠乏症が疑われるなら、フェルナンデスさんはサプリメントの摂取について医師と相談するようすすめています。
心の不調は早めに回復させたい
Emilia Benton/What Are Happy Lights, and How Do They Treat Seasonal Affective Disorder?
訳/STELLA MEDIX Ltd.