Q.ホワイトニングとは何ですか?
歯は表面からエナメル層と象牙質と呼ばれる2つの層からできています。表面のエナメル質は透明なので、歯が黄色っぽく見えるのは主に象牙質の色によるものです。歯の色が濃くみえる時は、大きく分けて2つの理由が考えられます。
1つは、歯の表面のエナメル層の上に着色している場合。もう1つは、エナメル質の内側にある象牙質の色が濃くなっている場合です。歯の表面の着色は、クリーニングをすることできれいになり、歯の表面を白くすることができます。ただ、その時に歯の本来の色である象牙質の色は変化していません。一方で、歯科医院でのホワイトニングは、歯の表面から薬剤を浸透させ、象牙質の色そのものを白く変えることができます。
Q.歯が黄色くなったり、変色したりする原因は何ですか?
歯は、組織そのものの老化で黄色くなります。他にも、歯ができる過程でお母さんの飲み薬などで変色が起こることがあります。また、歯の表面に着色がついてしまっても、変色して見えてしまいます。
着色の原因は、タバコ、コーヒー、お茶、赤ワイン、とうがらしなどありますが、口呼吸による歯の乾燥も原因の一つです。着色を防ぐには、コーヒーやお茶などを飲んだ後は、水で薄めておくとよいですね。つい口で呼吸をしてしまう人は、舌の使い方、噛み合わせや鼻に問題がある可能性があるので、歯科医院で相談してみるとよいでしょう。子どもの「お口ぽかん」が、乳歯の着色から発見されることもあります。成長期の方が大人より治りやすいので、原因を早めに発見できるとよいですね。
Q.ホワイトニングの方法にはどのような種類があるのでしょうか。
一般的に、歯を白くするという商品は多くありますが、ここでは薬剤を使って歯本体を白くする方法をご紹介します。歯の表面をヤスリでこすって着色を落とすのはホワイトニングとは呼びません。
歯科医院でのホワイトニングには、2種類があります。神経の生きている天然歯を白くする方法と、神経を取ってしまった歯を白くする方法です。虫歯などで歯の神経が死んでしまうと、歯の色が茶褐色になってしまいます。この場合に、歯の内側に薬剤を入れることで歯を白くする方法があります。「ウォーキングブリーチ」と呼ばれる方法になります。もっとも一般の人にとって身近なのは生きている天然歯を白くする方法かもしれません。こちらは既にご紹介したように歯の表面に薬剤を塗って浸透させて、象牙質の色を白くする方法になります。さらには、神経が生きている天然歯のホワイトニングには、大きくオフィスホワイトニングとホームホワイトニングがあります。
ただ、ホワイトニングを行うときに注意が必要なことがあります。ホワイトニングで天然歯の色を変えても、歯に詰め物やかぶせ物などの治療をしていた場合、そこの色は変わらないことです。歯が白くなった後に、色を合わせる治療が必要かどうかを確認してから、ホワイトニングを始めるとよいです。笑顔を見せたときの範囲を、どこまできれいにするか。個人差があるところなので、よく相談できる担当医がよいですね。
Q.オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの違いは? 保険適用にはなりますか。
オフィスホワイトニングとホームホワイトニングは、それぞれ異なる薬剤を使って行います。オフィスホワイトニングは、1時間くらいの短い時間で光を使って強めの薬剤で行います。強い薬剤で早めに象牙質の色を白くしていくのです。早めに色を変えられる半面で、早く色が戻りやすいところが難点。色むらがでやすい特徴もあります。
一方で、ホームホワイトニングは、マウスピースに弱めの薬剤を塗って、そのマウスピースを最低5時間付けたままにして、徐々に象牙質の色を白くしていきます。効果はマイルドで白くする効果も持続しやすいのは利点です。
最近、効果的なやり方と考えられているのは「デュアルホワイトニング」です。まずはオフィスホワイトニングを行って、その上でホームホワイトニングも行う方法です。それぞれ一つを行うよりも、確実に白くなる方法です。また、ホワイトニングは世界中で需要があるため、薬剤や方法は研究によって日々進歩しています。
健康保険は病気に対して使うことができます。ホワイトニングは美容を目的に行う治療とみなされますので、残念ながら健康保険は適用されません。そのため自費診療となり、治療費は全額自己負担となります。また、美容目的の治療は、税金を計算するときの医療費控除の対象にもなりません。
自由診療であることもあり、歯科医院によって使われる薬剤も同じとは限りません。製造されている国やメーカーもさまざま。また、知覚過敏を起こしやすいなど歯にも個性がありますので、歯医者さんと相談しながら自分に合った治療を受けるとよいでしょう。一例ですが、日本では認可されていない高濃度の薬剤を使うと、日本人にとっては刺激が強いため、知覚過敏になりやすいといった面があります。
Q.ほかの歯を白くする方法との違いは何ですか?
歯の表面を少し削って薄いセラミックを張る方法(ラミネートベニア)、歯の表面にマニキュアを塗る方法があります。その他、歯の全体をセラミックでかぶせるオールセラミッククラウンと呼ばれる方法もあります。セラミックの色は、一つ一つをハンドメードで細かく色の調節をするので、それぞれに合わせた自然な色にすることができます。また、セラミックの厚みを調整することで、歯並びのズレを修正することもできます。さらに、セラミックは安定した物質ですので、歯をホワイトニングする場合とは異なり、歯の色が元に戻ることもありません。ただ、歯を削ってしまうというデメリットには注意が必要です。
一方で、マニキュアは歯の表面に約1カ月状態を保つことのできる白い樹脂を塗って固める方法です。こちらはすぐに剥がれ落ちてしまう傾向があるので、おすすめはしていません。
Q.歯科以外でのホワイトニングは大丈夫?
ホワイトニングをうたって、歯医者さん以外で歯を白くする施術を行うお店が出てきています。ホワイトニングは、単純に歯を白くするだけではなく、もともと虫歯があったり、歯周病があったりすると、歯を白くする以前の問題として、歯の健康を保てなくなります。人間の体は個性が大きいですので、歯医者さんで歯や口の状態をきちんとチェックした上で、よく検討することを強く勧めます。
Q.どれくらいの期間がかかるんですか?
一般的には、デュアルホワイトニングの場合を考えるとわかりやすいと思います。オフィスホワイトニングは、1日の対応だけで1時間半ほどで終わります。その上で行うホームホワイトニングは2週間かかります。ただ、歯の色の変わり方、薬剤の濃度や使用方法などは、個人個人で違いますので、もっと時間がかかる方もいらっしゃいます。ホワイトニングを進めていくと、どこまで白くするかと悩む方がいらっしゃいます。歯の色は、年齢とともに濃くなっていきますが、20歳頃の歯の色に戻すと考えると自然な白さになります。また、顔のもう一つの白い部分、白目の白さを基準にするという考え方もあります。
Q.歯を白くできるのはなぜですか?
ホワイトニングで用いられる薬剤が、歯質にたまった色素を化学反応によって分解するからです。オフィスホワイトニングでは、光の力を利用してこの化学反応を強めています。ですので、歯がデコボコしている時、光が当たりにくいところの色は変わりにくいです。
Q.歯の白さの度合いは選べるのでしょうか。芸能人は歯が命などと言いますが、不自然に白くなるイメージもあります。ナチュラルな白さになるのでしょうか。
オフィスホワイトニングの回数やホームホワイトニングの時間で調節するのです。その人によってナチュラルな色をどう考えるかは違ってきます。私たちのクリニックでは30~50代くらいの女性ですと、20歳当時の歯の白さに戻しましょうとお話ししています。20歳の方ならもっと白くしましょうと話しています。また、顔のもう一つの白い部分、白目の白さを基準にするという考え方もあります。いずれにせよ、求める白さの個人差は大きいので、最初によくイメージを相談してから行うとよいでしょう。よく見ると歯の色は個性的ですし、ニコッと笑った時に見える範囲も人それぞれですよね。
テレビに出たり、モデルの職業に就いていたりする方は、通常の歯の白さだと映像に撮られたときにさほど歯が白く見えないのです。そのため、通常よりも一段階、白さのレベルを上げるようにしています。
Q.どのタイミングで受けるとよいですか?
単純に気になったらやるということだと思います。ただし、30代に入る頃は、歯が黄色くなってくるころで、タイミングとしては一つのきっかけになるでしょう。歯の中には神経や血管などが通っており、そうした影響で年齢を重ねるにつれてどうしても着色してくるのです。口元の見た目のアンチエイジングですね。
Q.ホワイトニング専門の歯科で受けるとよいですか?
最近では、歯科の分野においてホワイトニングは確立した医療となってきていますので、ホワイトニング専門でなくても、歯科医師が勉強していれば対応できるようになってきています。
選ぶポイントとしては、ホームホワイトニングだけでは効果が十分ではないことが多いですから、オフィスホワイトニングもやっているところで受けるとよいと思います。また、むし歯があったり歯肉が腫れていますとホワイトニングもうまくいかないですので、ホワイトニング専門という観点で選ぶというよりも、歯全体や口の機能も含めて総合的に対応してくれるかどうかで選ぶとよいと思います。
Q.ホワイトニングは値段が高いイメージがありますが、金額はどう決まりますか。
ホワイトニングは自費診療になりますので、歯医者さんによって手がける価格は異なっています。オフィスホワイトニングでしたら、安いところですと1万円台のところもあれば、10万円近くとしているところもあると思います。キャンペーンを行っているところもあります。
歯は全身の一部分ですから、歯を白くするだけといっても、安いからと値段ばかりにとらわれず慎重に考えて医院を選ぶとよいと思います。薬剤にも、製造する国の違い、国からの認可を受けているもの、受けていないものの違いなどさまざまです。自分に合った薬剤を親身になって考えてくれるような歯医者さんで受けるようにするのがよいと思います。
Q.ホワイトニングの副作用は何かありますか?
薬剤がしみる知覚過敏が起こったり、少ないですがアレルギーが起きたりすることがあります。もともとの歯の色が濃い人で歯の色のしま模様がある場合、ホワイトニング後にしま模様がより強く出てくることがあるので注意が必要です。子どものころにテトラサイクリンという抗生物質を飲んだ人で、歯にしま模様ができている人がいます。全体的な色素は分解できても、そういったしま模様の色素は取れにくく残ってしまうことがあります。そうしてしま模様が目立ってしまいます。また、原因はよく分からなくても象牙質の色が変わってしまっている場合の時には、よく相談して下さい。表面を削ってセラミックをつけた方がよい場合もあります。
また色の変わり方に個人差があることも知っておくとよいと思います。歯の色に個人差があるほか、エナメル質の厚み、象牙質の厚みにも個人差があります。こうした差があることで、ホワイトニングの仕上がりにも影響してくるのです。同じ人においても、前歯以外の歯はエナメル質や象牙質に厚みがあるので、色が変わりにくくなります。ホワイトニングで奥歯の色を変えることは難しく、実際に白くできるのは前歯だけと考えるのがよいでしょう。しつこいようですが個人差がありますので、個人差を正しく判断してくれるところがよいと思います。
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Vol.3 うつるの? サイレント・ディジーズと呼ばれる歯周病
徳永淳二(とくなが・じゅんじ)先生
歯科医師。医療法人メディスタイル理事長 。 「美しく健康な生活を医学の力でサポートします」のコンセプトの下で、美容皮膚科と形成外科、歯科の診療を同じクリニックで提供。東京医科歯科大学を卒業後、勤務医などを経て、スウェーデンのイエテボリ大学にてDr.ウィドマークに師事し、神奈川県逗子市にて開業。逗子メディスタイルクリニック
編集/STELLA MEDIX Ltd.、image via shutterstock
コメント
結構参考になった。
後はお値段さえ手ごろになればなあ・・・。
まずは矯正からやねんけど
保険効かんのよねぇ・・・
世の中やっぱ金やな~
勉強になりました
もっとこういう記事増えてほしいな