「最初に生まれた子は次の子が生まれるまで両親の途切れずにかまってもらう権利を独り占めできるのです。一方で、末っ子ならば、年上が成長するまで(そして家を出るまで)それが得られます」とパーソナリティー心理学者、ドイツのマックス・プランク研究所リサーチフェローのジュリア・ローラさん。でも、真ん中に生まれるとスポットライトがあたることはありません。
このような関心の不公平はミドルズの感情に苦痛や怒りを残し、後々自尊心や自己主張の問題になりうると主張する子育て本やブログも。
ミドルチャイルド症候群に研究の裏付けがある?
「ミドルズがきょうだいの中でのポジションのせいで損をしているという考えには根拠はないのです」とローラさん。
ほかの専門家も同意見。「体系的なデータに基づかずに主張する心理学者はよくあるという感じ」とウィスコンシン大学オークレア校の心理学教授、博士のエイプリル・ブレスク・ルチェックさん。また、「ミドルズとして生まれたことですべて台無しというのも明らかに非現実的」とカルフォルニア州レッドランズ大学の心理学教授、博士のキャサリン・サーモンさんも。
生まれ順が個性にどう影響するか?
image via Shutterstock生まれ順はまったく問題にならないわけではなく、あまり問題にならないということ。みんなが思うほどは問題にならないのです。「成長と人格に影響するものはたくさんあります。生まれ順もそうですが、環境、遺伝子、仲間も影響します」(サーモンさん)。親のお金のかけ方やきょうだい間のけんかもインパクトを与えます。
ここまでのことを踏まえた上でも、生まれ順が影響するところはたくさんあるのです。なかでもとりわけ興味深いことを紹介しましょう。
長子は高いIQを持つのかもしれません
「何度も確認されている発見があります。長子は平均の水準よりも少し賢い傾向があるのです」とローラさん。
研究者が非常に大きなグループを対象に調べてみると現れるのがIQの差です。個別の家庭で見てみると、この差は消えたり、逆になったりします。2番目や3番目の子であっても、上の子以上に高いIQを持っていることもあります。「長子のIQが高めだといっても、IQテストで1~2ポイントくらいしか変わらないのです」とサーモンさん。「IQが1〜2ポイント違うからといっても、人生の成果に大きな違いを生み出すのかわかりません」とも。
後に生まれた人はもっと反抗的である可能性
image via Shutterstock「後に生まれた子は長子より反抗的と示した研究もある」とサーモンさん。ここでの“反抗的”というのは、親のライフスタイルから距離を置くようになるという意味。研究によると、長子が親の跡をたどる一方、後に生まれると自分自身をほかと差別化しようと、別の道を選びやすいと示されています。
「後に生まれた方がリスクを取ろうとするというエビデンスもあります」(サーモンさん)。ただしサーモンさんによると、特に後に生まれた子とミドルズを比べた研究は多くありません。そしてここでも効果は(もしあるのなら)ちいさく、人によりけり。
ミドルズはよい“交渉役”になるかも
「たくさんのきょうだいのなかで育つメリットのひとつは欲しいものを得るために交渉しなければいけないことだと思います」(サーモンさん)。長男長女は大きく、欲しいものが手に入りやすい。末っ子は親に対して甘えることができる。一方で「ミドルズは交渉戦略や欲しいものを手に入れる技術を習得していかなければならず、家の外でも役に立つのです」とサーモンさん。
ミドルズは親ではなく、きょうだいや友人を頼るかも
サーモンさんの研究によると、長子や末っ子は、困難に遭うと、親に頼ることが多い一方、ミドルズはまずきょうだいや友人に目を向けがちだそう。「ミドルズは友達べったりになる傾向が」(サーモンさん)。こうなると友達のタイプ次第でよい方向にも悪い方向にも転ぶもの。「ある問題につながることがわかります。2番目生まれには非行率が高いという研究もあるのです」(サーモンさん)。
長子はより誠実かもしれません
学術誌の『エボリューション・アンド・ヒューマン・ビヘイビアー』誌の2007年の研究では、長子は後に生まれた子と比べてより誠実な傾向があると示されています。この研究で、「誠実」とは責任感と連帯感の高さ。サーモンさんによるとこれらの研究は、長子が後に生まれた子と比べて、ルールに従い学校などで努力するという意味で“保守的”であると示唆しているのです。ただし、効果はちいさいものでしょう。
後に生まれた子は柔軟な考えをする可能性
同じ2007年の研究によると、後に生まれた子はより柔軟な心を持って、進んであたらしい経験をできるそう。この研究は柔軟さとは“型にはまらない”、あるいは、“自由な”考え方をする傾向と定義されています。「後に生まれた子は空想しがち、もしくはよりオープンです。騙されやすいというよりは物事を信じやすいのです」(サーモンさん)。
きょうだい皆同じ性別の場合、生まれ順の影響がよりはっきりする可能性
「子ども全員が同じ性別の大きな家族を見ると、生まれ順の影響がよりはっきり現れるよう」(サーモンさん)。また、全員男の子、全員女の子のきょうだいでは生まれた順番による影響が、親の関与から来るのですが、男女男もしくは女男女のきょうだいの場合にはそうした影響につながるような関与は見られなくなります。また、生まれ順の影響は家族の外より家族の内ではっきり現れるのです(例えば、とても社交的な家族のなかで育ち、家族のなかでは恥ずかしがりであると感じていても、実は平均的な人と比べるとシャイではない、など)。
長子は成果について親のプレッシャーを感じる
image via Shutterstock「長子には大きな期待が寄せられるのです。長子は親の設けた高いハードルや目標、理想に応えざるをえないもの」とサーモンさん。一方、後に生まれた子は自分で判断することをより自由に感じます。「そのような自立した考え方で、さまざまな物事に当たって、よりよい道を探っていくのです」(サーモンさん)。ある最近の研究によると、後に生まれた子は長子よりも、建築、音楽、執筆などクリエイティブな職業に就きやすく、一方で長子はビジネスや法律関連の職業に就きやすいそうです。
後に生まれた子はメンタルが強いかも
医学誌『ソーシャル・サイエンス・アンド・メディシン』誌の2010年の研究によると、後に生まれた子は上の子に比べてメンタルが強いよう。「年長のきょうだいが存在していると、どちらかといえばよいメンタルが強くなる傾向がある一方で、年下のきょうだいが存在していると、メンタルが弱くなる傾向があるのです」(その研究の著者)。加えて、この研究のデータによると、年長のきょうだいを持つ子どもは活発で、感情が豊かである傾向があったのです。
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