心身の健康を大幅に向上させる、ごく日常的な習慣
それから、やることがあまりにもたくさんありすぎて、頭の中が散らかって途方にくれているときに独り言を言うと、関係ないことに気を取られずにもっと集中できたりします。同じような人いませんか?
一般的には独り言を言うのは頭がおかしい人と思われがちですが、実はそうではありません。専門家はこれを「エクスターナル・セルフトーク(声に出す自己との対話)」と呼んでいますが、心身の健康を大幅に向上させる、ごく日常的な習慣なのです!
「セルフトークにこのような明らかなメリットがあるのは、いくつかの説があります」と語るのは、フロリダ州リーズバーグのビーコンカレッジで社会福祉と心理学の助教授をつとめるA・J・マースデン博士。独り言のもっとも重要な利点は、自分自身をコントロールするのを助けること。つまり自分の感情や行動、方向性をコントロールするのに役立つのです。ではこれから、独り言が精神衛生上よいとされる6つの点についてご紹介します。これで、あなたも独り言が止まらなくなっちゃうかも!?
01.独り言は集中力を高める
気持ちを集中させて大切なことをしようとしているのに、何も頭に入らず、雑念があれこれ渦巻いて考えがまったくまとまらない(あるいは大切な作業ができない)ことがあります。ところが、作業の最中に独り言を言うと、雑念を追い払うのに役立ち、考えがまとまり、集中力も高まります、と語るのは、ニューヨークのトゥーロ大学整骨医学部助教授の臨床心理士ジェフリー・ガーデア氏です。
たとえば、ある研究では、参加者に紙に書かれた指示を読ませました。黙って読むグループと、声に出して読むグループのふたつに分けたところ、声に出して指示を読んだほうが、集中力と作業能力ともに向上したのです。これは、TO DOリストもただ紙に書き出すのではなく、指示を声に出したほうがより効果的に物事を進められることを示唆しています。
02.独り言は目標を達成するのを助ける
設定したい目標に関して独り言を言うと、実際に最後までやり通せる可能性が高まります。声に出して目標を設定することで、まるで自分自身と口頭で契約を結んだかのごとく、目標が目に見えてより具体的に感じられるから、とガーデア氏。
最後までやり遂げるためのもうひとつの方法は、「あなた」という代名詞を使って目標を決めること(「私はもっと頻繁にワークアウトをする」と言うかわりに「あなたは仕事のあとにジムにちゃんと行くべき」と言ってみましょう)。『 Journal of Social Psychology』に掲載された研究では、そのようにした人たちのほうが、より生産的で、エクササイズに対する意識も向上しました。「あなた」と自分に語りかけることで、他者からアドバイスやサポートを受けているような感覚になるのではないか、と研究者は推測しています。
03.ストレスの多い状況に向けて、心の準備ができる
大切な仕事の面接が近づいてきた。仕事でプレゼンがある。パートナーとシリアスな話をしないといけない……。問題に対してどのように答えるのか、あるいは相手にどうやって気持ちを上手に伝えればいいか、自分自身と話し合うのは、実際の体験に向けて準備を整えること。前もって心の準備がうまくできていると感じられたら、実際の瞬間にはより自信が持てるようになるはず。そして全体的に不安を感じることが少なくなります、とマースデン博士。
04.困難なタスクや決定を切り抜けるのに役立つ
独り言を言うのは、思考を明確にし、考えをまとめるのを助けます。特に、あなたが困難なタスクに迷っているときや、難しい決断を下す責任を抱えているときはなおのこと。セルフトークは、声に出してブレインストーミングをするのと同じで、ある決定を下すにあたっての長所と短所をハッキリさせる、とシカゴを拠点とする心理学者で『Overcoming Destructive Anger』の著者バーナード・ゴールデン医学博士は述べています。
独り言はパニックモードに移行するのも防いでくれます。「声に出してセルフトークをすると、思考プロセスがスローダウンするので、ストレスレベルが下がり、効果的な問題解決スキルが向上して、最終的によりよい結果につながる判断を下せる」と言うのは、コロラド州エリーの臨床心理学者ジョディ・デ・ルカ医学博士です。
05.独り言はストレス解消によい
あなたが心の内を打ち明けている最中に、友人が話を遮ってどの色の口紅を買うべきか聞いてきた。横柄な同僚があなたの仕事・服装・ランチのことで批判してきたけど、そのときは何も言い返せなくて2時間も経ってから上手い受け答えを思いついたーー私たちは誰もが、そのまま放置すると心がむしばまれるような行き場のない気持ちを抱えていますが、もやもやした気持ちについて自分と話してガス抜きすることで、悪循環に陥らずにすむかもしれません。
「自分の声が自分の心の相手をするという形で、自分自身があなたの話し相手になっているのです」とガーデア。「自分との会話には、心の葛藤を解決し、考えが堂々巡りになるのをストップし、悩みを打ち明けて心の重荷をおろすという浄化作用があるのです」
06.独り言は心の支えになる
ゴールデン博士いわく「病気や喪失、葛藤といった、人生における大きな困難にまつわる心の痛みに対処するとき、セルフトークは自己を癒し、立ち直るための前向きな力となります」。そのためには、落ち込んでいる友人に対するのと同じように自分に話しかけてください。心の中にいる意地悪な自分を無視するのは難しいですが、人生をより充実した方向へ導く、前向きなセルフトークという新たな習慣を身につけられるはず、とゴールデン博士(そして、ロサンゼルスのカリフォルニア大学の研究によれば、体をかけめぐるストレスホルモンも減るかもしれません)。
どんなに自分がすばらしい人間かということについて、積極的に自分と対話してみましょう! それはカラダに(そして心にも)いいことなのです。
Krissy Brady / 6 Mental Health Benefits Of Talking To Yourself
訳/Maya A. Kishida