心臓発作のリスクには、運動不足や質の低い食事などがありますが、これらの原因のほかにも意外なものがあります。心臓発作との関係があまり知られていない原因で心臓発作を起こす人は、米国で年間150万人。亡くなっている人は50万人です。
あまり知られていない5つの原因や症状について解説します。
乾癬
肌がウロコのようになる乾癬は心臓病を発症させるリスクを伴います。エール大学皮膚科臨床准教授のモナ・ゴハラさん(医学博士)の研究によれば、乾癬のある人は心臓病のリスクが2~3倍になるそう。皮膚のダメージにもつながっている炎症が、血管の壁にもダメージを与えるからと考えられています。結果として、心臓発作や脳卒中のリスクが上昇。さらに、自己免疫疾患がある人は、高コレステロール、肥満、糖尿病など、メタボリックシンドロームになりやすい傾向があります。
乾癬をわずらっているときは、主治医に言って、治療に当たっては広範囲にわたって診てもらいます。この病気のカギは早期治療。最近の研究によると、乾癬の人は、心臓発作や脳卒中を起こすリスクが毎年1%ずつ上昇するとわかっているのです。
よいニュース:乾癬の治療の中には、心臓血管病のリスクを減らすものもあります。
大気汚染
スモッグは心臓病を始め多くの病気に関係しています。長い間にわたって汚染した空気にさらされると、血糖値やコレステロール、そのほかの心臓病のリスクを高める可能性を指摘している研究も。汚染した空気に短期間さらされるだけでも、HDLコレステロール(“善玉”と呼ばれます)を減少させる可能性があるという研究もあります。
心配なのは、健康に悪影響が及ぶのは高齢の人だけではないところ。サーキュレーション・リサーチ誌の研究によると、室内の汚染した空気にさらされると、若くて健康な大人でも、血管に損傷や炎症が起きるとわかりました。
スモッグの多い街に住んでいると、自動的にそうなるわけでもありません。研究によると、スモッグが多い地域であっても、車で通勤するときにエアコンを使っていれば車内の汚染物質を34%減少させられるのです。自宅やオフィスの室内でも空気清浄機を使っていれば室内のPM(微小な粒子状物質)が平均34%減ることを証明した研究も、医学誌サーキュレーション誌で発表されています。
また、米国環境保護庁(EPA)と米国国立環境研究所が発表した研究によると、オメガ3系脂肪酸を含む魚油サプリメントによって、屋外の有害な空気によるトラブルを減らせることが報告されています。
風邪やインフルエンザで使う鎮痛薬
痛みがあったり熱があったりするときに、イブプロフェンやナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を服用するのは、よくあること。ですが、感染症の専門誌ジャーナル・オブ・インフェクシャス・ディジージズ誌に発表された研究によると、呼吸器の感染症にこれらの薬剤を使うと、心臓発作のリスクが3、4倍に増加するとわかりました。その正確な理由はまだ不明です。「ベスト・プラクティス・フォア・ヘルシー・ハート」の著者のサラ・サーマンさん(医学博士)によると、これらの薬には出血のリスクを増加させ、傷つきやすい心臓の血管で血栓のリスクも高める可能性があるということ。部分的に血流がとどこおる原因になり、血圧を上げる可能性も。
できれば、これらの薬を避けるようにとサーマンさん。「心臓病になっている人もこのことに無自覚。だから、特に50歳以上だったり、高血圧、糖尿病、高コレステロールだったり、喫煙していたりする人には注意を促しているのです」とサーマンさん。温かい飲み物、休息、アスピリンを試すのがおすすめ。アスピリンは、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とは異なる効き方をする薬で、心臓発作や脳卒中のリスクを低下させるとも言われます。別の薬のアセトアミノフェンがよい選択肢となる可能性も。医師や薬剤師に相談するといいでしょう。
肩の痛み
肩の痛みが直接心臓のトラブルの原因ではないのですが、これらの間には関係がありそうです。生活環境と健康との関係を取り扱っている医学誌のジャーナル・オブ・オキュペーショナル・アンド・エンバイロメンタル・メディシン誌に発表された研究によると、心臓発作のリスクがとくに高い36人を調べたところ、リスクの低い人と比べて、肩の痛みを感じている人が5倍近くに上り、「肩回旋筋腱板腱障害」と呼ばれる肩の障害が6倍近くとなることがわかりました。
もっとも、この研究は少人数を対象としているため、因果関係については今後も研究が必要です。一方で、肩の痛みを抱えている人は、心臓病のリスク要因を減らそうと考える傾向が強いことも研究からわかっています(ユタ州ソルトレイクシティーのロッキー・マウンテン・センター・フォア・オキュペーショナル・アンド・エンバイロメンタル・ヘルスの家族医学・予防医学教授で、センター長のカート・ヘグマンさんによる研究から)。
周囲の大きな騒音
毎日大きな騒音にさらされることは、耳を傷めるだけではなく、心臓にも問題を起こすよう。ジャーナル・オブ・アメリカン・カレッジ・オブ・カルディオロジー誌に発表された研究では、これまでの調査研究のレビューを実施。頻繁に騒音にさらされている人は、心不全、不整脈、高血圧、高コレステロール、高血糖の割合が高いということです。
騒音と心臓病との因果関係はまだ証明されていませんが、騒音がストレス・ホルモンを急上昇させ、最終的に血管の損傷につながるのではないかと考えられています。高デシベルの音、夜間の騒音などはとくに有害です。
騒音と健康についての専門誌ノイズ・ヘルス誌で発表された研究によると、騒音がコルチゾールの産生を増加させると報告も。コルチゾールはストレス・ホルモンで、眠っているときも含めて血圧を上昇させてしまうのです。
騒音の被害を防ぐには、窓を閉め、ラグやカーペット、厚手のカーテンなどで音を吸収させます。眠る時には、耳栓を使うのも得策です。
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