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元海軍大将が語る、世界をより良く変えるためにできること

2018/06/04 07:30 投稿

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元アメリカ海軍大将William H.McRaven(ウィリアム・H・マクレイヴン)が、2014年に母校であるテキサス大学の卒業式でおこなったスピーチは、ネットの閲覧累積数1千万を軽く超え、4年近くたったいまもなお注目され続けています。

世界をより良くするためにできることとは?

image via shutterstock

このスピーチは「世界をより良くするためにできること」を10点に絞ってシンプルに述べたもの。自らの苛酷なネイビーシールズ(アメリカ海軍特殊部隊)でのトレーニング経験を例に挙げて語る同氏の言葉には説得力があります。また、人生の核心を突く内容は、聞く人の心を奮い立たせるパワーに満ちています。

海軍という特殊な状況だけでなく、人生そのものへの指南となるポイントをいくつかご紹介します。

小さなタスクから始める

「人生を、ひいては世界を変えるためにできること」として、同氏が一番に挙げるのは、朝起きてすぐのベッドメイキングです。世界を変えるのにベッドメイキング? と拍子抜けしてしまいそうですが、スピーチを聞けば、この些細な行動の大切さがよくわかります。

毎朝ベッドメイキングをするということは、1日の最初のタスクを全うするということだ。それにより、ちょっとした満足感が得られ、そのおかげで、続く別なタスクにも取り組めるのだ。ひとつのタスクの完遂は、1日の終わりには、いくつものタスクの完遂に姿を変えているだろう。

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

この言葉には、小さなことの積み重ねこそが、大きな成果につながるのだという確信が込められているように思います。日本のことわざに「大事の前の小事」と言いますが、同氏も同じことを言っています。

小さなことをきちんとできないようでは、大きなことなどできはしない。

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

協力者を得る

同氏がネイビーシールズのボート訓練を例に説くのは、協力者の大切さです。

ひとりで世界を変えることはできない。出発地から目的地にたどり着くには、友人、仲間、見知らぬ人の善意、ガイドする強いコックス(舵取り)らの助けが必要になる。世界を変えたければ、ともにボートを漕いでくれる人を見つけよ

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

そうして、他人を評価するときは、目に見える特徴や、バックグラウンドで測るべきではないと明言します。

肌の色でも、出身でも、受けた教育でも、社会的ステータスでもない。世界を変えようと思うなら、ハートの大きさで、人を評価せよ

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

超人並みとされるネイビーシールズのメンバーでさえ、ひとりで出来ることには限りがあり、体力腕力が不可欠な環境でも、ハートの大きさが物を言うという指摘に、経験に裏打ちされた現実味を感じます。

どんな時も前進あるのみ

体力と気力の限界まで鍛えぬかれる訓練の中で、同氏が見出した人生の真理は、ポジティブなものばかりではありませんでした。例えば、人生は公平ではないという事実。また、失敗も苦難も避けては通れないものであるという事実。けれども同氏は、そこでくじけたり、失敗や苦労を恐れてはならないと断言し、ときにはリスクをも冒さねばならぬと告げます。

世界を変えたいのであれば、(苦難を)乗り越え、前へと進み続けなければならない

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

困難な局面でこそ、冷静沈着に

ネイビーシールズのミッションのひとつに、敵船への水中からの攻撃があるそうです。その訓練では、水深計とコンパスだけを頼りに、夜の海中を数キロ泳いで標的に近づきます。

ミッションを遂行するには、船の下を泳いで、竜骨(船の最下部にあるセンターライン)を見つけなくてはならない。それがターゲットだ。だが、竜骨は船の最も暗い部分でもある。目の前にかざした手も見えないほどの闇の中、難聴になりそうなほどの機械音に囲まれて、分別を失い失敗しそうになる。しかし、シールズメンバーならみんな知るように、この竜骨の下にいる時、ミッション中、最も陰鬱で難しいこの時こそ、持てるすべての技術と心身の力を結集させ、冷静沈着でなければならないのだ。世界を変えたいのであれば、最も困難な局面においてこそ、自らのベストを発揮しなくてはならない

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

希望の力

同スピーチによれば、「地獄の週」の訓練は不眠不休で、凍るような泥地に首まで浸かって過ごす15時間を含むそうです。歯の根も合わないほどの寒さの中で、もうだめかという時、声を出して歌うことで希望が見えてきた経験から、同氏は下のように語ります。

世界を旅するなかで学んだことがあるとすれば、それは希望の力である。たったひとりの人物の力、ワシントン、リンカーン、キング、マンデラ、そしてパキスタンの少女マララ……こうした人物は1人だが、人々に希望を与えることで、世界を変えることができるのだ。だから、世界を変えたいのであれば、首まで泥に浸かるようなその状況にあっても歌うことだ。

(マクレイヴン元海軍大将スピーチより翻訳引用)

希望のパワーのくだりには、パンドラの箱の逸話を思い出します。開けてはいけない箱を開けたせいで、すべての災いが人類に降りかかるけれども、唯一残った希望のおかげで、人々は生き延びるという話です。古代ギリシアの時代から、希望は人類最大の武器であり続けているのかもしれません。

このスピーチは、ぜひ歯切れの良い同氏の声で聴いてほしいところですが、書籍でも読むことができます。アメリカでは2017年春『Make Your Bed: Little Things That Can Change Your Life...And Maybe the World(ベッドメイキングをしなさい。小さなことが君の人生を変え、もしかしたら世界をも変える)』として出版され、日本でも、2017年10月に邦訳『1日1つ、なしとげる!米海軍特殊部隊SEALsの教え』(講談社)が刊行されました。

読むたび感銘を受けるスピーチ内容。それに加えて、個人的には次の2点も心に刻みつけられたように感じます。ひとつは、世の中を変えるには、まず自分が変わらねばならないということ。そうしてまた、究極の状況において、人は真実を悟る強さをもつのだということ。

これから先、未来に信頼を置けないような気分に陥った時は、同氏のスピーチ内容とともにこれらのことを思い返し、前へ前へと進む勇気を得たいと思いました。

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