「ブレットプルーフ・コーヒー(防弾コーヒー)」は、グラスフェッドバター(ココナッツミルクや牧草で育てた乳牛のミルクから作ったバター)を混ぜたコーヒー。「ゴールデン・ミルク」は、ターメリック入りのミルク。ほかにも「抹茶ラテ」など、いろいろありましたが、今度は「マッシュルーム・コーヒー」が登場。

アメリカの自然食品大手スーパー、ホール・フーズ・マーケット(Whole Foods Market)が今年初めに予測したところでは、2018年に流行るスーパーフードのひとつがマッシュルーム(キノコ)。そして、写真共有サイトのピンタレスト(Pinterest)によると、「健康的なコーヒー」を探す人が急増しているとか。つまり、このふたつが合体して、おかしな名前の朝食用健康ドリンクになるのも時間の問題だったのです。

魔法のキノコドリンク(もちろん、違法な「マジックマッシュルーム」ではありません)を有名にしたフィンランドの会社、フォー・シグマティック(Four Sigmatic)の主張によると、同社の製品に使われているさまざまなキノコは「免疫、エネルギー、長寿に関して、何世紀にもわたって研究されてきた驚異的な効果がある」のだそう。

そう言われると、考えてしまいます。キノコの栄養分とコーヒーの豊富なカフェインの組み合わせって、本当に何か意味があるの? そこで、この変わり種コーヒーが宣伝文句どおりなのかどうか、詳しく調べてみました

マッシュルーム・コーヒーとは何か?

マッシュルーム・コーヒーはコーヒーに粉末マッシュルームを混ぜたもので、相乗効果があって健康によいと言われています」と、管理栄養士(理学修士)のクリスティ・ブリセットさん。健康的な食生活を推進する広報・コンサルティング会社「エイティ・トウェンティ・ニュートリション(80 Twenty Nutrition)」の社長です。

コーヒーカップの中にプックリとしたシイタケが浮かんでいる。ちょっと気味わるい飲み物を思い浮かべたなら、どうぞご安心を。

例えば、フォー・シグマティックの伝統的なマッシュルーム・コーヒーは、アラビカ種(コーヒー豆の種類)100%のコーヒーにヤマブシタケとチャーガ(和名はカバノアナタケ)のエキスを混ぜたもの。エキスは木に生えたキノコから抽出、スプレードライ製法(液体を霧状にして瞬間的に粉末にする方法)で乾燥して濃縮されています。つまり、炒め物に入っているキノコとはまったく違う姿。

この手法で多くの健康効果をうたうさまざまなブレンドができます。そのひとつ、ヤマブシタケとチャーガが入った「パワー・オン(Power On)」ブレンドは、生産性、集中力、創造性が高まるという触れ込み。

活力に特化したブレンドもあります。カフェインは半分ですが、同社によると「エネルギー増進キノコ」のノムシタケが、普通のコーヒーより健全に元気にしてくれるそう。

「メタボライズ」コーヒーは、グリーン・コーヒービーン(焙煎していない生のコーヒー豆)のほかチャーガ、マイタケも入っていて、代謝を活発にするとの主張。すべてすばらしく聞こえますが、キノコの効果の科学的な裏付けはやはり謎です。

マッシュルーム・コーヒーは本当に健康効果があるの?

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キノコにはがんをやっつける力があるかもしれません」と、ブリセットさん。それはキノコに含まれる化学成分のおかげ。マイタケのエキスは、乳がんの女性34人を対象とした研究で免疫力を高めるとわかりましたし、別の研究では抗菌・抗カビ効果が有望とされています。

ブリセットさんによると、キノコは食べた後すぐにグリコーゲン(ブドウ糖、すなわちグルコースがたくさん集まった糖で、身体の主要な燃料源としてそのまま肝臓と筋肉に蓄えられます)に変換されますから、血糖値(血液中のグルコースの量)を下げる役に立つ可能性があるのです。16人の若い男女を対象とした研究で、ポータベラ・マッシュルームの粉末が食後の血糖値を正常に保ったという報告もあります。

でも、ほとんどの研究は細胞や動物を使ってキノコの健康効果を調べているため、「人間で同じ効果を得るにはどれくらいたくさんとればよいのかわからない」(ブリセットさん)。

とくに、人間を対象としてチャーガを調べた研究はすくないので、免疫力アップという主張には疑問の余地が。

それでも、ノムシタケが運動能力に影響したという初期段階の研究結果もあります。年配の人たち20人に1日3回、ノムシタケエキスのサプリメント(カプセル)または偽薬(プラセボ)を取ってもらい、12週後に比較したところ、サプリメントを取ったグループは、以前より高レベルの運動を疲れずにやり遂げるなど、運動能力が高くなっていましたが、偽薬のグループは変化がなかったとか。ただ重要な点は、この研究で使用したサプリメントにはノムシタケエキスが1000 mg近く入っていたこと。一般的なマッシュルーム・コーヒー1杯に含まれる量はわずか150 mgです。

2014年の別の研究でも、ノムシタケのサプリメントは高地トレーニング(高地のように酸素が少ない環境で有酸素運動をして心肺機能を高めるもの)を行なったアスリート18人で同じように運動能力を高めましたが、やはり高濃度のサプリメントでした。

ですから、ノムシタケエキスをたっぷり取れば、運動能力が上がる可能性はありますが、マッシュルーム・コーヒー1杯では、同じ効果が得られないかも。それに、いくつかの研究によると、サイクリングやランニングなど、持久力を高める運動をする前にコーヒー(カフェイン)を取ると、結果がよくなるそう。つまり、キノコなしでも。

ノムシタケが運動能力を高めるとわかった研究もあります。

キノコをサプリメントで摂る効果については証拠が増えつつありますが、粉末のキノコとコーヒーを「混ぜる」効果については、研究されていません。ですから、マッシュルーム・コーヒーをゴクゴク飲んで、特に素晴らしい運動効果があったり、エネルギーがみなぎったり、生産性が急にアップしたりしたとしても、その原因がキノコなのか、カフェインなのか、あるいは両方なのかを見極めるのは不可能です。

マッシュルーム・コーヒーを試す方がよい?

もっとも害にはならないよう。カフェインが普通のコーヒーの半分なので、コーヒーは好きだけど、カフェインの影響を受けやすい人には向いている可能性はあります。それに、インターネット上の評価では、味は普通のコーヒーとほとんど同じと言われています。

でも、生産性を上げたいとか、運動能力を高めたいのであれば、普通のコーヒーにしておく方がよさそう。マッシュルーム・コーヒーは15ドルから40ドルもしますが、主成分は結局コーヒー。キッチンにあるいつものコーヒーに比べて割高です。

だからといって、炒め物やパスタソースにキノコを入れないようにするという意味ではありません。「キノコは低カロリーで、ビタミンDも含む上、腸の健康によい影響を与えます。キノコは食べるより飲む方がいいという強力な証拠が出るまでは、やはり食べ物として考えます」とブリセットさん。

Natalie Rizzo, MS, RD/What Is Mushroom Coffee—and Can It Really Boost Your Health?

訳/STELLA MEDIX Ltd.

RSS情報:https://www.mylohas.net/2018/06/170218mushroom_coffee.html