「心拍数を知るのは簡単です。脈をとって、1分間、数えるだけ。でもこの情報を役立てるには、心拍数の記録を続けて、大きな変化がないかどうかチェックする(変化があったら医師に言う)のがいちばん。1回の心拍数よりも、平均してどんな傾向があるかの方がもっと重要です」と認定心臓専門医でカリフォルニア大学サンディエゴ校医学准教授のパム・R・トーブさん。
トーブさんによると、大部分の人にとって理想的な安静時の心拍数は60〜85回/分(bpm)ですが、100回/分までOKという医師もいるそう。これより低すぎる(徐脈)または高すぎる(頻脈)場合、どこかがよくないと身体がSOS信号を送っている可能性があります。
では、何がよくないのでしょうか? 次に、心拍数の調子が悪い原因をいくつかご紹介します。
1. ストレスを受けている
ストレスは心臓の鼓動を激しくし、血圧を上げて、身体を「闘うか逃げるか」モード(極度の緊張状態)にします(大切なこと:心拍数と血圧は同じではなく、必ずしも常に一緒に上下するとは限りません)。トーブさんによると、常にストレスがかかっている場合、身体は(心臓も含めて)高い警戒状態が続きますから、心臓発作や脳卒中を起こす確率が高くなります。
2. 糖尿病である、または糖尿病になりつつある
心拍数が高いと糖尿病になるのか、糖尿病だから心拍数が高いのか、医師にもはっきりわかっていませんが、最近の研究によると、このふたつは明らかに関連しているという証拠があります。「糖尿病になる人はたいていあまり活動をしておらず、冠動脈の病気と高血圧になる確率が高く、これらはすべて心臓に負担をかけます」とトーブさん。
そして、心臓の調子が悪いと、この先ほかの問題が起きる可能性が。「とくに糖尿病の人では、心拍数が高いと調子が悪くなると示した研究結果がたくさんあります」(トーブさん)
3. 心臓の電気系統がショートしている
image via Shutterstock「心臓には独自の電気(伝導)系統、つまり正しい鼓動を助ける信号ネットワークがあり、心拍数が遅いのはこの電気系統に異常があるせいかもしれません」とトーブさん。電気系統に問題があると、めまいや立ちくらみを起こす場合も。この機能がおかしいかどうかは、単純な心電図(EKG)でわかります。
4. あまり運動していない
「使わないとダメになる」という法則は心臓にも当てはまります。心臓は筋肉ですから、最高のはたらきをするには運動が必要。「あまり活動をしていなかったり、太っていたりすると、安静時の心拍数が上がることがよくあります」(トーブさん)。どうしてかというと、運動不足だと必要なところに血液を送るために心臓がもっとがんばってはたらかなければならないから。さらに、身体が大きいほど、多くの血液が必要で、多くの血液を送るためには、1分間により多く鼓動しなければなりません。
対照的に、たくさん運動していると、安静時の心拍数が低くなります。本格的なアスリートの安静時の心拍数は、一般的に60回/分以下なのです。
5. 薬(処方薬も含めて)の影響
image via Shutterstockある種の薬は、心拍数の通常の範囲をすっかり変えてしまいます。「ベータ遮断薬とカルシウム受容体拮抗薬が、心拍数を下げる主な薬です」とトーブさん。どちらも心臓をリラックスさせて、鼓動を遅くすることがあります。必ずしも危険というわけではありませんが、気になる場合は医師に相談を。
一方、カフェインは脈拍を速くすることがあります。カフェインは多くの頭痛薬に含まれ、お茶やチョコレートのような特定の食べ物や飲み物にも含まれます。「カフェインにとても敏感な人は、コーヒーやエネルギードリンクを飲むとすぐに心拍数が上がります」(トーブさん)。この場合はカフェインを減らせば効果があるはず。
6. 脱水状態か水分過剰
体内で電気を帯びているミネラル分子(イオン)は「電解質」と呼ばれ、身体の働きにとって大切な化学反応を担っています。水の飲みすぎ、または水分不足の場合、この電解質と水のバランスが崩れて、化学反応が混乱状態に。「カリウム、カルシウム、マグネシウムのレベルがとても低いと、不整脈(異常な脈拍)が起こることがあり、それが高い心拍数として現れます」とトーブさん。
7. 甲状腺が機能低下または機能亢進
甲状腺(首のところにあるチョウチョ形の器官)は、身体の機能を正常に保つホルモンを作るところ。このホルモンが十分に作られないのが「甲状腺機能低下症」で、心拍数が低くなる場合があります(トーブさん)。一方、甲状腺が働きすぎて、ホルモンを過剰に作ってしまうのが「甲状腺機能亢進症」で、逆に心拍数が上がります。甲状腺の機能は血液検査で調べられるそう。
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