ビタミンD不足による弊害、1日の摂取目安、ビタミンDの摂り方などを、神戸学院大学 栄養学部教授 田中清先生のお話をもとにまとめてみました。
ビタミンDを十分に摂取すれば、がん予防にも
まずはビタミンD不足による弊害について。田中先生はこう言います。
「クル病・骨軟化症を起こすほどではないビタミンD不足であっても、骨折のリスクが増加します。さらに近年ビタミンDは、骨だけではなく、多くの臓器の健康維持に欠かせないこともわかってきました」
国立研究開発法人 国立がん研究センターの調査では、血液中のビタミンD濃度が低いと、各種がんの発生リスクが上昇するということがわかったそう(※1)。
それだけではありません。アメリカ国立衛生研究所の調査により、ビタミンDを十分に摂取している女性は、ビタミンDが不足している女性と比較すると、子宮筋腫を発症する可能性が低いことが明らかになったのです(※2)。
一日に必要なビタミンDの量は?
では一日でどのくらいのビタミンDが必要なのでしょうか。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)」で定めている、一日のビタミンDの摂取目安は、18 歳以上の日本人男女ともに5.5μg(マイクログラム)。
数字では想像がつきにくいですが、つぎから挙げる摂取方法とともに、わかりやすく理解していけたらと思います。
ビタミンDの摂取方法で、よく耳にするのが「日光浴」。
その仕組みは、紫外線が皮膚の中にあるコレステロールの一種に作用することで、ビタミンDの前段階の物質が生まれます。やがてこの物質がビタミンDとなり、血液中に取り込まれるからだそう。
体内でビタミンDを10μgつくるには、何分の日光浴が必要?
日光浴の目安時間(※3)は、7月中旬の横浜なら、朝9時の時点で15分。お昼12時だと9分。15時だと20分。
同じ横浜でも12月中旬であれば、朝9時で150分。お昼12時で45分。15時ではなんと500分必要になります。ビタミンD を5.5μg摂取しようと思ったら、その半分強の時間が必要ということになりますね。
ビタミンDが豊富な食材
とはいえ、毎日日光浴をする時間もありません。日光浴以外の方法として挙げられるのが、ビタミンDを豊富に含む食材を食べることです。
食材100g当たりのビタミンD含有量(※4)を見てみると、たとえば、しらす干し(半乾燥品)なら61μg。しらす干し(微乾燥品)は46μg。イクラは44μg。サケは32μg。乾燥キクラゲは85.4μg。干し椎茸は12.7μg 。舞茸は4.9μgに。
これらのビタミンDを豊富に含む食材を使った、簡単レシピがこちらです。
盛り付けるだけ。ビタミンDたっぷりレシピ
いくらとシラスのビタミンD大盛り「たまひよ丼」
<材料>(1人分)
いくら 30g 釜揚げしらす 30g いりごま 少々 大葉 1枚(タレ) めんつゆ 小さじ1 ごま油 少々 ご飯 1合<作り方>
めんつゆとごま油を合わせてタレをつくる。 大葉を千切りにする。 ご飯にいくらと釜揚げしらすを盛り付け、 ごまと大葉を乗せタレをかけたら完成。<ポイント>
ビタミンDが豊富ないくら(魚卵)と、シラス(稚魚)を使用した「たまひよ丼」。ビタミンDを多く含む食材を盛り付けるだけのお手軽レシピです。
ビタミンDの吸収を高めるため、ごま油を使ったタレでコクをプラスしています。 ごま油がビタミンDの吸収を高めてくれるのも嬉しいところ。
ほかには、たっぷりのきのこと鮭を使った「ちゃんちゃん焼き」もいいですね。日光や食材を上手に味方につけて、ビタミンDを充足させていきましょう。
ビタミンDを積極的に!
日本人のビタミンD不足に「まいたけ」。免疫や血管への知られざるパワー
日やけ止めは年中必須という女性も多いなか、あるビタミンが日本人女性に不足しているといわれます。それは、国民健康・栄養調査で10年以上にわたり「充足し... https://www.mylohas.net/2018/06/169297vitamin-d.html?test201808不足しがちなビタミンD、上手に取るための方法15
ビタミンDは日光に当たると体内で作られることから“日光ビタミン”として知られます。 でも、Preventionとサプリメント会社セントラムの調査... https://www.mylohas.net/2018/05/166142vitamind.html?test201808 ※1 Budhathoki S et al. Plasma 25-hydroxyvitamin D concentration and subsequent risk of total and site specific cancers in Japanese population: large case-cohort study within Japan Public Health Center-based Prospective Study cohort. BMJ. 2018 Mar 7;360:k671. doi: 10.1136/bmj.k671.
※2 Baird DD et al. Vitamin D and the risk of uterine fibroids. Epidemiology 24:447-453, 2013.
※3 出典:国立環境研究所・地球環境研究センター
※4 出典:「日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)」
田中清(たなか・きよし)先生
神戸学院大学栄養学部教授。甲子園大学栄養学部教授、京都女子大学家政学部食物栄養学科教授などの職を経て、2018年より神戸学院大学に勤務。主な研究分野は骨粗鬆症、ビタミン不足。所属学会は日本病態栄養学会(学会誌編集委員長)、日本ビタミン学会(学会誌編集副委員長)など。
image via shutterstock
コメント
コメントを書く