原因を調べるためにも医師にかかる必要があるのですが、ここでは知っておくといい骨盤の痛みの一般的な原因を紹介します。
授乳
「出産後48時間以内にエストロゲン濃度は急低下します」と産科・婦人科医のシェリー・ロスさん。『シーオロジー:ディフィニティブ・ガイド・トゥ・ウィメンズ・インティミット・ヘルス(女性学~性的健康の決定ガイド~)』の著者です。出産と同時に、赤ちゃんにあげる母乳を生み出すために身体はプロラクチンというホルモンの生産を増やします。
こうしたホルモンの変化が問題となるのです。エストロゲンは膣の自然な潤いをキープするようにしています。だからその濃度が下がると膣の乾燥と性欲の低下が起こります。膣が乾燥するとセックスのときに骨盤が痛むように。「もしセックスの際に膣が潤う通常のメカニズムがなくなると、ペニスによる摩擦には耐えられなくなります。必要なのは時間と忍耐と潤滑ゼリーです」(ロスさん)
セックス
ママになった直後でなくとも、セックスの際には骨盤の辺りに痛みを感じるはず。「骨盤の痛みはより深く、お腹の内側にまで感じられるもの」(ロスさん)これは乱暴なセックスによる子宮頸部への刺激だけでなく、裂傷が原因かもしれません。この種の痛みを膣の乾燥による痛みと混同しないようにします。「乾燥による痛みは膣の中だけで、お腹の内側では感じられません。もし子宮頸部や子宮そのものに痛みを感じるようなら、医師と会って対処した方がよいでしょう」
特定のセックスの体位は膣や子宮、卵巣などに解剖学的に過酷とされています。いわゆる正常位は女性の身体にやさしいといえます。後背位は男性にとっては深くまで挿入できるものの、女性にとっては痛みと不快感が起こりがち。「セックスのときに特定の体位で痛みを感じるのはよくあること。パートナーとの間でどんな体位がより楽なのか学びます」(ロスさん)
STI(性感染症)
もし突然骨盤の痛みに気づいたら、性感染症が関係している可能性が、とロスさん。「クラミジアや淋病のような性感染症は骨盤内感染症の典型的な“犯人”、骨盤の痛みや不妊につながることも」。これらの性感染症は骨盤内炎症性疾患の原因になり、高熱、寒け、腹痛、おりもの、吐き気や嘔吐を引き起こします。経口か静脈注射の抗生物質で治療するため、早く感染症を特定するよう婦人科医と定期的に会いましょう。「あたらしい性的パートナーと性感染症検査を受診することは、自分が性感染症キャリアでないこと確かめるために、とても重要です」(ロスさん)
子宮内膜症
毎月の生理をつらくする骨盤の不快感のもうひとつ原因がこちら。子宮内膜症は子宮内膜の組織が子宮の外で成長してしまう病気で突き刺すような痛みがあります。また、胃腸の不調や呼吸の際の痛み、上半身の痛み、頻尿を引き起こすことも。これらの症状には他の病気と重なるものもあるので、きちんと区別し痛みに対処するよう診断を受けることがおすすめ。
更年期
女性に起きること。この変化の間、苦しみに耐えることはありません。更年期の間はエストロゲン濃度が下がっているため、「エストロゲンのまったく出ない更年期の女性は膣の乾燥が起き、セックスのときひりひりしてしまいます。潤滑剤、エストロゲンクリーム、非エストロゲン経口薬、オスペミフェン(米国で使用されている閉経後膣萎縮症治療薬)などを使うとよいのです」(ロスさん)。投薬でない新しい選択肢として、膣の萎縮をレーザーで治療する「モナリザタッチ」と呼ばれる方法もあります。
卵巣嚢腫破裂
image via Shutterstock「痛みが出てくるタイミングが排卵の時期である『月経周期中間期』と重なってくるなら、いまにも卵子を放出しようという大きな卵巣嚢腫ができている可能性があります。そうしたときに激しいセックスや運動をしたり、思わぬ破裂を起こしたりすると、卵子と一緒に内容液も放出することがあって痛みにつながるのです」とロスさん。骨盤の超音波検査、月経についての問診を行うと、主治医は診断を下してくれるはずです。
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