果物、野菜、全粒穀物、脂肪の少ないたんぱく質源などのヘルシーな主要食品を蓄えておくのは、もちろんよい考え。でも、そんな食品も(そして家族がどうしても買っておいて欲しいと言う、心そそられる「ジャンク・スナック」類も)、正しい場所に置かないと、あまり効果を発揮しないかもしれません。
信じられないかもしれませんが、キッチンで何を目にするかが、食べ物の選択に大きな影響を与えるという事実が科学的に明らかになっています。つまり、減量したかったら、よい食べ物にラクに手が届くようにすること。そして、ダイエット失敗の元凶は視界の外に置くようにすること。とにかくこれが基本原則ですが、具体的にどうすればよいのか、細かいコツがたくさんあります。
では、キッチンの隅から隅まで整理整頓するために(そして体重を減らすために)役立つ、専門家が認める秘訣をご紹介しましょう。
1.栄養価の低いカロリーだけのスナックは隠す
クッキーやチップスなど、栄養価の低いカロリーだけの(「エンプティカロリー」と呼ばれています)スナック菓子を減らそうとしているなら、キッチン・カウンターの上に保管しておいたのではちっとも役に立ちません。おなかが空いていてもいなくても、食べ物を見るだけで食べたくなるからです、と管理栄養士のジョージー・フィアーさん(一生体重を増やさないための本『Lean Habits for Lifelong Weight Loss』の著者)。
ほんの少しつまむだけでも、積み重なれば相当な量に。健康に関する行動学・教育の専門誌、ヘルス・エデュケーション・アンド・ビヘイビア誌で報告された研究によると、キッチン・カウンターの上にシリアルとソーダを保管していた女性は、そうしていなかった女性に比べて、平均しておよそ9 kg体重が多かったそう。教訓? キッチン・カウンターの上に食べ物は保管しません(スナック類をどこに置けばよいかについては、後ほど)。でも、ひとつだけ例外があります......。
2.果物を入れたボウルを置いておく
果物は、キッチン・カウンターのような目立つ場所に置いておいても、科学的に見て実際に減量に役立つ唯一の食べ物。正確なところ、どれくらい役立つか? 先ほどの同じ研究によると、新鮮な果物を入れたボウルを置いておいた女性は、置いておかなかった女性と比べて、体重がおよそ6kg軽かったそう。
理由は2つ。まず、果物はスナックとして低カロリー。すぐに目に入れば、何かほかのものを探して冷蔵庫や戸棚をくまなく探すよりも、それを食べようという気になります、と管理栄養士のサラ・フラグラットさん。同時に、果物は、例えばプレッツェルやチョコレートほどには魅力的ではありません。ですから、リンゴやバナナに手を出すのは実際におなかが空いているときだけになる見込みが高いのです。
3.ヘルシーなスナックを一定量に小分けしておく
ナッツ、ドライフルーツ、油を使わないエアポップコーンなどは手の届きやすい場所に置いて、おなかが空いたらいつでもつまめるようにします。グーグル社食品担当チームの専門家が行った研究によると、ヘルシーなスナックをもっと食べるようにするには、簡単に食べられるようにしておくのが効果的な方法だそう。
フラグラットさんのおすすめは、スナックを家に持ち込んだらすぐに、あらかじめ決めた量で袋や容器に小分けすること。大袋と比べて、1回分の入れ物なら大きくひとつかみも難しそうなので、何も考えずにたくさん食べてしまう事態が少なくなります。おやつの時間になっても、分量が決まっていれば食べすぎません。
4.食品貯蔵庫と冷蔵庫を戦略的に整理
理想の世界でなら、全く誘惑されないようにジャンク・スナックをすっかり家から締め出してしまえるかも。でも現実的には、家族の誰かがお菓子を手元に置いておきたがったりします。そんな場合、キッチン・カウンターの上からどけるだけでは不十分。戸棚や食品貯蔵庫の中、それも扉を開けるたびに目に飛び込んでくるような場所以外にしまうのがいちばん確か。いちばん上やいちばん下の棚、あるいはずっと奥の方にすればうまく行くはず。視線に入らなければいいんです。
有名な科学雑誌、プロス・ワン(PLoS One)誌で報告された研究によると、人はおいしそうな食べ物を見るだけで、食べたくなるのだそう。「食べ物を隠しておけば、忘れてしまう見込みが高くなります」とフラグラットさん。
そして、もし食品貯蔵棚の奥にドーナツの箱があると思い出しても、食べずに終わらせるにはしまいこんでおくだけで十分。「何かを手に入れるためにもっとエネルギーを使わなければならないとなると、本当に欲しいのかどうか考えるものです」とフィアーさん。
では、ヘルシーな食べ物はどこに置けば? 冷蔵庫や食品貯蔵庫の中で、真ん中の棚の手前側など、いちばん栄養のある食品のために特等席を指定。ヘルシーな食べ物を真ん前に置いておけば、見つけやすくなって、ケーキやマックの残り物とかチーズをかき分けて探さなくてもよくなります。もっと重要な点として、棚の上中下段を比較した研究によると、私たちの目はまず真ん中の棚に焦点を合わせがち。さらに別の研究によると、ビュッフェ形式の食事の場合、最初に目にする食品をいちばんたくさんお皿に盛る傾向があるとか。つまり、ヘルシーな食品が最初に目に入れば、自動的にたくさん食べる結果に。
5.缶詰をストック
具体的には、黒豆類、ヒヨコマメ、白豆類、レンズマメなどの缶入り豆類。おなかがいっぱいになる食物繊維とたんぱく質が豊富なので、サラダやスープからパスタまでどんな料理でもすぐに、何時間も満腹感が続く食事に変えられます、とフィアーさん。つまり、冷蔵庫が空でも、あるいは料理する元気がないときでも、テイクアウトを注文しないで済む簡単でヘルシーな食べ物が手元にあるということ。
結果的にすべてが減量に役立ちます。事実、栄養学の雑誌、アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション誌で報告された研究によると、過去の21件の研究を分析したところ、食事に豆類・豆科植物を3/4カップ加えるだけで、ほかに何も変えなくても、6週間でおよそ230グラムの減量効果が。
6.正しい容器を使う
おそらく、冷蔵庫の中のすべてが100%いつもヘルシーなわけではないでしょう。そこで、フィアーさんの提案。よい食品は、いつも見えるように透明な容器に入れて、ピザの残りなどのあまりヘルシーではない食品は、不透明な容器やアルミホイルを使います。忘れないで、いちばん食べたい食品が目に入るように。そそられる食べ物は視界からどけておけば、自動的にあまり食べなくなります。
代表例:コーネル大学の研究によると、オフィスで従業員のおやつ用に置いてあるチョコレートを不透明なボウルに入れたところ、透明なボウルに入れた場合と比べて、1日に食べるチョコレートが2個減ったそう。
7.整理整頓
キッチンで比較的きちんと維持しておくべきなのは、冷蔵庫と食品貯蔵庫だけではありません。汚れた食器は、カウンターや流しに出しっぱなしにしないで、すぐ皿洗い機に入れる習慣を。そして、ペーパー類などのゴミをテーブルに置きっ放しにしないように。
なぜかというと、環境と人間の行動の関連性に関する専門誌、エンバイロンメント・アンド・ビヘイビア誌で報告された研究では、女性に片付いたキッチンと乱雑なキッチンで過ごしてもらい、ニンジンやクッキーなどのスナックを好きなだけ食べていいことにしました。その結果、乱雑なキッチンで過ごした女性は、およそ100キロカロリー分多くのクッキーを食べました。
「ストレスが増えると過食が誘発されますから、きちんと片付けておけば生活空間での満足度が高くなり、何かつまみたい気分になることも減ります」とフィアーさん。キッチンに立たなければならないけど、片付ける時間がないときは、せめて散らかったものを1か所に寄せて、こざっぱりした作業スペースを確保するとよいそう。
8.キャンドルを活用
そう、いつも使おうと思っているのに実行した試しはなく、引き出しの中で何年も眠っているキャンドル。キッチン・テーブルに置いて、食事の間、火を灯します。ステキな雰囲気にしてくれるのはもちろんですが、ジャーナル・オブ・マーケティング・リサーチ誌で報告された研究によると、ほのかな明かりで食事した場合、もっと食べ物を楽しんでゆっくり食べるようになり、食べる量がおよそ14%少なくなるそう。
ただし、食事の献立と準備は必ず前もって普通の照明の下で。明るい光の方が、ヘルシーな選択をしますから、クリーミーなパスタより鮭を選びそうですし、料理中のつまみ食いも減ります。
Marygrace Taylor/How To Organize Your Kitchen For Weight Loss Success, According To Science