「代謝」とは、体内の栄養素がエネルギーに変わること
「代謝が落ちる」「代謝が上がる」など、私たちの体は代謝が「いい状態」と「悪い状態」があるそう。「代謝」の正体とは何なのでしょうか。
「食べ物が体内に取りこまれると、栄養が血液によって隅々の細胞に届けられ、エネルギーが作られます。このシステムが『代謝』です。細胞の中には“エネルギー生産工場”であるミトコンドリアがあり、そこでエネルギーが作られます。エネルギーは脳や心臓、血管など内臓がはたらくために使われたり、私たちが体を動かして活動をしたりするためにも使われます。
代謝が落ちるというのは、体内で作られるエネルギーが少ない状態のこと。逆に、代謝のいい体はミトコンドリアでどんどんエネルギーが作られるので、内臓のはたらきもよく、体温も高いのです」(石原先生)
体温が1度下がると、代謝が12パーセント低下
では、作られるエネルギーが少なくなってしまうのはなぜなのでしょう。その原因は、体が冷えて、細胞に栄養が行きわたらないから。この60年で、日本人の平熱は1度下がっているのだそうです。
「60年前に東京大学が調べた日本人の平熱の平均は、36.8度でした。当時は、36.5~37.2度が平熱の定義。今は平熱が35度台という人も少なくありません。ぜひ自分の体温を計ってみてください。36.5度を下回っている場合は、代謝が低い体といえます。
体温が1度下がると、代謝が12パーセント低下するというデータも出ていて、たとえば体重50キログラムのふたりが同じものを食べたとして、体温が1度低い人は1週間で3キログラム太るくらいの代謝量の違いです」(石原先生)
冷えと代謝は相互関係にあったのですね。体温が低いと血流が悪くなり、細胞に栄養が行き渡らず、エネルギー(=熱)が作られない。エネルギーが足りないので内臓のはたらきが悪くなり、血流も悪くなる。 その結果、さらに体が冷える、という悪循環ループを招くのです。
代謝の悪さは、冷えと筋肉の少なさが原因
体温の低下に加え、筋肉量の低下も現代人の代謝を下げている原因なのだそうです。
「エネルギーを作るミトコンドリアは全身の細胞にありますが、なかでも筋肉、脳、肝臓に多く存在しています。とくに筋肉に多く、私たちの体温の4割は筋肉で作られています。
現代人は、車やエスカレーター、便利家電の普及などで、昔の人に比べて運動量はかなり減っています。その結果、筋肉が減り、熱が作れない=冷える=代謝が悪くなっているのです」(石原先生)
40歳を過ぎると、筋肉量はどんどん減っていくので、さらに代謝が悪い体になっていきます。
代謝が悪くなる人って、どんな習慣の人?
冷えと筋肉量の低下が代謝を下げる原因ということがわかりました。以下のような生活習慣の人は要注意です。
「まずは運動不足。意識的に運動をしていない人は、運動不足で筋肉量が低下していると考えられます。
それから年中エアコンの効いた部屋にいる人。オフィスなどはそうですね。汗をかかないので体温調節機能が低下し、代謝の悪い体に。
ダイエットで食事制限をしている、生野菜をよく食べる、白いもの(白米、パン、うどん、砂糖)をよく食べる、水をたくさん飲む、毎日シャワーだけの人も体が冷えて、代謝が悪くなっています」(石原先生)
思い当たることがある人は、代謝低下の可能性ありです。
第2回では、冷えの種類と、冷えによって体に起こることについて解説します。
代謝アップは、食事でも叶います
石原新菜(いしはら・にいな)
内科医。イシハラクリニック副院長。医師の父(石原結實先生)と世界各地の自然療法を視察し、自然医学を学ぶ。現在は、漢方薬処方を中心とする診療を行う。わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄が人気を博し、テレビ、ラジオ、雑誌など、幅広く活躍中。著書に『「冷え」をとれば9割治る!』(海竜社)、『きれいな人は温めている』(大和書房)などがある。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。2児の母。オンラインサロン「Dr.石原ニーナの温めサロン」も。