女性のための漢方は「体質から改善」して治していきます
夏は汗と皮脂で、肌トラブルが起こりやすく、大人のニキビもできやすい季節です。市販の塗り薬や皮膚科でもらう薬で治すのもいいですが、漢方薬も大人のニキビや肌トラブルは得意分野のひとつです。漢方薬で、ニキビや肌トラブルを治療するときには、“体質を改善して治す”と考えます。
一方、西洋医学では、ニキビ治療薬や抗菌薬のクリームや内服薬などが処方されます。ケミカルピーリングなどを行う皮膚科もあります。
薬だけでなく、生活サイクルを整えたり、食生活の改善をしたりして、体の状態を改善することも大切です。
漢方薬は、体の改善を後押しして、ニキビのできにくい体質に変える作用もあります。漢方薬は、効くまでに時間がかかるという印象がありますが、自分の体質に合ったものを正しく服用すれば、体質改善のための漢方薬でも1週間程度服用すると、飲む前との違いがわかります。1か月服用すると効果が実感できます。
大人のニキビの原因は、女性ホルモンのリズムや生活の乱れ、ストレスから
ニキビには、種類があります。毛穴が詰まる白ニキビ、酸化して黒ずむ黒ニキビ、炎症を起こす赤ニキビなどです。ニキビができやすい人は、便秘や冷え症を同時に抱えている人も少なくありません。
思春期のニキビは、肌の脂っぽさが原因なのに対して、20代以降にできる大人のニキビの原因は、女性ホルモンや生活の乱れ、ストレスなどが原因で複雑に絡み合っています。
ホルモンバランスの乱れでも、男性ホルモンの過剰分泌か、排卵機能の低下による女性ホルモンのアンバランスか、によって治療方法は異なると言われています。
大人のニキビと荒れ肌に効く漢方薬は?
漢方薬の治療は、炎症を抑え、原因になる体質を改善することで、ニキビのできにくい体にすることを目指します。
“気(き……気持ち、元気の気)、血(けつ……血行、血流の血)、水(すい……水分、リンパ液などの水)”のバランスを整える処方をします。漢方薬と西洋薬と組み合わせることも可能です。
同じストレスによるニキビでも、血の巡りが悪く冷えている「 瘀 血(おけつ)」タイプの人
「桂枝茯苓丸加薏苡仁 (けいしぶくりょうがんかよくいにん)」や、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などが比較的よく処方されます。「 桂枝茯苓丸加薏苡仁 (けいしぶくりょうがんかよくいにん)」は、生理前と生理時のニキビ治療とともに、手足の荒れにも効果的です。
顔面の熱を発散できない、赤っぽいニキビができやすい人
「清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)」などが処方されます。赤みや炎症が強く脂性肌のニキビは、このタイプです。この漢方薬は、顔面の湿疹にも効きます。
赤みが出て、ときに化膿する急性で初期のニキビや湿疹ができた人
「十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)」。体力が中程度の人で、大人のニキビだけでなく急性の湿疹やじんましんにも使われています。
肌が浅黒い人で、炎症反応が慢性化し、化膿するタイプのニキビの人
「荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)」が効きます。この漢方薬は、副鼻腔炎の人にも処方されます。
このように、漢方薬は、医師がひとりひとりのニキビの状態や体質を見ながら処方します。医師の処方なら、健康保険が使えますので安価です。
脚や顔がパンパンに! むくみに効果的な漢方薬は?
image via shutterstock夕方になると脚がパンパンになる、脚がだるい、朝鏡を見ると顔がむくんでいる…などむくみの症状は、女性がよく経験する不快な症状です。
むくみやすい人は、冷えやすい人でもあると、漢方では考えます。疲れがとれにくい、頭痛、めまい、肩こり、汗をかきやすいなども、実はむくみの人に起こりやすい症状です。
夕方、脚がむくむことは通常よくあることですが、朝になってもむくみがとれない、むくみが長く続くなどは注意が必要です。腎臓の病気や甲状腺の病気などが背後に隠れていないか、一度、内科で検査をしてもらいましょう。
特に、隠れた病気がない場合は、西洋薬では利尿剤などが処方されますが、漢方薬や生活習慣の見直しでも、むくみは改善できます。
むくみの原因は、水の流れの滞りです
体が冷えると、体内の水が流れず、滞ってしまいます。これを漢方では、“水毒(すいどく)”“水滞(すいたい)”と言います。これがむくみの原因と考えます。
むくみやすい体質を改善するためには、適度な運動や入浴、タンパク質とビタミンをバランスよく摂る食習慣が大切。そして、漢方薬では、むくみを改善するために“水”の流れをよくする処方をします。
女性のむくみに効く漢方薬は?
むくみがあって下半身が冷えて、疲れやすい場合には、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」が効果的です。当帰芍薬散は、生理不順やPMS、プレ更年期などにもよく使われる漢方薬です。ひとつの薬で、いくつもの症状が改善できるのも、漢方薬の特徴です。
口が渇いて、トイレの回数が少ない人のむくみには、「五苓散(ごれいさん)」が効きます。これは、二日酔いにもよく効きます。「五苓散」は、アルコールを飲む前に飲んでおくと、二日酔い予防にもなります。二日酔いになってからのむくみ、むかつき、頭痛にも効果的です。
また、夏になるとむくみやすくなり、ひざや手指の関節がこわばって痛くなる場合には、「五苓散」を梅雨ころから1日1包飲んで、むくみや関節のこわばりなどを予防するなどの処方が行われることもあります。
色白で筋肉が柔らかく、疲れやすく、汗をかきやすい人のむくみや関節痛には、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)」が使われることが多いです。むくんで、関節のこわばりや痛みを感じる人には、防已黄耆湯も効果的と言われています。
どの漢方薬が自分に適しているかは、医師に診断してもらうことをおすすめします。漢方専門医がベストですが、婦人科や皮膚科、内科の医師も、一般の診療の中で漢方薬をよく処方していますので相談してみてください。
増田美加・女性医療ジャーナリスト
予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ
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