米国医師会が発行する医学雑誌『JAMA Dermatology』に先ごろ発表された研究報告です。
40代以上の女性の被験者に数か月にわたり、ある顔エクササイズを続けてもらった実験により、科学的に効果が検証された魅惑のアンチエイジング法とは?
老けてみえる主な原因は「たるみ」
Photo by Gettyimages悲しいかな、年齢とともに顔は変わります。シワが増え、ほうれい線は深くなり、そして、顔全体がたるんでくるのは、加齢という避けがたい現象です。 たるみは皮下の脂肪層がゆるんでくるために起こります。若い頃はレゴブロックのようにきちんと積み重なり、繊維組織でしっかり支えられていた脂肪がずれて、重力に逆らえずに落ちてきた結果、口元や顎がたるみ、頬がこけることも。
近年では、こうした老け顔対策として、主に美容家やフィットネス・インストラクターなどが、“効果的”とうたう顔エクササイズを考案していますが、残念ながら科学的な見地から実効性が証明されたものはありませんでした。そこに着目したのが、今回の研究を行ったシカゴのノースウェスタン大学フェインバーグ医学院の皮膚科医グループです。
1日30分の顔エクササイズを20週間
研究チームはまず、早くから顔エクササイズ・プログラムを組んだ草分け的存在で、ハッピーフェイスヨガの創始者であるゲリー・シコルスキ氏にコンタクト。彼が開発した、顔のさまざまな部分の筋肉を鍛えるための32の動きからなる顔エクササイズを使って実験を開始しました。
集められたのは40歳から65歳までの女性27人。現在の顔の状態を撮影したのち、シコルスキ氏と1対1のパーソナルセッションを受けて、ニヤニヤ笑ったり、口をすぼめたり、ときには指を使うなど、フルコースで30分かかる複雑な32のムーブメントをみっちり学習。それを1日1回8週間続けたところで再度顔を撮影し、その後さらに12週間、毎日エクササイズを行いました。途中で続けられなくなった11人が脱落し、20週間やり遂げたのは16人でした。
数値的変化は少ないが見ため年齢は改善
研究者は被験者と直接あったことがない皮膚科医に16人の写真を渡し、顔の色々な部分を定規で計測し変化の度合いを評価するよう依頼。あわせて、年齢を推定することも頼みました。
同時に被験者の女性たちにもインタビューして、自分の顔が変わったと感じるかどうか、満足度を尋ねたところ、たるみが軽減して効果がでていると、ほとんどの女性が喜びをにじませながら肯定的に答えたのです。
一方、皮膚科医の判定のほうはかなり慎重で、頬のハリに関しては明らかな改善があるけれど、ほかの部分には特筆すべき違いはみられないというもの。ただし、プログラムスタート時の写真では51歳とされた女性を、終了後のものでは48歳とするなど、見ため年齢の評価では平均して若くみえるようになったという結論がでました。
手軽に始められるし、やる価値はある
今回の実験は被験者の数も少なく期間も短いうえ、参加者の3分の1以上が脱落するなど、エクササイズそのものがかなり煩雑で難しいという問題もあり、32の段階のどのムーブメントが最も効果を発揮するのかなど、さらに突っ込んだ研究が望まれるところです。
とはいえ、顔エクササイズをした後では、約3歳は若くみえることが科学的に明らかにされたのはまぎれもない事実です。害もないし、お金もかからないし、自分ひとりでできるし、必要なのは毎日続ける意志の力だけ。鏡の前で、顔をゆがめたり、つねったり、くしゃっとしたり、今日から挑戦してみる価値はありそうです。もちろん、名誉のためにも、変顔を誰かに目撃されないようにだけはくれぐれも気をつけて。
今回の研究でとりあげられた顔エクササイズの簡易版を実践するための解説が「Exercising Your Face」でみられます。
©2018 The New York Times News Service
[原文:Facial Exercises May Make You Look 3 Years Younger / 執筆: Gretchen Raynolds]
(抄訳:十河亜矢子)