先月、10ヶ月ぶりに再訪しましたが、Veganメニューを置く店は一層増えているように感じました。そしてパリで暮らす人が通うカフェほど、Veganメニューが重宝されているようでした。
パリジャン&パリジェンヌに“週末Vegan”急増中?
パリ在住のフランス人男性に話を聞くと、肉を食べるお金がなくてもチーズやバターは欠かさないと言われているフランス人ですが、最近は仲間と食事するとき以外はVeganにしている人が増えているそう。
彼は自転車(スポーツバイク)が趣味なのですが、週末だけVeganにしているとのこと。「Veganの食事はなんとなく体が軽くて元気に漕げる」そうですよ。 今回は、パリで過ごす週末に行きたくなるようなVeganカフェやパティスリーをご紹介します。
100% Veganカフェのクロワッサンと華やかランチ
パリ2区、週末は歩くのが困難なほど賑わうグルメ通り。その通りを一本入ったところにある、全メニューVeganのカフェ「Cloud Cakes」で出会ったのは、Veganクロワッサン。
まず見た目が美しい! 1.8ユーロ(2018年6月:1ユーロ = 約128円)というお手ごろな価格も魅力的で、多くの人がサンドイッチなどにプラスしてクロワッサンをオーダーしていました。
わたしももちろん、購入! Veganのクロワッサンは初めてだったのですが、サクサクの食感と、鼻に抜ける全粒小麦のいい香りに驚きました。クロワッサンはバターの味というイメージですが、植物性食材だけで作るとこんなにも小麦の味が感じられるとは。中のしっとり感も抜群で、いくつでも食べられそうでした。
笑顔で「Do you enjoy it?」と笑顔で話しかけてくれた女性スタッフさんに、バターの代わりにどんな油脂を使っているのか聞いたところ、マーガリンとのこと。マーガリンにネガティブなイメージを持つ方も多いですが、このクロワッサンからは不自然な匂いや味は感じられず、わたしは好きでした。フランスのマーガリンは、日本のものと違うのかもしれませんね。
そして、このカフェはランチやドリンクも大満足。 マッシュルームとVeganチーズの挟まったホットサンドやアボカドのタルティーヌは、パンのレベルが高く、サクサク食べられるとはまさにこのこと。ソイ(豆乳)のチャイも本格的なスパイスの香りで、並ならぬこだわりを感じました。
店名を冠した「Cloud salad」はたっぷりの野菜、ナッツ、お米の麺とパクチー! 甘酸っぱいチリソースがかかっていて、ベトナム料理が好きな方ならきっとハマる味でした。
お菓子の国の本気を見た!Veganパティスリー
フランス菓子で苺のケーキといえば「フレジェ」。リキュールやナッツがほのかに香る生地が口の中でほろっとほどけ、ホイップクリームではなくバタークリームとカスタードクリームを合わせた濃厚なクリームが溶ける。そこにキュッと甘酸っぱい苺。日本でおなじみのショートケーキとはちょっと違う大人のケーキです。写真の「フレジェ」はなんとVegan。見た目の美しさにも驚きますが、その味に、フランスの本気を感じました。
もちろんバター、生クリーム、卵など動物性のものは一切使っていないのに、食べた感覚はまさにフレジェに期待する濃厚な味わい。もちろん伝統的なフレジェとは違うものだけど、幸せを十二分に満たしてくれる。
Veganのケーキって、“代替”で生まれたものが多いように思います。ほんとうはバターでつくりたいのに他のもので似たような形にする、というようなことです。でも、さすがお菓子の国フランス。味にも見た目にも妥協がない。Veganだろうがなんだろうが、フランスの名にかけて、美しくておいしいお菓子を作り上げたらこうなりました、と言わんばかりの威風堂々としたケーキの数々は、楽しい“週末Vegan”にぴったりですね。
店のシェフに、わたしが東京でVeganのカフェをやっていることを話したら「東京にVeganの店があるなんて知らなかった!日本が好きだから必ず行くよ!」と言ってくれました。Veganという共通言語で世界に仲間ができるこの瞬間が、とても幸せです。こちらのVeganパティスリーには、ひっきりなしにお客さんが訪れていました。お菓子屋さんに男性のお客さんが多いのもフランスならでは、ですね。
Paris 11区の「Patisserie Vegetale」食べることが大好きなパリジャン、パリジェンヌにとっては、Veganの食事も、他の食事とまったく変わらない、楽しい食事のひとつであることをあらためて実感しました。東京にも、だれもが気軽に楽しめるVeganカフェのカルチャーを広げていきたいと思っています。
Vegan(ヴィーガン)とは、完全菜食。 動物性のものを一切使わないライフスタイルや、そのような食事のことをさす言葉。 本連載『TOKYO VEGAN』では、おうちでつくれるVeganレシピのほか、おいしい野菜や調味料、世界のVegan事情についてなどをゆるゆると綴っています。
次回もフランスからのレポート。南フランスでみつけた至宝の穀物「プチエポートル」の魅力や簡単なレシピをご紹介します。
大皿彩子 Saiko Ohsara
Alaska zwei 店主 / 株式会社さいころ食堂代表、“おいしい企画”専門のフードプランナー。Veganカフェ「Alaska zwei」の運営のほか、食に関わるブランドプロデュース、レシピ開発、空間コーディネート、イベントのトータルコーディネート等を行う。saikolo.jp