起業家でありながら母としての顔も持ち、さらにはエシカル、サステナブル、オーガニックなど、おふたりに共通するテーマは多々あるなか、それぞれのビジネス観やプライベートの話題まで、他では聞けないお話をご紹介します!
根底にある、社会課題を解決したいという想い白木さんの起業秘話は以前にも紹介していますが、白木さんと酒井さんに共通するもの、それは社会課題を解決したい、という強い想い。
2009年の創業から一貫して、世界の鉱山での強制労働や児童労働など、社会課題の解決を見据えたビジネス展開をしているHASUNA。現在は、ルワンダやパキスタンなどの生産者や鉱山労働者たちと共にジュエリーを作っているのだそう。
白木さん自身もたびたび現地へと足を運び、現場を視察することで現状を知るとともに、フェアトレードという形で取引きをしています。
一方、酒井さんは2009年「FERMENSTATION」を創業。起業のきっかけは、前職であった金融機関勤務時代に日本に古くから伝わる発酵に出合ったことだといいます。
もともと代替エネルギー(石油以外の燃料)に興味があったという酒井さんは、東京農業大学の教授から聞いた「発酵は古くて新しいすごいテクノロジーである」という言葉に出合い、勤務していた金融機関を辞め、東京農業大学へ入学。岩手県の奥州(おうしゅう)にある休耕田で、米からエタノール(燃料)をつくるという研究を経て、この技術の事業化に成功しました。
無農薬のお米からオーガニックのエタノールを酒井さんの取り組みは、岩手の農家さんが無農薬で育てたお米を原料とし、奥州にある工場で発酵させ、エタノール(※)を製造すること。2013年までは奥州市の事業でしたが、事業期間終了とともに酒井さんが全面的に引き継ぎ、2014年頃から『FERMENSTATION』として化粧品事業をスタートしました。
オーガニックのお米を原料としているため、抽出されたエタノールもオーガニック。そしてその工程は手作業で行われています。さらにこの抽出されたエタノールを使って、石けんやアウトドアスプレー、消臭スプレー、ボディミルクなどに加工し、販売しています。実はお米由来のオーガニックエタノールというのは非常に珍しく、世界でもほとんど例がないのだそう。加えて、製品に配合する精油やその他の原料も、ひとつひとつ丁寧にセレクト。隅々にまで酒井さんのこだわりが伝わってきます。
白木さんも以前からアウトドアスプレーを愛用されていたということで、その効果を絶賛されていました。
※エタノールとは、原料を発酵、蒸留してできるアルコールのことで、一般的には消毒に使用されたり、化粧品などに配合されています。
起業家×母であるふたりのリフレッシュ法起業家であり、組織のリーダーとして活躍されるおふたりですが、プライベートでは小さなお子さんを持つママでもあります。そんなおふたりに、オンオフの切り替え方やリフレッシュ法について伺いました。
帰宅するとまず、指輪もピアスも、身に付けている物すべてを外します。そうすると完全にオフ状態になりますね。
以前美術館で、"飾り"をテーマにした展示を見た際、古来から日本ではジュエリーやアクセサリーは、日常を非日常にするためのものである、と書かれていました。やはり私も、朝、ジュエリーを身につけることでスイッチが入りますし、オフにする際はジュエリーを外します。私にとってはジュエリーがオンとオフを分けるスイッチなのかなと思います。(白木さん)
ふたりの子どもがいるので、帰宅すると否応なしに日常に戻らなければなりません。どんなに仕事が堪っていても、翌日、重要なプレゼンを控えていても、必ずそれを忘れる数時間があります。つまり子どもたちと接しているあいだは、自然とスイッチがオフされるということですね。
リフレッシュ法としては、毎晩欠かさず、眠る前に、精油を一滴たらして眠るようにしています。(酒井さん)
自分なりのスイッチング法を持つことで、仕事とプライベートのどちらも充実した時間となる。そんなヒントをいただけました。起業家としてだけでなく、女性としてもお手本としたいおふたりのこれからの活躍が楽しみでなりません。
※FERMENSTATIONの製品は、都内のオーガニック系のショップ、新宿NEWoMan、ギンザシックス内でも購入できます。
・白木夏子さん<写真右>
ジュエリーブランドHASUNA代表。1981年生まれ。
英ロンドン大学卒業後、国連機関、金融業界を経て2009年4月にHASUNAを設立。人、社会、自然環境に配慮したエシカルなジュエリーブランドを日本で初めて手掛け注目を浴びる。2011年「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤーキャリアクリエイト部門」受賞、世界 経済フォーラム「Global Shapers」、AERA「日本を立て直す100人」に選ばれ る。2012年APEC(ロシア)日本代表団としてWomen and Economy会議に参加、2013年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加と多方面で活躍中。著書に『世界と、いっしょに輝く』(ナナロク社)、『自分のために生きる勇気』(ダイヤモンド社)がある。
・酒井里奈さん<写真左>
大学卒業後、都市銀行、外資系証券会社などに勤務。発酵技術に興味を持ち、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学。2009年、株式会社ファーメンステーション設立。岩手県奥州市にある「奥州ラボ」にて、有機米からエタノールなどを製造している。研究テーマは地産地消型バイオエタノール製造、未利用資源の有効活用技術の開発。第3回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション特別賞「地域イノベーション賞」、ブリティッシュ・ビジネス・アワード(BBA)2014Community Contribution 等を受賞。