今回は、「いやいや、パンにはバターでしょう? オリーブオイルはバターの代わりにはならないでしょう!?」と、不思議に思う方にこそ試していただきたい、“パンとオリーブオイルのおいしい関係”についてご紹介します。
バゲット×オリーブオイル
パン屋さんを取材させていただく機会が多いのですが、そのなかで、バゲットはパン職人さんが魂を込める1本であることを知りました。香り、味、食感、繊細な差異に気を配り、作り上げられているものなのです。
間違いなく、何もつけずにそのまま食べておいしい。しかし、バターなどのアクセントがあったほうがたくさん食べられる方が多いはず。例外なくわたしも、バゲットにバターをたっぷり乗せていただくのが大好きです。
しかし、おいしいオリーブオイルに出会い、バゲットにかけて食べたときの衝撃は忘れられません。ひとくちめで鼻に抜けるオリーブオイルの香りと、ピリっとポリフェノールの辛味のあと、 噛むたびにひろがる、バゲットの香りと、甘み、うまみ。そしてそれが、長く続く。
バターと一緒に食べたときよりも、 バゲットそのものの甘みや、隠された塩味が際立つ気がします。 たくさん食べてももたれにくいのも、オリーブオイルのVeganマジックでしょうか。
バゲットはぜひ、水平にスライスするようにカットしてください。 気泡にオリーブオイルが染み込み、最高のバランスでいただけます。
トースト×オリーブオイル
カリッと焼いたトーストに、オリーブオイルをたっぷりと。温かいパンの上でオリーブオイルの香りがひらき、適度に染み込みます。
この食べ方も、トーストの生地(食パンそのもの)の甘さをよりシンプルに感じられます。上質なオリーブオイルだと、口に入れたとき主張しすぎずパンの味を際立たせる……甘いのがお好きなら、上からさらにメープルシロップをたらり。
柔らかな食パン生地にからむオリーブオイルとメープルシロップ。バターのことを忘れてしまう……? おかわり!と言いたくなること間違いなし、の TOKYO VEGAN的アレンジトーストです。
あんパン×オリーブオイル
そして、最後にオススメしたいのが、あんパンとの相性。パンにあんことバターをはさんだ「あんバター」なるサンドイッチが好きでよく食べては、あんことバターの相思相愛っぷりにちょっと嫉妬します(笑)。バゲットやトーストですっかり、パン×オリーブオイルにはまっていたので、あんパンでも試したところ……大正解でした。
半分に割った、またはかみついた断面にあらわれるあんこと生地の間、その空洞に、オリーブオイルをたらたら。オイルごとかぶり、とかじりついてわかる、気づいていなかったあんパン本来の味。あんこの味わい。パンに秘められた小麦の風味と甘み。オリーブオイルはあくまで引き立て役。
ひとくち食べるとあとをひく、あんパン好きに、一度はためしてほしいおいしさです。小豆(あん)も小麦(パン)も植物性食材だから 植物性の油脂と仲良しなのかもしれません。
ぜひ、オリーブオイルは、新鮮でおいしいものを! 今回は、バター大好きな私が、つかの間バターを忘れてしまう、パンとオリーブオイルのVeganな食べ方をご紹介しました。Veganでもパン食は豊かだから、パンを食べる楽しみは、100年先も変わらずにあると信じています。まずは一度、お試しください。
(パンのご協力:BEAVER BREAD/ 東日本橋)
Photo by 柳詰有香 Yuka Yanazume
Vegan(ヴィーガン)とは、完全菜食。 動物性のものを一切使わないライフスタイルや、そのような食事のことをさす言葉。 本連載『TOKYO VEGAN』では、おうちでつくれるVeganレシピのほか、おいしい野菜や調味料、世界のVegan事情についてなどをゆるゆると綴っています。
次回は、インドネシアのバリ島で出会った、魔法のようなVeganスイーツについてお届けします。お楽しみに!
Profile:大皿彩子 Saiko Ohsara
Alaska zwei 店主 / 株式会社さいころ食堂代表、"おいしい企画"専門のフードプランナー。Veganカフェ『Alaska zwei』の運営のほか、食に関わるブランドプロデュース、レシピ開発、空間コーディネート、イベントのトータルコーディネート等を行う。saikolo.jp