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乳がんによる死亡を防ぐ「BRCA検査」、本当に必要?

2018/08/09 11:30 投稿

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2013年、アンジェリーナ・ジョリーは、乳がんのリスクが高いからと、両方の乳房を切除したと発表。ファンをびっくりさせました。アンジェリーナの説明によると、BRCA遺伝子検査の結果、「欠陥のある」BRCA 1遺伝子を持っていることがわかり、これから先、乳がんになる確率が87%と推定されたためだとか。

BRCA検査って何?

BRCA遺伝子検査は、血液のサンプルを使ってDNAを分析し、BRCA 1とBRCA 2という遺伝子に「変異」(DNAの塩基配列が正しくない状態)があるかどうか調べるもの。このふたつの遺伝子に変異がある女性は、乳がんと卵巣がんのリスクが高くなります(日本でも実施されています。特定の抗がん剤を使うときに実施する場合以外、検査費用は自己負担になります)。

BRCA遺伝子検査を受ける必要があるの?

アンジェリーナ・ジョリーの話を聞いて、自分も検査を受けてみようかと思った人もいるでしょう。事実、病気の予防に関する専門誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・プリベンティブ・メディシン』誌で今年3月に報告された研究によると、乳がんになったことのない女性でBRCA検査を受けた人の割合は、2004年のおよそ24%から2014年には60%以上まで増加。

よいことのように思えるかもしれませんが、実際には少し込み入った事情があります。

まず、このふたつの遺伝子に変異があるのは、アメリカ人女性の場合およそ400人に1人とまだかなりまれですから、すべての女性が検査を受ける必要はありません。それに、この検査は多くの人に確かに役立つとはいえ、検査結果から必ず乳がんになるとも、確実にならないで済むとも保証できないのです。

「知識は助けになってくれるもの。BRCA検査について知っている女性が増えるほど、自分で正しく決めることができます」と、アメリカ遺伝医学・ゲノミクス学会(ACMG)の理事を務めるスーザン・クラグマンさん(ニューヨーク州ブロンクスにある医療機関、モンテフィオーレ・ヘルス・システム医療センターの生殖遺伝部長)。

BRCA検査を受ける方がよさそうなのは、次のような人です。

50歳より前に乳がんになった人、60歳より前にトリプル・ネガティブ乳がんになった人、あるいは何歳のときでも両方の乳房の乳がんになったり、卵巣がんになったりした人。 何歳のときでも乳がんと卵巣がんの両方になった人。 50歳より前に乳がんと診断された親戚(血縁者)がいる人。 乳がんになった男性の親戚がいる人。 BRCA1またはBRCA2の変異を持つ親戚がいる人。 若いときに乳がんになった近親者(近い血縁者)が2人以上いる人。 祖先が「アシュケナージ系ユダヤ人」と呼ばれる血筋に当てはまっており、何歳のときでも乳がん、卵巣がん、またはすい臓がんになった近親者がいる人。

以上の要素があっても、必ずしもBRCA遺伝子変異を持つとは限りませんが、検査を受ける方がよいかどうか、専門家に相談してみる価値はあります。

BRCA検査を受ける前に知っておく方がよいこと7つ

1. 検査で陽性と出ても、乳がんになるとは限りませんし、逆に陰性と出ても、乳がんにならないとは限りません。

BRCA遺伝子の変異があると、乳がんになるリスクが大幅に高くなりますが、絶対になるわけではありません。アメリカ国立がん研究所(NCI)によると、BRCA1変異を持つ女性の55〜65%と、BRCA2変異を持つ女性のおよそ45%が、70歳までに乳がんになると推定されます。

「乳がんの遺伝子変異検査で陽性と出た(若い)人たちの母親を検査したところ、やはり同じ変異を持っていましたが、もう60代、70代になるのにがんを経験していませんでした」と、全米遺伝カウンセラー学会の会長を務めるメアリー・フライフォーゲルさん(認定遺伝カウンセラー)。

研究者は首をひねるところですが、リスクを上げたり、下げたりする、別の関連した遺伝子があるのではないかと考えられています。

その一方で、BRCA遺伝子変異の検査で陰性と出ても、乳がんになることがあります。すべての女性の少なくとも8人に1人が、一生のうちに乳がんになる可能性があり、乳がんになった人のなかで、既知の遺伝子との関連性が確認されるはわずか5〜10%。「家族の多くががんになっていても、BRCA変異が存在しないケースもあります」とフライフォーゲルさん。

そのため、アメリカがん協会(ACS)のような団体の検査ガイドラインに従うことが大切。45歳までに毎年のマンモグラフィ検査を始める方がよいとされていますが、家族に乳がんになった人がいる場合や、ほかのリスク要素がある人は、もっと早めに検査を始めるよう、医師からすすめられるかも。

2. 遺伝子変異検査で陽性と出ても、乳房切除しか道がないわけではありません。

「予防的両乳房切除手術」は、BRCA遺伝子の変異を持つ女性が乳がんになるリスクを95%下げると証明されています。でも、あまりにも極端な方法に思えたり、経済的に無理であったりする(日本では予防的な手術は健康保険でカバーされません)場合は、もっと穏やかな方法も。「たいていは30歳から、毎年MRIとマンモグラフィを受けることです」とクラグマンさん。

また、乳がんのリスクが高い人で、そのリスクを大幅に(おそらくは49%も)下げると研究で証明されている「タモキシフェン」という薬があります。アメリカではこの薬を使用する選択肢が存在しています。薬の利点と副作用(吐き気とホットフラッシュが現れることがあります)があるので、医師と相談のうえで使用を検討することになるのです。

3. BRCAが関係しているのは乳がんだけではありません。

多くの人が「乳がんの遺伝子」と考えていますが、BRCAは卵巣がんとも密接な関係が。BRCA1の変異を持つ女性のおよそ39%とBRCA2の変異を持つ女性の11〜17%が、卵巣がんになります。BRCA検査で陽性だったら、卵巣と卵管の切除を考えるかも(BRCA変異があるとわかったアメリカ人女性の70%もが、切除を選択しています。クリスティーナ・アップルゲイトはその選択をしています)。腫瘍学の専門誌『ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー』誌で報告された2014年の研究によると、この手術で卵巣がんになるリスクが80%下がるそう

「卵巣がんの場合、乳がんとは違って、特に早期の卵巣がんがわかるようなよい検査はあまりありません。ただ、予防的乳房切除に比べて、両方の卵巣を切除する方がはるかに受け入れやすく、はるかに高い割合で受け入れられています。乳房切除とは違って、外見には影響しないという点が大きな理由です」(クラグマンさん)

4. BRCA遺伝子変異は、父親側から受け継ぐこともある。

遺伝子の半分は父親から受け継ぎますから、その母親や祖母が乳がんで亡くなっていたら、リスクが高くなります」とクラグマンさん。父親側の近親者(父親の母親とかおばさん、姉や妹のような)で乳がんになった人が2人以上いたら、検査を受ける必要があるかどうか判断するために、医師に遺伝専門医か遺伝カウンセラーを紹介してもらいます。

5. 母親が乳がんになったら、すぐにBRCA検査を受けるだけで済ませない方がよさそう。

「理想的には、がんになった家族がまず検査を受けることです」とフライフォーゲルさん。母親が乳がんになっても、母親の検査結果が陰性であれば、母親から遺伝子変異を受け継いではいないはずですから、本人が検査を受けても役に立たない可能性が高いのです(母親の検査結果が陽性なら、本人も検査を受ける方がよいと考えられます)。

でも、「どの家族もみな違うもの」と、フライフォーゲルさん。検査が必要な理由はほかにもあるかもしれません。例えば、父親に、乳がんとすい臓がんになった一等親血縁者(遺伝子を半分共有する親子兄弟姉妹)がいるとか。ですから、遺伝カウンセラーか遺伝医学者に相談して、個人のリスクを評価してもらうことがとても重要なのです。

6. ほかの乳がん遺伝子検査もある。

ここ数年の間に、ATM、CDH1、PALB2、TP53(p53)など、乳がんのリスクを高めるほかの遺伝子変異が発見されています。なかには、ほかのがんのリスクも高くなる変異も。

以前にBRCA検査を受けて陰性だったとしても、このような新しい遺伝子変異の検査を受けてみたいと思うかもしれませんね。調べる遺伝子を増やした「拡張遺伝子検査パネル」を使って行われる検査もあります。「このわずか数年で、テクノロジーはとても大きく変わりました。検査を受けたのがほんの2、3年前でも、その遺伝子検査業者に検査の追加を頼む価値はあります」と、フライフォーゲルさん。

7. アメリカでは「23andMe」による検査。正確な結果を得るためにはもっと検査が必要かもしれません。

アメリカでは、郵送で受けられるタイプのDNA検査システムを提供している会社「23andMe」が、BRCA 1とBRCA 2遺伝子の変異検査について、2018年3月にFDAの承認を受けました。BRCA遺伝子変異検査で初の企業から消費者に直接提供される検査です。問題は、乳がんと卵巣がんのリスクを上げる変異は1000以上あるのに、この検査でわかるのは3つの変異だけという点。つまり、「23andMe」の検査で陰性と出れば、この3つの変異はないという意味ですが、ほかの変異についてはわからないのです。もし陽性と出たら、次にどうするか判断するために遺伝カウンセリングを受けるかどうか、自分で決めなければなりません。

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