でもありがたいことに、がんのリスクを上げる最大の要素のなかには、自分でなんとかできるものもあります。ライフスタイルを少し変えるだけで、ほかのいろいろな病気はもちろん、がんになる確率も下げられます。
がんになりやすい遺伝子変異を受け継いでいる場合などのように、自分ではどうしようもない原因でさえ、最新の情報を活用すれば、健康を守るために最善の方法を取ることができます。
01. 喫煙
「がんになりやすくなる要素のトップ5と言えば、とにかく1位から5位まですべてが“喫煙”です」と、ルイジアナ州に2つの医療施設があるポンチャートレインがんセンターの創設者で腫瘍専門医のデビッド・N・ウーバーさん。喫煙の習慣がどれほど危険なものかおわかりでしょう。
頻繁にたばこを吸うほど、そして喫煙歴が長いほど、リスクは高くなります。たばこを吸うと、肺がんだけでなく、喉や食道など口につづく部分のがんになるリスクもアップ。肝臓、膀胱、すい臓、腎臓、胃腸など消化系の器官もダメージを受けます。
アメリカ国立がん研究所(NCI)の報告によると、たばこの煙には250種類もの有害な化学物質が含まれ、少なくともその69%が、がんの原因になるそう。
考えてもみてください。ヒ素やホルムアルデヒドが含まれているのです。それに、影響を受けるのはあなただけではありません。副流煙のせいで、たばこを吸わない人にも肺がんになる危険が。
では、この不健康な習慣を永遠にやめるにはどうすればいいでしょう?
「まずは、“やめようかな”ではなく、本気でやめようと決意することからです。たとえどうしても吸いたいという欲求におそわれたとしても」と、ウーバーさん。
誰にでも効く万能の方法こそないものの、効果的な禁煙法がたくさんありますから、自分のライフスタイルにいちばん合う方法を見つければいいだけ。
ニコチン入りのガムやトローチでうまくいかない場合、ニコチンを含まない錠剤「チャンピックス」はたばこを吸いたい欲求を抑えてくれます。
02. お酒の飲みすぎ
ときどきグラス1杯のワインやビールを楽しむのはまったく問題ありませんが、お酒を飲みすぎると健康を損なうリスクが高くなるかも。
「ワインは心臓にはよいかもしれませんが、男性なら1日2杯、女性なら1日1杯を超えると、死亡率が上がります」(ウーバーさん)
さらにお伝えしておきますが、有名な医学誌『ランセット』誌で報告された2018年の研究によると、いちばん安全なアルコール摂取量は「ゼロ」だとか。そう、まったく飲まないことです。その理由というのは、お酒を飲むと、健康全般に影響が出る可能性があるというのです。
どんな種類のお酒でも、飲みすぎると、口、喉、食道、肝臓、大腸のがん、それに乳がんのリスクが高くなります。
また、アメリカがん協会(ACS)によると、お酒を飲みながらたばこを吸うと、さらにリスクアップ。アルコールをとると、たばこに含まれる化学物質が口や喉、食道の細胞に入りやすくなるうえ、細胞が受けたダメージも修復されにくくなるからです。
03. 不健康な食事
研究によると、赤身の肉(ビーフ、ポーク、ラム)と加工肉(ソーセージ、ホットドッグ、ハム類など)を食べると、大腸がんのリスクが上がります。
もちろん、ハンバーガーやホットドッグ、プルドポーク(蒸し豚)サンドなどをまったく食べないようにするということではありませんが、なるべく少なくする方がよさそうなのは確か。
ジュースやソーダ、ピザなど、グリセミック指数が高い飲食物は、前立腺がんのリスクを上げるという研究結果も出ています。
でも、豆類など栄養価の高い食べ物をとると、前立腺がんと大腸がんのリスクが下がるそう。
04. 座って過ごす時間が長すぎる
座っている時間が長いのは、健康にいちばんよくない要素のひとつ。
過去の観察研究のデータをまとめて分析した研究によると、1日に座っている時間が長い人は短い人よりも、大腸がん、子宮内膜がん、肺がんのリスクが高い結果でした。
もっと活動的でいられるように、デスクを立って使うタイプに変えてみては? そして最低限、必ず1日を通してできるだけ頻繁に歩きまわり、ストレッチします。定期的な運動も忘れずに(理想的には毎日少なくとも30分)。
NIHによると、よく体を動かしている人は、大腸がん、乳がん、子宮内膜がんになりにくいそう。運動には、炎症を減らし、免疫力を高め、消化を助ける効果もあります。
「運動すると、抗がん効果と抗炎症効果のある物質が出ます」と、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアセンション・コロンビア・セント・メアリーズ病院の婦人科がん専門医のアリ・マーダビさん(産科婦人科クリニック特殊医療アセンション・メディカル・グループ医長)。
05. 体重が重すぎる
体重が重すぎると、乳がん、卵巣がん、大腸がん、甲状腺がん、胆のうがん、すい臓がんなどのリスクが高くなります。
腹部脂肪、つまりおなかの脂肪は、余分な体重のなかでもいちばん高リスク。ヘルシーな食事と定期的な運動という基本を守って、体重を健康的な範囲に保ちましょう。
06. HPV(ヒトパピローマウイルス)陽性
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸管がん、肛門がん、中咽頭(のどの中間部分)がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなど多くの種類のがんを引き起こします。
HPVは皮膚の接触によって伝染する性感染ウイルス。身を守るよい方法のひとつがワクチン接種で、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は11歳か12歳で受けるよう勧めています(または、26歳までの女性と、21歳までの男性で、以前に適切なワクチン接種を受けていない人)。
コンドームの使用やセックスパートナーの数を制限することも、HPV感染のリスク低下に役立ちます。
子宮頸部に前がん性の変化が現れたらすぐにわかるように、定期的に産婦人科医の診察を受け、細胞診検査やHPV検査の頻度に関するアドバイスに従いましょう。
07. 年を重ねている
時計の針は戻せませんが、年を重ねるにつれて、気になる症状や定期検査で主治医に診てもらうことがいっそう大切になります。
年をとると、さまざまながんになりやすいからです。どんな年齢でもがんになりますし、若い人の方が多いがんもある(骨がん、白血病、神経芽細胞腫など)とはいえ、がんと診断される年齢は平均66歳。
「年齢が進むと、環境的な原因により(有害な化学物質や太陽光にさらされるなど)、遺伝子変異のリスクが高くなります。DNAはこのような変化をいくらかは修復できますし、修復できない変化が多少あっても、細胞の機能に大きな影響はないでしょう」と、マーダビさん。
でも、年をとるとこのようなDNAの変化が積み重なり、臨界点に達するそうで、そうなると、「細胞は正常にはたらけなくなり、がんが形成されます」(マーダビさん)。
08. 遺伝子変異を受け継いでいる
年をとるにつれて増えてゆく遺伝子変異とは違って、生まれたときに受け継いだ遺伝子変異はどうすることもできません。
でも、家族の病歴をたどって知ることは可能。親族にがんが多いようであれば(特に両親、兄弟姉妹、子どもなどの近親者で見られる場合や、若い頃にがんになった親族がいる場合)、遺伝子検査を受ける方がよいか、遺伝カウンセラーか主治医に相談します。
遺伝子の構成を知れば、ご先祖の時代にはなかった対処法も選べるようになり、最良の「インフォームドディシジョン(説明を受けたうえでの決定)」に役立ちます。
例えば、リンチ症候群の遺伝子変異があったら(とりわけ大腸がんと子宮頸がんのリスクが高くなります)、若いころに大腸内視鏡検査を始めるとか。
さらに、BRCA1やBRCA2の遺伝子変異がある女性は、乳房や卵巣にがんができるリスクが高いため、乳房や卵巣を前もって切除する道を選ぶ人もいます。
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訳/STELLA MEDIX Ltd.