幻の染料で仕立てるインディゴ作品
そのブルーに魅せられて、幻の染料と呼ばれていた「パステル」の栽培を日本で復活させた「インディゴ気仙沼」代表の染め師・藤村さやかさん。ヨーロッパの品種で、世界中で何世紀もの間、栽培や染色手法が断絶されていたパステルの復活を、クラウドファンディングで多くの支持者を集めて実現にこぎつけた、女性起業家でもあります。
被災地・気仙沼にあらたな職をつくりたいと、現地の若いママたちが主体となって運営している「インディゴ気仙沼」。赤ちゃんの肌にも安心して使えるものをという願いがはじまりで、100%天然素材のみで仕立てているインディゴ作品は、その安全性と深みのある色合いが、幅広いユーザーに人気です。注文してから染め上げて納品のため、2〜3週間かかるという、オーダーメイド感も魅力。
気仙沼の土地が育む大人の青み
藤村さんが、パステルに注目したのは、現在日本で主流として栽培されているタデ藍よりも、東北の寒冷な気候で向いていたことからでした。調べていくうちに、かつてアイヌ民族が装束の染色に使用していたり、日本列島北部にも歴史的背景があることがわかっていき、パステルとの出会いに運命的なものを感じ、引き込まれていきます。
トゥールーズから貴重な種子を譲り受け、気仙沼の農家の協力を得て収穫できたパステルは、染め重ねると、しずかな青味を帯びるのだそう。
「ワインは、同じ品種のブドウでも、テロワールによって色も香りも味も違ってきます。インディゴの葉っぱも農作物である以上、ワインのような捉え方ができるのではと思っています。日本の伝統工芸としての“藍”とはちがったブルーかもしれないけれども、このパステルこそ、気仙沼の土から取り出した、この土地ならではのブルー。夏らしい、ぱっと華やかな青ではなく、気仙沼の冬の海のような、渋みのある大人の青味です。どんな“気仙沼ブルー”がこの世に誕生するのか、楽しみにしています」と、藤村さん。
美しいだけではなく、生地の抗菌性を増し、UVカット効果などの機能もプラスさせるインディゴ染め。昨年栽培されたものがお目見えするのは今春ということで、雪解けを待つように、待ち遠しいですね。
[インディゴ気仙沼]