「要するに、酸逆流とは胃から、食道以上に胃液が移動することです」(消化器科医でUCLA食道疾患センターの臨床プログラムのアソシエイトディレクター、ケビン・ガッセミさん)。つまり、食道はのどと胃をつなぐ、まさに運河なのです。
胃液の逆流にはいくつかの理由が。ガッセミさんによると、太りすぎは、食べ物を食道に逆流させる「腹圧」を生み出します。また、国立糖尿消化器腎臓病研究所によると、痛み止め、抗ヒスタミン剤、カルシウムチャネルブロッカー、抗うつ剤のような特定の薬品を飲むことで、胃と食道を結ぶ弁の機能不全が起きることが。ガッセミさんによると、このとき胃の内容物は食道に移動してしまいます。本来は、いるべきところでないのに。
もし逆流が週に2回以上起きるなら、アメリカ人の5人に1人が抱えている胃食道逆流症(GERD)かもしれません。GERDの患者は決まってプロトンポンプ阻害薬(薬品名はプリロゼック、ネキシウム、プリバシドその他です)を処方されますがこれらは胃酸を生み出すのを妨げます。
もし薬に頼りたくなければ、専門家によると自然の治癒法も。その家庭療法はすぐに始められるものです。ただしひとつ知っておいた方がいいのは、もし試した方法が効かず、胸やけその他の症状が続くようなら、医師に診せるということです。
「胸やけは、たかが胸やけと考える人もいます。でもとても深刻な事態が起きることがあるのです」(胃腸病専門医でメリーランド薬科大学教授のブルース・グリーンウォルドさん)。逆流は食道がんの一番のリスク要因なのです。グリーンウォルドさんが注意を促しているのは、逆流は食道を瘢痕化(ケガの後に残る状態と同じものです)したり狭くしたり、ぜんそくを含む呼吸の問題にもつながったり、歯のエナメル質を減らしたりすることもあります。だからその兆候を無視せず、医師に相談するのです。
ここでは健康の専門家がおすすめする酸逆流の6つの家庭療法をご紹介します。
1. アロエベラジュースを飲む
アロエが日焼けしたところを鎮静化してくれるのはご存じかもしれません。逆流と胃食道逆流症を持つ人のなかにはアロエは胸やけも鎮静化すると話す人も。「多くの患者さんがアロエベラジュースはよいと教えてくれたのです。アロエはたくさんのよい成分を含み胸やけに効くのです」(ガッセミさん)、「アロエベラは消化管を保護すると考えられるために、胸やけによいといわれるようです」(グリーンウォルドさん)と、両医師ともエビデンスは決定的ではないとは話していましたが、最近の研究ではアロエベラシロップを約30ミリリットル飲むと逆流が軽くなるという結果も出ています。
2. 「トリガー」を知る
「長い間、酸逆流の患者は酸性もしくは酸性化させる食べ物を避けるべきとされていました。脂っこいか脂肪質の食品などがそう」(グリーンウォルドさん)。
トマトベースの食べ物、ぴりっとした食べ物、カフェインか炭酸が入った飲み物、チョコレート、ファストフードなどが当てはまります、とガッセミさん。でも今こんな用心は必要ないことがわかっています。「多くの人にとってこれらの食べ物は関係ないようです。トリガー(引き金)となる食べ物は人それぞれ違います。もしこれらの食べ物を全部避けていたら、胃酸の逆流をおさえる効果につながらないものまで避けることになって、縛られた食事になってしまいます」
簡単なよりよい方法:トリガーになるような食べ物や飲み物を書きとめるか、写真を撮りましょう。場合によっては食事で大きな制限をすることなく、主要な“犯人”をカットできるかもしれません、とガッセミさん。
3. 少食を心掛ける
何を食べるかとどれだけ食べるかは同じくらい重要。「食べ過ぎは逆流の症状を悪化させます」(ガッセミさん)。
少食にして頻繁に食事を摂ります。体重増加(呑酸を悪化させることがある)にもつながらないよう、トータルのカロリー摂取量と食べ物の質には注意します。軽食サイズの食事とはチップスやクッキーのような高カロリーの袋スナックを食べることではありません。
4. 深夜に食べるのを控える
「胃は食べたものすべてを下に流してくれるもので、上げるものじゃありません。まっすぐに立っているとき重力は下への流れを促します」とガッセミさん。でも横になると、重力が胃の中身を空にしてくれなくなります。だから、夕食を消化するためにも、ガッセミさんは横になるすくなくとも2時間前までにその日最後の食事を取るようにするか、食べるものを軽食にすることをおすすめします。重力の効果で胃を空っぽにすることができるのです。
夜の逆流に悩んでいるなら、ガッセミさんは、ベッド全体を少し下に傾けるため、マットレスの頭の真下の辺りに、薄くて硬いクッションを置くことをすすめます。
「ベッドの頭の部分を持ち上げることで夜の症状が軽くなるはず。くれぐれも上半身だけが持ち上げる形にしないこと。上半分が前へ曲がって、下半身が平らになっていると、お腹が圧迫されて症状が悪化してしまうからです」(ガッセミさん)。
5. 鍼治療を試してみる
逆流の処方薬治療と6週間の鍼治療を比較した少人数で行われた中国の研究があります。驚くべきことに両者とも同じくらいの効果がありました。
研究終了の4週間後ですら、鍼治療を受けた患者は症状の低下が続き、よろこんでいるという結果。研究の対象者は週に2、3回、6週間にわたって鍼治療を受けたそうです。鍼治療の効果を裏付けるほかの研究は十分にありませんが、鍼治療にリスクがあるというエビデンスもごくわずかにとどまります。コストはともかく、試して大きな損はないはず。
(施術の費用は40ドル~350ドル、つまり約4000円から4万円弱ほど。住んでいる場所、探す場所、あなたのケアワーカーの経験値にもよります)
6. リンゴ酢をなめる
アロエベラのように、リンゴ酢(ACV)で逆流が和らぐ患者もいるとガッセミさん。「非常に酸度の高い液体です。私はなぜこれが効くのか説明できません。でも効くという人がいるのです」。ただしアロエベラとは違い、研究的な裏付けがほとんどありません。アリゾナ州立大学の大学院生がリンゴ酢と制酸薬、プラセボ(偽薬)を比べたところ、すべて胸やけを和らげたのですが、3つに効果の違いは認められませんでした。
リンゴ酢は胃酸を治す効果はないのかもしれませんが、やってみる価値はあるかも(試す前に医師に相談を)。飲みやすくするために、約230グラムの水でリンゴ酢大さじ1〜2杯を薄めます。
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